[事実関係]

請求人は、本件事業年度において、不動産賃貸業を営む、代表取締役及びその家族が100%出資する同族法人である。

平成19年3月2日付の請求人の臨時株主総会において、同月1日付けで退職した取締役に対して退職慰労金150,000,000円を支給する決議がされ、同月23日付けで退職金勘定に計上して、平成19年3月期の損金の額に算入した。

退職した取締役に対し、本件支給額から源泉所得税及び住民税を控除した残額は、前記3月23日に支払われている。

税務署長は、取締役は、法人税法第2条第15号に規定する役員に該当し、平成19年3月23日以後においても請求人を退職した事実はないとして更正処分をした。

国税不服審判所は、

「法人税法上、役員に対する退職給与は、法人税法第34条2項に規定する不相当に高額な部分を除き、原則として、損金の額に算入されると解されるところ、ここでいう退職給与は、本来、退職しなかったならば支給されなかったもので、退職に基因して支払われる給与をいうと解するのが相当である。

したがって、法人が退職給与として役員に支給した給与であっても、当該役員の退職の事実がない場合には、法人税法上、当該役員に支給した給与は、退職給与として損金に算入することはできないというべきである。

ところで、法人の使用人以外の者で、その法人の経営に従事しているものは、たとえ、その法人の代表取締役、執行役、監査役、理事、監事又は清算人としての地位がない者であっても、法人税法上は役員として取り扱われ(法人税施行令第7条1項)、法人税法第34条第1項ないしは第3項が適用されることとなるが、

この場合の「使用人以外の者でその法人の経営に従事しているもの」とは、例えば、

①取締役又は理事となっていない総裁、副総裁、会長、副会長、理事長、副理事長等の表見的な役員、

②合同会社の業務執行役員、

③人格のない社団等における代表者若しくは管理人、

又は④法定役員ではないが、法人が定款等において役員として定めている者だけを

いうのではなく、

相談役、顧問その他これらに類する者で、

その法人内における地位、職務等からみて実質的にその法人の経営に従事しているものも

含まれるものと解されるところ、この役員として取り扱われる者のうち、上記①から④までに掲げられる者は、その判定について、さほど疑問も生じないことから、

法人税基本通達9-2-1は、後段の相談役、顧問その他これらに類する者で、その法人内おける地位、職務等からみて実質的にその法人の経営に従事していると認められるものを役員として取り扱うことを明らかにしたものであり、

法人使用人以外の者が、その取締役を辞任した後においても、相談役等に類する者として、その法人内における地位、職務等からみて実質的にその経営に従事していると認められれば、当該者は、実質的に法人の経営に従事している限り、取締役辞任後もその法人の役員として取り扱われることになると解するのが相当である。」とした上で、

「そうすると、使用人も存せず、家族の他に取締役も損しない家族のみで営まれる請求人のような不動産賃貸業においては、テナント入居の可否及び賃貸等契約条件の決定、請求人の実印及び銀行印の管理、融資契約の交渉及び締結、請求人の決算、申告への関与、税務調査への対応という業務は、重要な業務ということができるところ、請求人の取締役を辞任後も取締役であったときから引き続き、これらの重要な業務を行っていたものと認められる。

そうすると、取締役辞任後においても請求人内における地位、職務等からみて実質的にその法人の経営に従事していると認められ、請求人における法人税法上の役員に該当すると認めるのが相当である。

退職給与とは、本来退職しなかったら支払われなかったもので、退職に基因して支払われる給与をいうのであるところ、上記のとおり、取締役には請求人を退職した事実は認められないから、本件支給額は、退職給与に該当しない臨時的な役員給与と認められるから、法人税法第34条1項各号に規定する定期同額給与、利益連動給与及び事前確定届出給与のいずれにも該当せず、損金の額に算入することはできない」とした。

(国税不服審判所平成24年9月3日裁決)
[解説]

審判所は、退職給与につき、退職しなければ本来支払われなかった金員というが、

支給した金員に退職給与の属性を付与したものの内、労働の評価に相応する部分は、労働を停止する毎に支払われいなければならなかったものである。

登記上、退職した取締役についてみると、登記上退職した前後を通じ、

国際金融資本から、労働を疎外され、返済を待ちつつ、フィクションされた貸付を、当該取締役は国際金融資本の代理人として、当該法人の労働力との間にフィクションした資本関係を土台に、労働力に貸し付けたとフィクションして、更に、経済関係を土台に管理会社の労働力に貸付をフィクションし、労働を疎外し、転嫁した利潤、すなわち商品と引換に得た商品に価値を付している。

敷衍すると、国際金融資本に当該法人の労働力の疎外を土台とした利潤を分配し、国債の返済を負担させられ、管理会社の商品の評価を支払い、労働力商品と商品が交換され評価されている。

国際金融資本、資本金を出資したとする経営実体が当該法人の労働力との資本関係をフィクションしたことをもって当該法人を経営しているのであって、代理人たる労働者である取締役が経営をしているのではないのである。

当該取締役、代表取締役に支給された商品は、現場労働の評価の疎外を土台とした利潤を、労働と引き換えられる商品に付される時間という価値属性を付して利潤の評価をコントロールし、処分された後の労働力商品と引き換えられた商品に付された価値の労働過程における総和に功績倍率を乗じたものと利益配当からなる。

労働力商品の評価の総和に功績倍率を乗じた金額が疎外された現業労働の評価を超えると超えた部分の金額が経済上、利益配当ということになるのである。

そして実定法上は、法人においては、寄附金、それを受けた側は、一時所得ということになるであろう。そこに、偶発性はない。
[関係条文]

法人税法第34条

内国法人がその役員に対して支給する給与(退職給与及び第54条1項(新株予約権を対価とする費用の帰属年度の特例等)に規定する新株予約権によるもの並びにこれら以外のもので使用人としての職務を有する役員に対して支給する当該職務に対するもの並びに第3項の規定があるものを除く。以下、この項において同じ)のうち、次に掲げる給与のいずれにも該当しないものの額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。

2. 内国法人がその役員に対して支給する給与(前項又は次項の規定の適用があるものを除く。)の額のうち、不相当に高額な部分の金額として政令で定める金額は、その内国法人の各事業年度の損金の額に算入しない。

法人税法  条

法基通9-2-9

法第34条第4項(役員給与)及び第36条(過大な使用人給与の損金算入)に規定する「債務の免除による利益その他の経済的な利益」とは、次に掲げるもののように、法人がこれらの行為をしたことにより、実質的にその役員等(役員及び同条に規定する特殊の関係にある使用人をいう。以下9-2-10まで同じ)に対して給与を支給したと同様の経済的効果をもたらすもの(<font color=”#FF0000″>明らかに株主等の地位に基づいて取得したと認められるもの</font>及び病気見舞、災害見舞等のような純然たる贈与と認められるもの<font color=”#FF0000″>を除く</font>。)をいう。

(1)役員等に対して物品その他の資産を贈与した場合におけるその資産の価額に相当する金額

(2)役員等に対して所有資産を低い価額で譲渡した場合におけるその資産の価額と譲渡価額との差額に相当する金額

(3)役員等から高い価額で資産を買い入れた場合におけるその資産の価額と譲渡価額の差額に相当する金額

(4)役員等に対して有する債権を放棄し又は免除した場合(貸倒れに該当する場合を除く。)におけるその放棄し又は免除した債権に相当する金額

(5)役員等から債務を無償で引き受けた場合におけるその引き受けた債務の額に相当する金額

(6)役員等に対してその居住の用に供する土地又は家屋を無償又は低い価額で提供した場合における通常取得すべき賃貸料の額と実際に徴収した賃貸料との差額に相当する金額

(7)役員等に対して金銭を無償又は通常の利率よりも低い利率で貸し付けた場合における通常取得すべき利率により計算した利息と実際徴収した利息の額との差額に相当する金額

(8)役員等に対して無償又は低い対価で(6)及び(7)に掲げるもの以外の用益の提供をした場合における通常その用益の対価として収受すべき金額と実際に収入した対価の額との差額に相当する金額

(9)役員等に対して機密費、交際費、旅費等の名義で支給したもののうち、その法人の業務のために使用したことが明らかでないもの

(10)役員のために個人的費用を負担した場合におけるその費用の負担額に相当する金額

(11)役員等が社交団体等が会員となるため又は会員となっているために要する費用で、当該役員等の負担すべきものを負担した場合におけるその負担した費用に相当する金額

(12)法人が役員等を被保険者及び保険金受取人とする生命保険契約を締結してその保険料の額の全部又は一部を負担した場合におけるその負担した保険料の額に相当する金額
法人税法37条

七 前各項に規定する寄附金の額は、寄付金、拠出金、見舞金その他いずれの名義をもってするかを問わず、内国法人の金銭その他の資産又は経済的な利益の贈与又は無償の供与(広告宣伝及び見本品の費用その他これらに類する費用並びに交際費、接待費及び福利厚生費とされるものを除く。次項において同じ。)をした場合における当該金銭の額若しくは金銭以外の資産のその贈与の額における価額又は当該経済的な利益のその供与時における価額によるものとする。

八 内国法人が資産の譲渡又は経済的な利益の供与をした場合において、その譲渡又は供用の対価の額が当該資産のその譲渡の時における価額又当該経済的な利益の供与の時における価額に比して低いときは、当該対価の額と当該価額との差額の内、実質的に贈与又は無償の供与をしたと認められる金額は、前項の寄附金の額に含まれるものとする。
所得税法34条

一時所得とは、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得及び譲渡所得以外の所得の内、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得で、労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しないものを言う。

(コメント)

目的は、実体のない観念であるから、ここでいう営利目的は、労働力商品を直接購入し、資産を労働力に貸し付けたことをフィクションし、労働を疎外して、実体化させたものでなければならないと解される。

性質は、予め備わっていないから、労働を疎外することを土台に利潤と引き換えられた商品に付された価値のことである。