[事実関係]

土木建築業を営む法人である請求人は、平成12年8月まで、合資会社Fから生コンクリートを仕入れており、全ての仕入先を対象とする仕入割戻金及び大口取引先等の特定の仕入先を対象とする仕入割戻金を受け取り雑収入に計上していた。

仕入割戻金の算定基準について協議中に、当該仕入先が一方的に持参した現金について、仕入割戻金を益金に計上しなかったことから、原処分庁は更正処分及び重加算税賦課決定処分を行った。
審判所は、

「①F社の代表社員Gは、本件金員を請求人に持参した経緯について、請求人から平成9年の年末までに特別リベートを支払うよう要望があり、年末で仕事の最終日ということもあって現金を用意したこと、本件金員を請求人の事務所に持参したが請求人の代表社員Hが不在のため、当該代表社員Hの工事現場へ持参し金員を渡したこと、その際本件金員は平成6年5月から平成9年3月までの期間の特別リベートの精算金である旨Hに告げたところ、Hは何も言わずに受け取った。

②平成12年9月18日付で、F社から請求人に対し、請求人は本件金員が平成6年5月1日から平成9年3月31日までの期間の特別リベートであることを了承し領収書を発行すること、及び、F社は平成5年5月1日から平成6年3月31日までの期間の請求人に対する特別リベートが2,358,000円であることを認めてその支払に応じる旨の念書が差し出されている。

③Hは、Hが代表者になってからはF社より特別リベートを受け取ったことがないこと、請求人はF社に対して特別リベートの算定基準を示しているが了解には至っていないこと及び前述の念書に対する回答は保留中である旨の回答をした。請求人は、本件金員はF社との特別リベートの単価について話し合い中に、一方的にF社の社長が持参し置き去ったものであり、当該単価確定していないから特別リベートではない旨主張している。

ここで、仕入割戻しとは、ある一定期間に行った多額の又は多量の仕入に対して、仕入先からの返戻金(リベート)をいうものであって、その計上時期については、法人税2-5-4で、(i)その算定基準が購入数量額又は購入数量によっており、かつ、その算定基準が契約等で明示されている場合には、購入した日の属する事業年度、(ⅱ)(ⅰ)以外の場合には、その仕入割戻しの通知を受けた日の属する事業年度とする旨定められている。

そして、当該(ⅱ)の取扱いは、そもそも仕入割戻しとは仕入先が取引量又は取引条件等によって一方的に決定するものであり、支払の通知があるまでは金額が確定しないということから定められたものと認められ、本件の場合、上記の認定事実より、請求人とF社との間で特別リベートの算定基準についての契約等がなかったことは明らかであるが、平成9年12月27日にF社がHに本件金員を手渡した際、平成6年5月から平成9年3月までの期間の特別リベートの精算金である旨を告げていることから、その日にF社から請求人に対し特別リベートの支払の通知があったと認めるのが相当である。

本件金員は仕入割戻金として本件事業年度の益金の額に算入しなければならない。請求人とF社の間には特別リベートの金額についての協議が整っておらず、請求人が受領した金員が自己に帰属するとの認識はなく、また金額が未確定なのだから本件金員は預かり金にすぎないとして帳簿上に計上しなかったのは単なる誤解に基づく計上漏れであり、また金庫に現金を保管していた点も6,000,000円という金額の大きさからも盗難等の防止のためであり、隠匿しようとしたものではないと認められ、請求人の行為には無理からぬ点があると認められる。

仮装隠蔽には当たらないとするのが相当である。しかしながら、本件金員が本件事業年度の益金算入されていなかったことに国税通則法65条第4項に規定される正当な理由があるとは認められないので、重加算税の賦課決定処分の内、過少申告加算税相当額を超える部分の金額を超える部分の金額について取り消すのが相当である」とした(平成13年7月9日裁決)。

[解説]

問題の所在は、下記にある。

収益の認識、仮装隠蔽の意図の有無は、仕入割戻しの収益計上を妨げる事由になり得るのか。

仕入割戻を収益計上しなかったことは、国税通則法にいう正当な理由に該当するか。

国際金融資本との資本関係から、法人の資本は、既に労働を疎外済みの生産手段に現金を投下し、労働力商品の労働を疎外し、資本に転嫁し、現金商品と交換せざるを得ない。生産手段の仕入代の支払いは労働力商品に転嫁される。

国際金融資本の資本関係による既存の紙幣発行権に関する実体関係に基づく現金留保、回収義務から、既に労働を疎外済みの生産手段を現金商品と交換した法人の資本は、売上割戻しを支払わざるを得ず、その支払いを労働力商品に転嫁する。生産手段の購入があって仕入割戻しが実現するのであって、期間の経過によって割戻金額が確定するのではない。

受領金員が利息名目で割増になったとしても、それは労働の再疎外である。仕入割戻しを収受した法人の資本は、国際金融資本との資本関係に基づく現金留保義務から、リベートを受取る受け取らないに意思はなく、受領した割戻し名目の金員は労働者には分配しない。リベート受領側は、リベート受領側の現金留保に基づいてリベートを請求できない。

リベート受領側は、算定基準を了解するしないの意思はない。受領した現金商品に価値属性が付与され、それを実体あるものとして社会に認めさせている。受領した金員は、それを源泉に、再度、生産手段に投下され労働を疎外し疎外した労働を資本に転嫁するし、金融資本へも利子配当の支払いを余儀なくされる。現金は所有主を持たず、経済実体は現金に所有されるのである。

「自己に帰属するとの認識」の「認識」は実体のない観念であり、事実確定の土台とはならない。 盗難防止や隠匿の意図も実体のない観念であって事実確定の土台とはならない。請求人の行為は無理からぬ点があると審判所は、事実確定の全体化を行わず、宗教学に拠っている。

当該法人は、現実に利潤の評価を受領したのであれば、収益計上を余儀なくされるのであると解さなければならないであろう。

国税通則法65条4項

第一項又は第二項に規定する納付すべき税額の基礎となった事実のうちにその修正申告又は更正前の税額(還付金の額に相当する税額を含む。)の計算の基礎とされていなかったことについて正当な理由があるものと認められるものがある場合には、これらの項に規定する納付すべき税額からその正当な理由があると認められる事実に基づく税額として政令に定めるところにより計算した金額を控除して、これらの項の規定を適用する。

国税通則法第1項