[事実関係]
本件は、学校法人である請求人が、創設者甲に対して退職金・功労金として支給した本件金員について原処分庁が、給与所得(賞与)に該当するとして、源泉徴収に係る所得税の納税告知処分等を行った事案である。
請求人は、甲は、平成15年12月31日に、すべての権限を予定どおりに後継者に譲り、請求人の運営、経営、教務上のトップ及び学校責任者から退いたことから、退職の事実があり、請求人が甲に退職金を支払うのは、無給、無報酬の理事長職の対価に対してではなく、A校校長の退職に対してであるから、甲が理事長に留まっていたかは、退職金の支給とは別問題である旨主張する。
請求人は、金融機関との間で、平成13年9月28日付で、685,000,000円、及び、平成15年7月31日付で150,000,000円を借り受ける旨の金銭消費貸借契約を締結し、理事長は、連帯保証人として署名した。
甲は、請求人の理事長、学院長及びA校校長の職にあったものであるが、本件金員の支払者は、請求人であり、且つ、寄附行為において、理事長が請求人を代表する旨定めていることからすれば、基本的には請求人の経営実権を有し、請求人を代表する立場である理事長の職を退職をしたかどうかを検討すべきである。
甲は、私立学校法人の改正に伴い開催された理事長会においても、従来どおり理事長として議決され、その旨の登記がされていること、理事会の議長を務め、議案の説明を行っていること、入学案内やホームページにおいて理事長として掲載されていること等からすると、甲は、単に登記上の形式のみの理事長に留まらず、実質的な権限を有する理事長であったものと認められる。
そうすると、甲は、昭和61年11月から平成18年6月まで引き続いて、理事長として内部及び外部に対して、実質的に請求人の経営実権を有し、また、請求人を唯一代理する立場にあったと認めるのが相当である。
甲が学院長として行っていた学校運営等の権限が、統括本部に完全に移譲した後もなお、学校長として残された業務も含め、請求人の学校教育に係る業務について、請求人から委任を受けて引き続いて行っていると認められるから、当該学校運営等の権限の委譲は、請求人に対する委任内容の変更に留まるものというべきであり、これをもって学校長を退職したとはいえない。
同校の学年は、4月から翌年3月又は10月から翌年9月を単位とされており、校長が12月に退職するかは不自然であることを考え併せれば、12月以後においても校長の職務は果たしており、実質的にも請求人との間の校長としての勤務関係は継続していたと認めたのは相当である。
請求人は、甲がA校校長を辞任して嘱託職員としてITセンター長に就任した旨の主張をするが、甲との間で締結されたとする雇用書には、請求人の側に統括理事の記名、請求人の理事長印が押印されているが、嘱託職員雇用契約契約書には、請求人側に甲の記名がされていることからすると、本件雇用契約書の請求人側に統括の記名がされているのは不自然である。
雇用契約の作成時期に疑問がある以上、仮に、ITセンター長に就任していたとしても、甲は引き続いて請求人の理事長であり、理事長の業務の一環として、請求人学校教育に係る業務に従事していたことには変わりはなく、A校校長の辞任も請求人における職務分掌の変更に留まるというべきであるから、これをもって、請求人を退職したことにはならない。
以上のとおり、甲は、引き続いて請求人を代表する理事長であり、且つ、職務の内容に変更はあるものの、理事長として、学院長及びA校校長の職務を行っていたと認めるのが相当であり、平成15年12月31日において、請求人を退職した事実があったとは認められない。
(国税不服審判所平成19年11月19日裁決)
[解説]
甲は、校長をしていた段階においても退職した後も、国際金融資本の代理人として、労働を疎外し、労働力の再生産をさせて、国際金融資本から貸付けをフィクションされて、設備、備品を購入し、労働力に貸付けて、労働を疎外していたのであるから、国際金融資本から経営を委託されていたとみることができる。
甲は、寄附行為をフィクションし、資本関係をフィクションしたことを源泉に、国際金融資本と共に労働を疎外し国際金融資本から利潤のコントロールを受けながら、利潤を処分したと解されるから、退職給与の属性を付与された当該支給金員には経済上、配当が含まれると評価される。
そして、実定法上は、法人の側は寄附金、それを受けた側は一時所得ということになるであろう。そこに偶発性はない。
経済関係を登記という法律行為を手段に実体化し、権利義務を取得しているのであるから、形式のみで何ら経済上の利得を得ていないとみることはできない。
審判所は、全体化して調査することなく、自然、不自然という宗教すなわち観念と交渉して経済関係とその源泉、土台を事実認定している。
[関係条文]
所得税法30条1項
退職所得とは、退職手当、一時恩給その他の退職により一時に受ける給与及びこれらの性質を有する給与(以下この条において退職手当等という。)に係る所得をいう。
法人税法
法基通9-2-9
法第34条第4項(役員給与)及び第36条(過大な使用人給与の損金算入)に規定する「債務の免除による利益その他の経済的な利益」とは、次に掲げるもののように、法人がこれらの行為をしたことにより、実質的にその役員等(役員及び同条に規定する特殊の関係にある使用人をいう。以下9-2-10まで同じ)に対して給与を支給したと同様の経済的効果をもたらすもの(<font color=”#FF0000″>明らかに株主等の地位に基づいて取得したと認められるもの</font>及び病気見舞、災害見舞等のような純然たる贈与と認められるもの<font color=”#FF0000″>を除く</font>。)をいう。
(1)役員等に対して物品その他の資産を贈与した場合におけるその資産の価額に相当する金額
(2)役員等に対して所有資産を低い価額で譲渡した場合におけるその資産の価額と譲渡価額との差額に相当する金額
(3)役員等から高い価額で資産を買い入れた場合におけるその資産の価額と譲渡価額の差額に相当する金額
(4)役員等に対して有する債権を放棄し又は免除した場合(貸倒れに該当する場合を除く。)におけるその放棄し又は免除した債権に相当する金額
(5)役員等から債務を無償で引き受けた場合におけるその引き受けた債務の額に相当する金額
(6)役員等に対してその居住の用に供する土地又は家屋を無償又は低い価額で提供した場合における通常取得すべき賃貸料の額と実際に徴収した賃貸料との差額に相当する金額
(7)役員等に対して金銭を無償又は通常の利率よりも低い利率で貸し付けた場合における通常取得すべき利率により計算した利息と実際徴収した利息の額との差額に相当する金額
(8)役員等に対して無償又は低い対価で(6)及び(7)に掲げるもの以外の用益の提供をした場合における通常その用益の対価として収受すべき金額と実際に収入した対価の額との差額に相当する金額
(9)役員等に対して機密費、交際費、旅費等の名義で支給したもののうち、その法人の業務のために使用したことが明らかでないもの
(10)役員のために個人的費用を負担した場合におけるその費用の負担額に相当する金額
(11)役員等が社交団体等が会員となるため又は会員となっているために要する費用で、当該役員等の負担すべきものを負担した場合におけるその負担した費用に相当する金額
(12)法人が役員等を被保険者及び保険金受取人とする生命保険契約を締結してその保険料の額の全部又は一部を負担した場合におけるその負担した保険料の額に相当する金額
法人税法37条
七 前各項に規定する寄附金の額は、寄付金、拠出金、見舞金その他いずれの名義をもってするかを問わず、内国法人の金銭その他の資産又は経済的な利益の贈与又は無償の供与(広告宣伝及び見本品の費用その他これらに類する費用並びに交際費、接待費及び福利厚生費とされるものを除く。次項において同じ。)をした場合における当該金銭の額若しくは金銭以外の資産のその贈与の額における価額又は当該経済的な利益のその供与時における価額によるものとする。
八 内国法人が資産の譲渡又は経済的な利益の供与をした場合において、その譲渡又は供用の対価の額が当該資産のその譲渡の時における価額又当該経済的な利益の供与の時における価額に比して低いときは、当該対価の額と当該価額との差額の内、実質的に贈与又は無償の供与をしたと認められる金額は、前項の寄附金の額に含まれるものとする。
所得税法
所得税法34条
一時所得とは、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得及び譲渡所得以外の所得の内、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得で、労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しないものを言う。
(コメント)
目的は、実体のない観念であるから、ここでいう営利目的は、労働力商品を直接購入し、資産を労働力に貸し付けたことをフィクションし、労働を疎外して、実体化させたものでなければならないと解される。
性質は、予め備わっていないから、労働を疎外することを土台に利潤と引き換えられた商品に付された価値のことである。