上場法人ー現実には同族法人であるがー、中小同族との評価をされている法人の中でも大規模法人は、申告期限延長の特例を出しているから、上場法人は、資本に決算数値の報告が済んではいるが、6月中も税理士事務所は繁忙期である。

4月1日から3月31日を一事業年度とする法人が、期末在籍使用人について、決算賞与の支給基準として、当社が当年度において粗利○円上達成した場合という条件を1月の取締役会で設定し、4月に支給基準が達成しているかを確認し、従業員毎の決算賞与を決定、通知し押印させ、達成している場合には、従業員毎の個別成績評価を行って貢献度により決算賞与の零倍から○倍の範囲で追加賞与の額を算定し、決算賞与金額については未払金、追加賞与については引当計上し、4月末までに従業員に支給するとした場合、決算賞与として未払計上した金額は当該事業年度(=未払計上した事業年度)の損金とすることができるか。このことについて、金沢国税局名義の回答は、期末在籍、支給基準に達していない場合には支給しないということであるから、本件決算賞与金額を支払った事業年度の前事業年度の1月中通知を行っていても、法人税法施行令72条の3第2号イの要件(債務確定の要件)を満たしているとは言えないというものである。

決算日の段階においては、将来、一定の条件を満たした場合に賞与を支給するということで、引当計上した価値は、実体のない観念、方便である。法人の資本は、労働を強化し、ノルマを課しておきながら、賞与を支給しないで、決算書は、労働の疎外の過程が看て取れないから、決算書上で事業損失をフィクションしたり、労働者に債務をフィクションしたりして賞与を支給しないことの逃げ口上を用意するということが現実に決算申告までにできてしまうのである。

紙切れは主人を持たない。オンライン上で支給された場合には、労働者が預金口座から引き出すまでは他の経済実体に貸し出され、オンラインを経由しない紙切れの支給は、支給しなくても課税する側には、賞与を支給したか否かがわからない。

決算賞与及び追加賞与は、労働者に金員が現実に行き渡るまでは、実体がない以上、労働の疎外を土台に利潤を得ているのであって、損金に算入することができないと解されるであろう。

金額が事業年度末に確定しー当該事例ではそれも確定していないがー、事業年度末から1ヶ月以内に支給とした場合は損金というのも、労働力商品に支出した金員に付与する価値、労働の疎外に付与する価値の未確定という方便を付しての特例であって、労働者は支給を一ヶ月待たされ、その間、他の経済実体に貸し出されているということである。

国債のフィクション、銀行資本による買取による投資のフィクションを源泉とし、労働の疎外を土台とする、国際金融資本、おこぼれを享受する産業資本、劣後金融資本の国債負担を労働者がさせられ、貸付けが労働力商品の評価を産み出したかのような方便が付与されることになるのである。

成績に関わらず、労働の実体を疎外することなく、前貸しして支給された商品の評価を待たせ、利潤を分配させたのであれば、利子を加算して現金商品を支給しなければならないのである。