理由附記の不備が処分の取消事由に該当するとされる嚆矢となった最高裁昭和38年5月31日判決

[事実関係]

靴の小売業者Xが所得税青色申告により確定申告を行ったところ、税務署長は、「売買差益率検討の結果、記帳額低調により、調査差益率により基本金額修正、所得金額更正す」と記載した更正通知書をXに送達した。

再調査の請求棄却の決定には、「再調査の理由として掲げられている売買差益率については実際の調査差益率より店舗の実態を反映したものであり、標準差益率によった更正ではなく、当初更正額は正当である」と附記されていた。

審査請求の棄却の決定は、「貴方の審査請求の趣旨、経営の状況その他を勘案しますと、所轄税務署長の行った再調査決定処分には、誤りがないと認められますので、審査の請求には理由がありません」と記載されていた。

 一審は、「法定の帳簿書類を無視して更正することは許されず、且つ納税者は、更正が右帳簿書類の記載に誤りがあり、それによったのよりも、もっと正しい根拠でなされたという説明を附してもらう利益を保障されているものと解すべき」であるとした上で、

更正に附記された理由について、「単に更正した理由の結論を概括的に提示した」とし、「納税者にとって、更正処分の具体的根拠を知ることができない」として更正処分及び審査決定を取り消した(東京地判昭和34年2月4日)。

控訴審は、「右記載は、結局帳簿書類中売上金額の計算に誤りがあったから所轄税務署長調査に係る差益率によって修正したものであることを明らかにしたものと解すべきであり、本件事実関係の下においては、納税者であるXにおいては容易に右理由の記載を右のように理解することができたものと推測される」とした(東京高判昭和35年10月27日)。

最高裁は、

「一般に法が行政処分に理由を附記すべきものとしているのは、処分庁の判断の慎重、合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、処分の理由を相手方に知らせて不服の申立てに便宜を与える趣旨に出たものであるから、その記載を欠くにおいては処分自体の取消を免れないものと言わなければならない。

どの程度の理由をなすべきかは、処分の性質と理由附記を命じた各法律の規定の趣旨・目的に照らしてこれを決定すべきであるが、旧所得税法45条1項は、申告にかかる所得の計算が法定の帳簿組織による正当な記載に基づくものである以上、その記帳を無視して更正されることがない旨を保障したものであるから、同条2項が附記すべきものとしている理由には、特に帳簿書類の記載以上に信憑力のある資料を摘示して、処分の具体的根拠を明らかにすることを必要とすると解するのが相当である。

しかるに、本件の更正附記理由をもってしては、いかなる勘定科目に幾何の脱漏があり、その金額はいかなる根拠に基づくものか、また調査差益率がいかにして算定され、それによることがどうして正当なのか、右の記載自体から納税者がこれを知るに由ないものであるから、それをもって旧所得税法45条2項にいう理由附記の要件を満たしているものとは認め得ない」とした(最判昭和38年5月31日)。

[解説]

本判決は、課税処分、行政処分の過程についての問題提起の原因となった判決である。本判決を分析する基礎として、理由附記が法制化される前後の経済関係から見ることとする。

保険を含めた租税は、労働の疎外を土台とし、民間金融機関の架空資本への投融資のフィクションを手段とした紙幣発行権、準備金制度の資本関係のフィクションを源泉とし、労働の疎外を土台にした実体関係に基づく、利子、配当収入の土台の不足を土台とし、紙幣発行権、準備金制度を持たない経済実体の現金留保を損失させる。

資本、生産手段を持たない、既に労働を疎外されている労働力に租税は転嫁され、労働力の最生産の土台となる現金を収奪する。

紙幣発行権、準備金制度を所有しない経済実体の労働力は、国際金融資本に債券をフィクションされ国際金融資本からの投融資のフィクションの受け容れを余儀なくされ、生産手段の貸与、労働の疎外、疎外した労働の資本への転嫁による留保現金だけでなく、租税という手段により回収された現金が国債の返済に充てられ、民間金融機関の資本により紙幣発行権、準備金制度に基づいて発行された実体のない現金商品と共に、石油、原子力の労働力に投融資をフィクションされてきたという既成事実がある。

紙幣発行権、準備金制度を持たない経済実体たるプチブルである役員を使用して労働力の間ににフィクションされた資本関係、経済関係、生産関係を疎外し、現金留保が回収され国債の返済負担に充てられryことに応じさせる手段として理由附記制度がロックフェラーとの資本関係、生産関係に基づいたシャウプ税制の中で規定された。

理由附記義務の趣旨、機能は、日本においては、恣意抑制、不服申立の便宜と説明され、アメリカやドイツにおいても、理由附記は行政庁の恣意抑制に資することが指摘され(Culp Davis,Administrative law tretise444-, Ule,Verwaltungs verferen rect 5)、理由附記により国民の積極的な行政の参加協力が得られるとする(Ule前掲)。

学説は他に、恣意抑制の他に処分適正化機能、説得機能を挙げる(Tipke, Steuer recht, 849,1001)。

これら趣旨、機能は、実体のない観念に留まるから、理由附記が手段、恣意抑制、不服申立ての便宜、行政の参加が実体の関係(存在、行政を使用する国際金融資本の義務にしなければならない。

裁判例、学問上の研究により、長文の理由附記を記載することが必要であると主張されてきたが、司法が、金融機関の資本との資本関係の擬制をフィクションし、労働の疎外を土台にした、資本の現金留保、回収義務に基づいて規定された手続法の趣旨と交渉して国際金融資本の解釈、適用を社会に認めさせたことにより、紙幣発行権、準備金制度を持たない経済実体においてフィクションさせた資本関係、生産関係、経済関係に基づかない処分が行われてきた。

<p> 前述の資本との経済関係、課税過程についての既成事実に基づけば、資本は、フィクションされ現実のものとさせた事実関係を全体化しないで処分を行うことができず、現金留保義務、回収義務のみに基づいて、紙幣発行権、準備金制度を所有しない経済実体の資本関係、経済関係、生産関係を疎外した、実体のない処分を行い得ないという義務があると解されるのであって、フィクションされた経済関係上の質問検査を土台とする理由附記は、実体のない処分を行うことができないという義務を土台とし、義務履行手段である。

現実に、課税側は、現実の原因事実に遡って、過程を説明せざるを得ず、理由を附記して通知して、納税者がそれを読んで遡って分析することで、

①附記理由は、処分の土台となる経済事実があるものなのか、

②労働の疎外を土台としてフィクションされた資本関係が暴露されているか、原因として挙げる事実は現実にフィクションし存在化されたものと同じなのか、

③フィクションされた事実関係の全てに誤りがないか、

④処分までの間にフィクションはないのか、

⑤資本がフィクションした資本関係に基づく現金留保、回収義務、留保の過程にのみ基づいていて現実の経済事実が疎外されていないか、

⑥推計せざるを得なかったのか否か、

⑦根拠条文はあるのか、

⑧結論すなわち事実関係の確定、

⑨法の解釈、法が包摂される段階、所得の確定、処分の確定までの過程に方便がないのか、計算誤りはないのか、実体のない観念である意思、実体のない観念である目的は含まれていないか、実体のない観念であるリスクや課税の期待が理由に挙げられていないか、偶然や自然という言葉を用いて原因、事実関係、経済過程の全体化をやめて事実確定から処分までの過程が省略されていないか

上記のことが明らかになる。

納得は実体のない観念であり、実体のない、納得させるだけの、資本の経済関係に応じさせるだけの理由は処分の理由とはなり得ないから取消事由となるのである。納税者が知っていたか否かは実体のない観念であるから、納税者が知っていたか否かに関係なく、納税者の帳簿記載の程度に関係なく、記載自体から全てがわかるものである義務がある。

調査、質問検査、全事実関係の摘出、把握、確定、全事実、全取引についての原始記録の確定、全取引、全経済事実の原因の確定、原因と原始記録の突合をすることで、白色申告の理由附記の程度に差異を設けることは理由がないのである。</p>

 以上の点を踏まえて本件更正処分の理由附記の程度についてみると、理由附記の程度については、科目毎に、加算又は減算した金額を掲げ、その算定の根基を記すことを定めた昭和34年直所6-14通達が出されていたが、本件更正処分の附記理由は、この通達の水準にすら達していない。

司法は、課税側が全ての事実関係を漏れなく摘出、把握して調べて、全ての資料を見たのか、課税側が摘示した全資料が全てにおいて現実の経済事実と相違がないかではなく、帳簿書類と比較してどちらが信憑力があるかという実体のない観念を拠り所に事実確定をしてしまっている。

全ての処分には属性は備わっていないから、処分に応じて、事実関係の全体化を疎外し、理由附記の程度を後退させることは資本に逃げ口上を与え、資本の利益のみ資することとなる。本件処分について言えば、取消事由が存すると言えるであろう。