経済的利益に含まれるものの例示として、所得税基本通達36-15は、5項目を挙げる。

所基通36-15

法第36条第1項かっこ内に規定する「金銭以外の物又は権利その他経済的な利益」(以下36-50までにおいて「経済的利益」という。)には、次に掲げるような利益が含まれる。

(1)物品その他の資産の譲渡を無償又は低い対価で受けた場合におけるその資産のその時における価額又はその対価の額との差額に相当する利益

(2)土地、家屋その他の資産(金銭を除く。)の貸与を無償又は低い対価で受けた場合における通常支払うべき対価の額又はその通常支払うべき対価の額と実際に支払う対価の額との差額に相当する利益

(3)金銭の貸付又は提供を無利息又は通常の利率よりも低い利率で受けた場合における通常の利率より計算した利息の額又はその通常の利率により計算した利息の額と実際に支払う利息の額との差額に相当する利益

(4)(2)及び(3)以外の用益の提供を無償又は低い対価で受けた場合におけるその用益について通常支払うべき対価の額又はその通常支払うべき対価の額と実際に支払う対価の額との差額に相当する利益

(5)買掛金その他の債務の免除を受けた場合におけるその免除を受けた金額又は自己の債務を他人gが負担した場合における当該負担した金額に相当する利益

経済的な利益の例として、法人税基本通達9-2-9は、12項目を挙げている。

法基通9-2-9

法第34条第4項(役員給与)及び第36条(過大な使用人給与の損金算入)に規定する「債務の免除による利益その他の経済的な利益」とは、次に掲げるもののように、法人がこれらの行為をしたことにより、実質的にその役員等(役員及び同条に規定する特殊の関係にある使用人をいう。以下9-2-10まで同じ)に対して給与を支給したと同様の経済的効果をもたらすもの(明らかに株主等の地位に基づいて取得したと認められるもの及び病気見舞、災害見舞等のような純然たる贈与と認められるものを除く。)をいう。

(1)役員等に対して物品その他の資産を贈与した場合におけるその資産の価額に相当する金額

(2)役員等に対して所有資産を低い価額で譲渡した場合におけるその資産の価額と譲渡価額との差額に相当する金額

(3)役員等から高い価額で資産を買い入れた場合におけるその資産の価額と譲渡価額の差額に相当する金額

(4)役員等に対して有する債権を放棄し又は免除した場合(貸倒れに該当する場合を除く。)におけるその放棄し又は免除した債権に相当する金額

(5)役員等から債務を無償で引き受けた場合におけるその引き受けた債務の額に相当する金額

(6)役員等に対してその居住の用に供する土地又は家屋を無償又は低い価額で提供した場合における通常取得すべき賃貸料の額と実際に徴収した賃貸料との差額に相当する金額

(7)役員等に対して金銭を無償又は通常の利率よりも低い利率で貸し付けた場合における通常取得すべき利率により計算した利息と実際徴収した利息の額との差額に相当する金額

(8)役員等に対して無償又は低い対価で(6)及び(7)に掲げるもの以外の用益の提供をした場合における通常その用益の対価として収受すべき金額と実際に収入した対価の額との差額に相当する金額

(9)役員等に対して機密費、交際費、旅費等の名義で支給したもののうち、その法人の業務のために使用したことが明らかでないもの

(10)役員のために個人的費用を負担した場合におけるその費用の負担額に相当する金額

(11)役員等が社交団体等が会員となるため又は会員となっているために要する費用で、当該役員等の負担すべきものを負担した場合におけるその負担した費用に相当する金額

(12)法人が役員等を被保険者及び保険金受取人とする生命保険契約を締結してその保険料の額の全部又は一部を負担した場合におけるその負担した保険料の額に相当する金額
「給与を支給したのと同様の経済的効果」は、正確に文章化すると、経済的効果は自動に発生するのではないから「給与を支給したのと同じかそれと関係する経済上の関係を創設したもの」である。

役員は、労働者であり、利潤の評価のコントロール及び処分の権利は取得していない。

債券は架空の商品であり、資本は、必ずしもその所有の実体化を伴うものだけではないから、厳密には株主等の地位に基づいてではないが、フィクションされた資本関係に基づいて処分が行なわれるものであるから、(1)~(12)のケースの大部分は、()書きに該当し配当ということになるであろう。

「業務のためにした」を始めとする「ために」は、実体にない観念であるから、現実に、労働の疎外の手段となり、利潤の土台となったものと読み替えなければならないであろう。
法人税基本通達9-2-10は、「法人が役員等に対し9-2-9に掲げる経済的な利益の供与をした場合において、それが所得税法上経済的な利益として課税されないもの・・・であるときは、給与として取り扱われないものとする」と規定する。

所基通36-15に言う「経済的利益」には、「経済的な利益」に含まれないものがあることを、生産関係上のマニュアル上示唆している。経済的利益の内に、課税しないで労働力の再生産の義務付けているものがあるということである。

所得税法28条(給与所得)第1項は、「給与所得は、俸給、給料、賃金、歳費及び賞与並びにこれらの性質を有する給与に係る所得をいう」と規定している。

規定の仕方にケチをつけさせてもらうと、現金に価値属性は備わっていないから、「これらの性質を有する給与」は、「これらに該当すると評価できる給与に係る所得」としなければならないであろう。、経済関係から立法されまでの過程上、文理上、所基通36ー15にいう経済的利益も含まれると解される。

所得税法36条(収入金額)第1項は、その年分の各種所得の計算上収入金額に算入する金額又は総収入金額に算入する金額について、別段の定めを除き、「その年において収入すべき金額(金銭以外の物又は権利その他経済的利益をもって収入する場合には、その金銭以外の物又は権利その他経済的利益の価額)とする」と規定する。
法人税法34条(役員給与の損金不算入)は、その1項において掲げた給与でなければ損金算入できない旨を述べ、2、3項において損金不算入の給与について挙げて、4項においては、「前3項に規定する給与には、債務の免除による利益その他の経済的な利益も含まれる」と規定されている。

法人をフィクションすることにより、既にフィクションされている資本と労働者の関係に、出資した経済実体又は使用人と法人との経済関係が更にフィクションされるから、経済的な利益よりも経済的利益の方が範囲が広く、経済的利益は、経済的な利益を包摂していると解せられる。経済的利益は、経済に関する利益、経済上の利益(経済関係に基づく利益)と解することができるであろう。