[事実関係]

請求人は、不動産賃貸業を営む100%同族会社である。

平成20年3月2日付の請求人の臨時株主総会において、同年4月21日に退職する代表取締役に対して退職慰労金100,000,000円を支給することが決議され、3月3日に100,000,000円を退職金勘定に計上し、21年3月期の損金に計上した。

本件退職慰労金は、所得税、住民税の額を控除した残額が3月3日に支払われている。

前代表者は、平成14年4月に大学に入学し、15年4月1日から20年4月21日までの間に代表取締役に就任しているが、20年4月から、21年からと別のところに勤務している(認定事実(2)のロ(ロ)のC)。

平成23年7月7日付けで、税務署長は、21年3月期の法人税について更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分を行った。

更正処分通知書には、

「本件退職金について、請求人は、平成21年3月3日に代表取締役に対して、100,000,000円の退職金を支払い、その金額を損金の額に算入しているが、請求人と事業の種類及び事業規模が類似する法人の代表取締役に対し支払われた退職金額、業務に従事した期間及び功績倍率等に対する退職金として相当と認められる金額は、11,550,000円になり、同人に対する退職金額100,000,000円の内、11,550,000円を超える部分の金額88,450,000円は、不相当に高額なものと認められるから、損金の額に算入されない」と記載されていた。

審判所は、

「法人税法34条第2項は、法人がその役員に支給した給与の額のうち不相当に高額な金額を超える部分の金額について、法人税法施行令70条第2号は、各事業年度においてその退職した役員に対して支給した退職給与の額が、当該役員のその法人の業務に従事にした期間、その退職の事情、類似法人の役員に対する役員に対する退職給与として相当であると認められる金額を超える部分の金額とする旨を規定している。

そうすると、適正役員退職給与の支給がある類似法人を合理的な基準によって選定し、その類似法人の退職した役員の勤続年数、役員退職給与の額及び適正報酬月額の数値を求め、これらの数値から合理的と認められる方法によって算定するのが相当と認められる。

適正役員退職給与額の具体的な算出方法としては、一般的に類似法人における退職役員の最終報酬月額に勤続年数を乗じた額で役員退職給与の額を除した倍率である功績倍率の平均値に、その退職した役員の最終報酬月額及び勤続年数を乗じて算出する平均功績倍率法、

及び、類似法人における役員退職給与の額に勤続年数を除した額の平均額に、その退職した役員の勤続年数を乗じて算出する1年当たり平均額法が用いられており、

それらは、法人税法第34条第2項及び法人税法施行令第70条2号の規定の趣旨に合致した合理的な方法であると解される。

そして、適正役員退職給与額の算出に当たり、上記のいずれの方法によるかは、退職役員の退職事情等に応じて最も適すると認められる方法を個別に判断するのが相当であるが、

役員退職給与の額は、通常、その退職役員の当該法人に対する功績が最も反映される勤続年数及び最終月額報酬を基礎として算出されていると認められるから、勤続年数及び最終報酬月額をその計算の基礎とする平均功績倍率法が一般的には適正役員退職給与の算出方法として最も妥当な方法と解される。

しかしながら、最終報酬月額が著しく低いなど退職役員の在職期間を通じての当該法人に対する功績を適正に反映したものでない場合には、検討対象とする役員退職給与の功績倍率は、類似法人における功績倍率の平均値に比べ、著しく高率となるから、比較そのものが不合理なものとならざるを得ない。

よって、このような特段の事情がある場合には、最終報酬月額を基礎とする功績倍率を用いて算出する平均功績倍率法は妥当ではなく、最終報酬月額と計算しない1年当たり平均額法が合理的な方法と認められる。」とした上で、

代表取締役は、「上記(2)のロ(ロ)のC及び20年4月から○○○○に入ること、兼業が禁止されることにより、請求人代表取締役を辞任したい旨の申し出があった旨の申述からすると、退職事由は、自己の都合によるものであって、死亡、引責辞任等といった特段の事情によるものであるとは認められず、当審判所の調査結果によってもこれを左右する証拠はない。

報酬月額は、19年3月期は、年18,000,000円(月額1,500,000円)であったが、19年4月以後は無報酬であった。

代表取締役就任期間中に全く請求人の業務に関わっていないなど、適正役員退職給与を零円とすることを合理的であるとする証拠はないから、このような特段の事情がある場合には、平均功績倍率法を用いることは相当ではない。

1年当たり平均額法によることがより合理的であることが認められる。

税務署長が採用した選定基準は、過大な役員退職給与の額を定めた法人税法施行令第70条第2号の規定に沿ったものとして合理性があり、恣意性は認められないのであるから請求人の主張は認められない。」とした。

(国税不服審判所平成24年9月3日裁決)
[解説]

代表取締役は、登記上の退職前後を通じ、取締役と共に

国際金融資本から、労働を疎外され、返済を待ちつつ、フィクションされた貸付を、当該取締役は国際金融資本の代理人として、当該法人の労働力との間にフィクションした資本関係を土台に、労働力に貸し付けたとフィクションして、更に、経済関係を土台に管理会社の労働力に貸付をフィクションし、労働を疎外し、転嫁した利潤、すなわち商品と引換に得た商品に価値を付している。

敷衍すると、国際金融資本に当該法人の労働力の疎外を土台とした利潤を分配し、国債の返済を負担させられ、管理会社の商品の評価を支払い、労働力商品と商品が交換され評価されている。

国際金融資本、資本金を出資したとする経営実体が当該法人の労働力との資本関係をフィクションしたことをもって当該法人を経営しているのであって、代理人たる労働者である取締役が経営をしているのではないのである。

当該取締役、代表取締役に支給された商品は、現場労働の評価の疎外を土台とした利潤を、労働と引き換えられる商品に付される時間という価値属性を付して利潤の評価をコントロールし、処分された後の労働力商品と引き換えられた商品に付された価値の労働過程における総和に功績倍率を乗じたものと利益配当からなる。

労働力商品の評価の総和に功績倍率を乗じた金額が疎外された現業労働の評価を超えると超えた部分の金額が利益配当ということになるのである。

類似法人の中にたまたま不相当に高い功績倍率を適用というのは、手段としての選択するしないについて、選択の基礎となる要件を全体化して比準法人を絞るにしろ、ピックアップの基礎を全体化して全て選択するにしろ、両者を組み合わせるにしろ、手続を全体化して選択するしないを決めていないということであり、偶然ではない。

紙切れや土地が利潤を産むのではない。労働と、労働力が稼働させられている商品を交換し、時計という属性、時間という価値を付すことによって利潤が産み出されるのではない。

資本金や土地勘定、勤続年数、地域に絞るのは労働の疎外の実体を土台とした利潤転嫁の過程を疎外している。

自己都合か否かは実体のない観念である。

功績倍率は疎外された労働の評価の部分を表しているが、完全に、現実に疎外された労働の評価に一致するということはない。

評価の土台には、必ず、フィクションされた経済関係上の事実とその源泉、土台があるにも関わらず、更正処分通知書には、当該法人における労働力の労働の実体(存在)、選定した比準法人とその労働力の労働の実体、選定の過程の記載がないから、理由の不備があるから、当該更正は取消されなければならにであろう。

[関係条文]

(法人税法第34条)

内国法人がその役員に対して支給する給与(退職給与及び第54条1項(新株予約権を対価とする費用の帰属年度の特例等)に規定する新株予約権によるもの並びにこれら以外のもので使用人としての職務を有する役員に対して支給する当該職務に対するもの並びに第3項の規定があるものを除く。以下、この項において同じ)のうち、次に掲げる給与のいずれにも該当しないものの額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。

2. 内国法人がその役員に対して支給する給与(前項又は次項の規定の適用があるものを除く。)の額のうち、不相当に高額な部分の金額として政令で定める金額は、その内国法人の各事業年度の損金の額に算入しない。
(法人税法施行令70条2項)

法人税法34条第2項に規定する政令で定める金額は、次に掲げる金額の合計額とする。

内国法人が各事業年度において退職した役員に対して支給した退職給与の額が、当該法人のその内国法人の業務に従事した期間、その退職の事情、その内国法人と同種の事業を営む法人で、その事業規模が類似するものの役員に対する退職給与支給の状況等に照らし、その退職した役員に対する退職給与として相当であると認められる金額を超える場合におけるその超える部分の金額