デラウェア州に設立した原告のLPにつき、東京高裁は、外国の法令によって設立された事業体が日本の租税法上の法人に該当するかについては、当該外国の法令がその設立、組織、運営及び管理等について規定しているか併せて検討すべきであるとして、デラウェア州のLPを法人に該当するとし(東京高判平成25年3月13日)、名古屋高裁は法人に該当しないとした(名古屋高判平成25年1月24日)。
米国においては、Luna v.CIR(42TC,1077-1078)の中で述べられている基準に基づいて、租税裁判所は、法人に該当するかの事実確定の過程における問題提起を行ってきた。当該裁判において述べられている基準のとおりである。
①関係者による契約とその履行、
②出資があり、もしあれば、各々の関係者によって事業に資本を投下してきたこと、
③所得と資本に関する所有と払い戻しの権利、
④関係者は、純利益について持分を有し、損失を負担する義務を負うのか、所得の一定割合に応じて、報酬という名目で一定でない金額を役務について受け取るのか、
⑤事業の名義が連名で事業が行われること、
⑥組合申告書を提出しているか歳入庁長官名義宛に連名で事業を行っているということを示しているか。
⑦事業に基づいた記帳が保持されていること、
⑧関係者相互が、他の関係者を管理し、責任を分担しているか。
当該裁判において述べられている基準について以下で分析することとする。
①については、各経済実体は、資本関係、経済関係に基づいて契約の締結とその履行を余儀なくされている。そこに各経済実体の意思は介在しない。
②については、組合員たる経済実体は、産業に投資しなくとも、資本の内、架空資本を所有することによるものや、現金商品、土地建物を貸し付けたことにより、投融資を受けた経済実体の労働者の労働を疎外し、疎外した労働を資本に転嫁している。組合員が産業だけでな不動産賃貸や持株会社の実体を有するものに投融資していても組合は法人である。
③については、中央銀行を所有する民間銀行の資本によって発行された紙幣を源泉として、各経済実体の資本は、経済過程の中で、資本を引き換えに現金商品を取得したのであって、現金商品を所有していないが、投融資した経済実体の資本、負債、純資産を持分に応じて所有していることを法律行為を媒介に実体あるものと社会に認めさせ、且つ、現実に配当を受けている。現実には資本を所有していなくとも、登記した経済実体の資本を所有し、出資した経済実体との間に資本関係、経済関係があれば法人である。
④については、現実には、法人税を課される前の利益から組合員に利子が支払われ、配当され、組合員が収受した利子配当に所得課税がされても二重課税とはならない。③に関してコメントしたように組合と出資した経済実体に資本関係が成立するから組合は法人である。使用人がした労役について、組合の利益に応じて、一定していない金額の報酬は、現実には法人税支払後の利益から支払われるが、組合の資本と使用人の間には、資本関係、生産関係が存在し、組合名義の団体であっても法人であると考えられる。
⑥については、課税は、各経済実体経済利益を土台に中央銀行を所有する民間金融機関を所有する国際資本と劣後金融資本との経済上の敵対関係から法を制定し行われるものであるから、課税関係から組合が法人であるか否かが規定されるものではない。東京高裁も事業体が私法上の法人に該当するかを検討する際には、租税法が規定する事業体の課税関係を持ち出すことは主客転倒である旨を述べる。
⑧については、組合と各組合員名義の経済実体の所有関係に基づいて、組合員名義の各経済実体間の所有関係、経済関係が規定され、各経済実体間の所有関係、資本関係、組合との資本関係によって義務が規定されるから、各経済実体が負担を余儀なくされるのは、自由意思の介在する責任ではなく、義務である。各経済実体間に資本関係が存するから法人であろう。