[事実関係]

東大阪市の全額寄附により旧民法34条に基づき設立された財団法人であるXは、法人税法上の公益法人に該当するとされ、青色申告の承認を受けており、公益事業部門と収益事業部門に区分して収益事業部門の所得のみ申告してきた。

Xは、東大坂市から支払われるし尿業務の委託料の原価割れから赤字となり、累積債務を増大させてきたが、平成3年には東大坂市から新規業務委託の支援策が行われ、Xの公益事業部門は、平成8年に黒字に転化し、平成9年から、委託料の剰余金を東大坂市についての債務の返済の原資にしてきており、毎年1億3,000円程度を東大坂市からの債務の返済に充ててきた。

課税側は、

「貴法人が東大坂市と締結した各種委託契約に基づき受ける委託料及び委託料及び東大坂市補助金交付指令により、派遣職員の人件費及び社屋の賃貸料に充当あるいは補助することに使徒を限定されている補助金は、法人税法第2条第13号に規定する収益事業の収入に該当します。したがって、当該事業年度の所得金額に加算しました」と更正通知書に記載し、併せてそれに事業区分、契約等年月日、委託契約等の名称、金額を掲記して更正処分を行った。

裁判所は、

「法人税130条2項は、その更正の理由を付記すべきものとしている。これは、更正処分庁の恣意を抑制し、その恣意を抑制すると共に、更正の理由を相手方に知らせて不服申立ての便宜を与える趣旨によるものと解される。

一般に法が行政処分に理由を付記すべきものとしている場合に、どの程度の理由を記載すべきかは、処分の性質と理由付記を命じた各法律規定の趣旨目的に照らして決定すべきである(最判昭和38年5月31日)ところ、帳簿の記載を否認して更正する場合には、法人税法が青色申告制度を採用し、青色申告に係る所得の計算については、それが法定の帳簿記載に基づくものである以上、その帳簿の記載を無視して更正されることがないことを納税者に保障した趣旨に鑑み、単に、更正に係る勘定科目とその金額を示すだけでなく、そのような更正をした根拠を帳簿記載以上に信憑力のある資料を摘示することにより具体的に明示することを要するというべきである。

他方、帳簿記載自体を否認することなく更正する場合においては、その更正は、納税者による帳簿の記載を覆すものではないから、そのような更正をした根拠について、帳簿記載以上に信憑力のある資料を摘示することを要しないが、更正の根拠を上記の更正処分庁の恣意抑制及び不服申立ての便宜という理由付記制度の制度目的を充足する程度に明示するものであることを要すると解され、更正処分庁が当該評価判断に至った過程を検証しうる程度に記載する必要があるというべきである(最判昭和60年4月23日)。

また、更正の理由付記は、単に、更正の理由を明示するに止まらず、更正の妥当公正を担保する趣旨をも含むものであるから、更正の理由を納税者が推知できる場合であっても、その理由を推知できるか否かにかかわりがなく、付記すべき理由の程度が緩和されるものではないというべきである(最判昭和38年12月27日)」とし、

「本件各更正処分は、いずれも控訴人の受託業務、当該業務の契約年月日及び計上漏れとなっていた金額についての帳簿上の記載を覆すことなく、これらをそのまま肯定した上で、かかる業務が法人税法上の収益事業に該当するという法的評価により更正したものであることが認められるので、本件各更正処分は、帳簿書類の記載自体を否認することなしにされた更正処分である」とした上で、

「事実関係を示すことで法の適用関係が一義的に明らかである場合やこれを容易に推測することができる場合等、法の適用については結論のみを示せば足りる事案が存することは否定できないが、一般的に法の適用については常に結論のみを示せば足りるとする被控訴人の主張は採用しがたい。

最高裁昭和60年判決の事例は、被控訴人が主張するように、『理由付記の程度としては、法的判断の結論のみが記載され、判断過程や下位法規の検討結果、適用条文についても具体的に記載されていなかった』ものではなく、被控訴人の主張は採用できない」として、

「本件各付記理由は、法の適用については、『法人税法2条13号に規定する収益事業の収入に該当する』との結論を記載するに留まり、法人税法施行令5条1項10号、同施行規則4条の3、実費弁済通達の規定や、その適用関係についての判断過程の記載がすっぽりそのまま欠落しており、本件各事業が何故収益事業の収益に該当するのかについての法令の適用関係や、何故そのような解釈をするのかについての判断過程の記載が一切ない」としたのである(大坂高判平成25年1月18日)。

[解説]

課税側は、更正処分の過程において、Xの本件各事業が収益事業に該当するのかどうかという経済上、実体上の事実確定をして更正通知書に附記しなければならない。

本判決は、「専門家に相談する等すれば、右更正理由から容易に判明するところであるから、当該条文の記載まで必要であるとは言えない。」、「事実関係を示すことで法の適用関係が一義的に明らかである場合やこれを推測することができる場合等、法の適用については結論のみを示せば足りる」とし、

法令の解釈についても、判例・通説により意義が確立しているような場合や通達により行政庁側の取扱いが明示されているような場合にまで、その内を全て理由として付記しなければならないのかという疑問が残る」という見解があるが、これらは実体のない観念に基づく課税、恣意課税を認めることにほかならない。

納税者が税務調査を経て更正理由を知っているか否かということも実体のない観念である。理由の程度や理由が相当であるとの評価は、個々の事案の経済全関係、実体全関係によって確定しなければならないであろう。

帳簿記載金額が収益事実に該当するか否かは、属性の付与の問題にとどまらず、資本関係のフィクション、労働の疎外を土台とした利潤と、それと交換された商品の評価という事実関係の確定の問題にまで遡らなければならないのであるから、国際金融資本は、代理人に、チェックする過程に用いた資料を記載し、疑義に至った過程、調査した結果、帳簿の記載に誤りがなかったとした上で、法適用に関する国債を負担させる側の結論が示されているだけでなく、その結論に至るまでの法令解釈の確定過程まで附記して恣意に基づいたことを否定し、更正処分の土台までの過程がフィクションでないこと、更正処分が実体あるものとさせばなければならないであろう。

信憑力という実体のない観念の問題ではない。実体あるものと社会に認めさせることができるかどうかである。

労働者は、国際金融資本の債権者であるにもかかわらず、国際金融資本がした借金である国債の負担をさせられ、支出した金銭に租税という価値属性が付与され、原子力、石油、戦争、製薬、食品添加物に投融資されているという現実がある。帳簿事実ではなく現実の経済関係を疎外し、覆しているのである。

実体のない観念である青色申告の趣旨が理由付記の土台ではない。法定の帳簿であれば必ずしも利潤を産む、所得が計算される過程が表現されるものではない。

処分には性質は備わっていない。事実関係を疎外し、別個の事実関係をフィクションし、価値属性を付与して実体化しているのである。

これが、更正処分に理由付記が義務付けられていることの土台であり、恣意を抑制するという義務すなわち要件、経済関係のフィクションの禁止するという義務すなわち要件は手段である。

調査官一人当たりの一事務年度当たりの調査件数は2件であるから、理由付記の程度を後退させる理由にはならないであろう。

課税側は、Xが投下した金銭が現実に事務処理収入の源泉、労働が利益の土台となっているかを調査しなければならないのであって事務処理のために必要かどうかという実体のない観念たる目的と交渉して調査するのではない。

争訟の段階で課税側が知り得た事実があったり、税務調査の段階で知り得た事実と違いがあったりすることがあってはならず、それらがあったとすれば処分を取り消して再更正しなければならない。新たな事実を知り得たり税務調査の段階で知り得た事実があるということは自然によるものではない。

事実関係を全体化して調査をしていないからである。調査の段階で得た事実、資料と法適用の結果、法適用の、法適用に関する法も含めた適用の土台となった、全ての解釈と全ての事実関係との対応関係が逐一記載され、納税者において完全に知り検討できるものでなくてはならないのである。