[事実関係]

審査請求人甲、同丙及び同乙が、被相続人には、会社法第580条《社員の責任》第1項の規定する「債務の弁済する責任」があるとして、相続税の課税価格の計算上、当該「債務を弁済する責任」を債務として控除して相続税の申告をしたところ、原処分庁が被相続人は、当該「債務を弁済する責任」を債務として控除することができないとして相続税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分をした。

本件各更正通知書の内、請求人甲に対する更正等通知書の「処分の理由」欄には、「あなたは、本件申告において、合資会社A(以下「A商会といいます)の本件相続開始日における債務超過額1,401,816,220円を、同社の無限責任社員である本件被相続人の債務弁済責任に基づく債務であるとして本件相続財産の価額から控除していますが、本件相続開始日において、本件被相続人が上記1,401,816,220円に相当する債務については、相続税法第13条に規定する『被相続人の債務で相続開始の際に現に存するもの』には該当しませんので、債務控除は認められません」と記載されていた。

尚、丙に対する更正等通知書の処分の理由欄の債務控除額については、「本件申告」に代えて「本件修正申告」、乙の更正等通知書の処分の理由欄の債務控除額については、「本件申告」に代えて「本件更正処分」とそれぞれ記載されている他は、同様である。

国税不服審判所は、

「ところで、本件更正等通知書に記載された債務控除に係る処分の理由としては、上記からすると、本件合資会社の「無限責任社員である本件被相続人」が負っていた本件合資会社「の本件相続開始日における本件債務超過額1,401,816,220円の「債務弁済責任に基づく債務」は、相続税法第13条に規定する『被相続人の債務で相続開始の日の際現に存するもの』には該当し」ないため、同法に規定する「債務控除は認められ」ない旨提示されているとは考えられるものの、当該債務が、「被相続人の債務で相続開始の際現に存するもの」には該当しない理由については明らかにするものではない。

すなわち、本件各更正等通知書の「処分の理由」欄の記載からは、本件相続開始日における本件債務弁済責任に基づく債務が現に存在しないと原処分庁が判断した理由が、

例えば、①本件合資会社に1,401,816,220円の債務超過額が存しない、

②本件被相続人が無限責任社員ではない、

③本件合資会社の債務超過額は、およそ無限責任社員である本件被相続人の債務ではない、

④合資会社の債務超過額は、無限責任社員の債務ではあるものの、本件においては、会社法第581条《社員の抗弁》第1項に該当する社員の抗弁に事実があり、無限責任社員の債務として認められるための要件を満たしていない、

⑤そもそも、会社法第580条第1項は、債務を弁済する責任を規定しているにすぎないという法律的な見解を前提として(尚、当該見解の存否については争点2のとおり争いがある)、会社債権者からの弁済請求を受けていない以上、本件被相続人は、本件債務弁済責任に基づく債務を何等負っていないなど、

様々な可能性が考えられ、原処分による処分の実際の理由が、これらのどれに当たるのか、あるいは、これら以外の理由なのか、不明であると言わざるを得ない。

したがって、本件各更正等通知書においては、債務控除に係る処分の理由は、行政手続法第14条第1項の趣旨(①原処分庁の判断の判断の恣意の抑制及び②名宛人に対する不服申立の便宜を満たす程度の提示をされたものとは言えない」とした(平成26年11月18日裁決)。

[解説]

合資会社の無限責任社員は、利益剰余金を超えて、出資割合を超えて配当を受ける規定を置くことができる、すなわち、疎外労働を土台とした利潤につき、架空資本を引渡して配当を得ることを含め、出資割合を超えて処分することができ、経営することができる、労働を疎外できるということであって、合資会社の無限責任社員は、出資割合を超えた賠償義務を負わせられる。資本は、国際金融資本が、国債のフィクションと国際金融資本によるその買取により、投融資を受けて、疎外労働を土台とした利潤の残滓を受けていることをもって、国際金融資本は、資本に、国債の返済を負担させるのであるから、利潤を土台にした所得又はその蓄積である純資産に価値を付与する段階においては、経済上の事実関係を全体化しなければならない。

法解釈が法の趣旨目的と交渉しているということは、問題提起の全体化ができていないことは、問題提起の全体化の全段階の、実体関係、実体関係の土台となる経済関係上の事実の全体化、事実関係の全体化がされていないということである。

経済関係上の事実、事実関係の全体化ができていないということであれば、問題提起の全体化もできていないということである。問題提起を全て摘出し、法解釈を示したとしても、これらは観念にすぎないから、調査により得た事実、事実関係を全て附記しなければ現実の経済関係に基づいた課税はできないであろう。恣意すなわち観念の排除は、法や経済の趣旨目的ではなく、行政官を使用する国際金融資本の経済関係上の義務である。

[関連条文]

行政手続法14条

行政庁は、不利益処分をする場合には、その名あて人に対し、同時に、当該不利益処分の理由を示さなければならない。但し、当該理由を示さないで処分をすべき差し迫った必要がある場合は、この限りではない。

2.行政庁は、前項但書の場合においては、当該名あて人の所在が判明しなくなったときその他処分後において理由を示すことが困難な事情があるときを除き、処分後相当の期間内に、同項の理由を示さなければならない。

3. 不利益処分を書面でするときは、前2項の理由は、書面により示さなければならない。