[事実関係]

建物をその敷地の借地権とともに取得した後、建物を取り壊した場合につき、「同一所有者に属する土地建物のうち建物のみが譲渡された場合には、特段の事情がない限り、当然に敷地に対する借地権の設定があったものと推認される。また、建物を敷地の所有権又は借地権とともに取得した後、短期間内に当該建物の除却に着手するなど当初からその建物を除却してその敷地を利用することが明らかである場合には、当該建物の取得代価又は借地権の対価的性質をもつとみられるから、その取得価額を構成する。なお、土地賃貸借契約において、賃借期間満了及び解除による契約終了時に、土地所有者に対して借地人が借地権の対価その他の名目を問わず何等の金員を請求をしない旨の特約があったとしても、それは借地人が借地権価額を回収し得ないというだけであって、これがため、借地権取得のために投下された金員が借地権の取得価額ではないという理由とはならない」とする裁決例がある(平成3年2月27日裁決)。

[解説]

建物の土台となる敷地を所有するか賃借するかして敷地の貸与、労働の疎外による資本増殖を社会に認めさせない限りは、経済実体は、建物を建設取得することはできない。底地、借地に価値属性は備わっていない。底地、借地を直接又は間接に生産手段にして労働者に貸与して、労働を疎外し、疎外した労働を資本に転嫁することで、価値属性を社会に認めさせることを余儀なくされる。明らかか否かは実体のない観念である。現実に建物を取り壊して敷地を貸与して疎外した労働を資本に転嫁させることが資本関係上義務付けられ、現実に取り壊して貸与し疎外した労働を資本に転嫁することで敷地に付与された価値を社会に認めさせることになる。敷地、建物の前所有の経済実体が敷地、建物を引き渡すことで得た現金商品に価値属性が付与され、敷地建物の所有権、借地権、これらの引渡しにより取得した現金商品に付与された価値属性を実体あるものと社会に認めさせ、建物を取得した経済実体において、生産手段にして労働者に貸与し、疎外した労働を資本に転嫁させてきたが、資本関係を土台とする契約により借地権の実体関係、価値は疎外され、底地に価値が備わっているとの方便により、借地権代又は地代の支払いが余儀なくされ、立退料が支払われなかったとしても、借地権が実体あると当該裁決は、言っているのである。