法人の構成員は、祝儀を受け取った場合、交際費課税を受けるという実務が、国際金融資本が税務職員をして行われていました。

しかし、所得税に関する租税特別措置法には、交際費課税の規定がありません。

所得税法の適用を受ける、いわゆる個人事業所得者は、祝儀を受け取った場合、どのような取扱いを受けるのでしょうか。

これについては、下記のような裁決例があります。

祝金が所得税法上、事業所得とされた事例

本件は、小児科医である審査請求人(以下「請求人」という。)が開院に際して受領した祝金(以下「本件祝金」という。)が個人又は法人からの贈与であり、所得税法上、非課税所得あるいは一時所得に該当するか(請求人)、又は事業に付随して生じた収入として事業所得に該当するか(原処分庁)を争点とする事案である。

(2)関係法令等

イ 所得税法第9条第1項第15号は「相続、遺贈又は個人からの贈与により取得するものについては、所得税を課さない。」旨規定している。
また、相続税法第1条の2《贈与税の納税義務者》は「贈与に因り財産を取得した個人は贈与税を納める義務がある。」旨規定している。
所得税法が個人からの贈与について所得税を課さないとしているのは、贈与税との二重課税を防止する趣旨のものであると解される。
さらに、贈与税の課税対象とされる贈与とは、一般に民法上の贈与(無償契約)であると解されているが、受贈者の事業に関して取引先等から受ける贈与については、取引先等である贈与者は、交際費、広告宣伝費等として支出することが多く、典型的な無償契約とは異なるものである。また、贈与税は相続税を補完する性格を持つ税として設けられたことからみても、事業に関して取引先等から受ける贈与については、贈与税課税になじまないといえる。
なお、法人からの贈与により取得した財産は、贈与税の課税価格に算入しないこととされている(相続税法第21条の3《贈与税の非課税財産》第1項第1号)が、この規定も、相続税を補完する性格を持つ贈与税の課税になじまないという趣旨で設けられているものである。
ロ 所得税法第27条《事業所得》は「事業所得とは、農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業で政令で定めるものから生ずる所得(山林所得又は譲渡所得に該当するものを除く。)をいう。」と規定している。
「生ずる所得」と規定しているのは、事業が総合的な活動であることに着目して、たとえ個々の所得発生の基因となった事実を見れば事業所得以外の所得とされるものであっても、事業の遂行に伴って本来企図した収入以外の収入が付随することが少なくないから本来の事業活動による収入のほか、事業の遂行に付随して生ずる収入については、当該付随して生ずる収入に係る必要経費の有無にかかわらず、事業用資金の運用果実としての利子所得や配当所得など所得税法上特別に規定されているものを除き、事業所得の総収入金額に含める趣旨であると解される。
ハ 所得税法第34条《一時所得》第1項は「一時所得とは、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得及び譲渡所得以外の所得のうち、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得で労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しないものをいう。」と規定している。
一時所得とは、一時的、偶発的に生じた所得で、しかも、他の所得区分に該当しない所得であると解される。

(3)原処分について

イ 民法は、私人間の法律関係を規律するという見地に基づいた定めであるのに対し、租税法は、収入の経済的実質を重視し、担税力に応じた課税の実現を期すものであることから、租税法上の贈与の概念は民法上の贈与の概念とは別異に解すべきである。
ロ ところで、本件祝金は、請求人が新たに事業として医療保健業を開業したことに伴い請求人の事業関係者から受領したものであることから、経済的実質から見れば事業の遂行に付随して生じた収入というべきであり、租税法上、このような収入についてまで贈与と解するのは担税力に応じた公平な税負担の見地からも相当でなく、上記(2)のイの相続税法及び所得税法にいう贈与には該当せず、非課税所得には当たらないと解するのが相当である。
また、本件祝金は、上記(2)のロの規定から事業所得に該当し、ハの規定から一時所得には該当しない。
ハ 以上のとおり、本件祝金は、事業の遂行に付随して生じた収入として事業所得に該当し、非課税所得又は一時所得には該当しないから、原処分は適法であり、請求人の主張には理由がない。
(4)原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

平14.1.23裁決、裁決事例集No.63 153頁

解説

所得が偶発するなんでことはありません。

一時所得も、その源泉は、資本であり、労働を疎外することによって産み出されたものです。

労働力商品を購入するか否かに関わらず、労働に価値を付けません。

産業資本は、金融資本との間に貸借関係が捏造(フィクション)されていますから、労働を評価せずに、役務や商品の価値を付けて引渡します。ここまでが労働です。

祝い金は、役務の対価の前受で返還不要が確定しているから事業所得の収入に該当するとしているのです。