[事実関係]

建物の除却と借地権の取得について、

「減価償却資産たる建物を除却した場合に未償却残額あるときはその未償却残高を当該事業年度の損金に算入することができると解すべきであるが、右建物をその敷地の所有権ないし借地権とともに取得した後、短期間内に右建物の除却に着手するなど当初から右建物を除却してその敷地を利用する目的であることが明らかである場合には、右建物の取得費用は実質的にはその敷地の所有権ないし借地権取得の対価的性質をもつとみるのが相当であるから、租税公平の見地から、右建物の取得費用ないし未償却残額を当該事業年度の損金に算入できないと解するのが相当である(法人税基本通達7-3-6も、右と同旨であると解される)」とする裁判例がある(東京地判昭和49年8月30日)。

[解説]

通達の趣旨、建物取得の目的は実体のない観念であるから、事実確定の土台とはならない。

土地、建物には価値属性は備わっておらず、土地は所有しているだけでは資本増殖を産まない。土地、建物の取得価額、取得の段階で引き渡して取得した現金に付与した価値は、前所有者、金融資本により疎外された労働が資本に転嫁された金額である。

土地建物を取得した経済実体は、資本関係から、生産手段にして貸与し、労働を疎外し、疎外した労働を資本に転嫁することを余儀なくされるが、土地を取得した経済実体が、現実に建物を除却して、借地、敷地を生産手段にして労働者に貸与し、労働を疎外し、疎外した労働を資本に転嫁したという過程がなければ、除却損の計上を否定することはできないであろう。