徴収職員は、滞納処分のため滞納者も財産を調査する必要があるときは、その必要と認められる範囲内において、次に掲げる質問し、又はその者の財産に関する帳簿書類(その作成又は保存に代えて電磁気記録(電子的方式、磁気的方式その他の人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。)の作成又は保存がされている場合における当該電磁気的記録を含む。第146条の2及び第188条第2号においても同じ。)を検査することができる。一、滞納者、二、滞納者の財産を占有する第三者及びこれを占有していると認めるに足りる相当の理由がある第三者、三、滞納者に対し債権若しくは債務があり、又は滞納者から財産を取得したと認めるに足りる相当の理由がある者、四、滞納者が株主又は出資者である法人(国税徴収法141条)。これらの法人は、会社法上の会社に限られず、特別法上の法人、例えば、信用金庫、各種協同組合も含まれる。質問検査の相手方が質問に答えない場合又は検査を拒否した場合には行うことができないが、徴収職員がする質問に対して答弁をせず、又は偽りの答弁が陳述をした者及び検査を拒否し、妨害し、又は虚偽の帳簿書類を提示した者については罰則(10万円以下の罰金)が適用されることがある(国税徴収法188条)とされる。しかし、刑事手続に黙秘が認められていることから、刑事処分でない行政手続において不答弁というだけでは現実には罰金は課すことはできないであろう。刑事手続は、金融資本家が、行政機関を使用して、犯罪の嫌疑という属性付与を実体あるものと社会に認めさせる過程であり、事実確定は確定していない。課税処分、滞納処分は行政手続であって、行政手続は、経済実体があって、事実確定が行われた後に、確定した経済事実が疎外されて、付与された価値属性が実体化されるから、令状を要する刑事手続は採用されないとされている。憲法35条、38条が適用されないと解するとすれば、質問検査によって得られた資料は、関係者の刑事上の義務を調査追及の基礎とすることはできず、刑事手続において証拠になり得ないと解されることになる。租税の徴収は、課税処分と同じく、現金留保の疎外による課税関係、金融資本の現金留保過程である課税の過程であるから、課税処分の前過程にある質問検査の義務と同じく、調査に入る前に既に得られた資料に基づき、調査理由を文書にて告知する義務があると解される。課税処分に係る質問検査と同じく、滞納処分に係る質問検査についても、税理士を立ち会わせることができると解されている。