[事実関係]

 原告は金銭の貸付けを業とする法人であり、乙への債権の残額5,357万7,310円を貸倒金として平成9年4月1日から平成10年3月31日の事業年度の損金に算入して所得金額及び法人税額を計算したところ、税務署長が、原告のした貸倒損失を否認して、この全額を所得金額に加算する他して所得金額及び法人税額を計算し、更正処分を行った。

 裁判所は、

「納税者は、債務者が死亡し、その相続人も不存在であったことによって、債権は法律上消滅した旨主張するが、金銭債権は、債務者の死亡や相続人の不存在によって消滅するものではないから、納税者の主張は、その前提を欠き、採用することができない。

法人税法22条3項3号の「当該事業年度の損失の額」とは、当該事業年度において、その全額が回収不能であることが客観的に明らかとなったものに限られると解すべきである。そして、この回収不能とは、当該債権が消滅した場合のみならず、債務者の資産状況、支払能力等から当該債権の回収が事実上不可能であることが明らかになった場合も含むものであり、それゆえ、当該債権の回収が事実上不可能であることが明らかになった場合には、その事業年度において直ちに損金算入を行うべきであって、これに代えて、その後の事業年度において損金算入をし、もって利益操作に利用するような処理は、公正妥当な会計処理の見地からも許されないと解すべきである。

「その債務者の資産状況、支払能力等からみその全額が回収できなくなったことが明らかになった場合」に該当するか否かの判断にあたっては、債務者の財産及び営業の状態、債務の状況、その売上高の推移、債務者の融資や返済等の状況、債権者と債務者の関係、債権者による回収の努力やその手段、債務者の態度等の客観的事情に加え、これらに対する債権者の認識内容や経営的判断等の主観的事情を踏まえ、社会通念に従って総合的に判断されるべきである。

債権者は、自己破産の申立てをした時点では、既に、主要な不動産、動産を手放し、納税者に対する返済を停止していたほか、他にも7名の債権者の債務を負担して、債務の返済能力を喪失していたというべきであり、その後の状況をみても、納税者は、破産手続後まで営業を継続していたとはいえ、債務の弁済資金を獲得できるような売上を得ていたわけではない。

そうすると、客観的な情勢をみる限り、遅くとも乙に対する破産手続の終結した時点においては、債権について、その全額が回収できないことが明らかとなっていたというべきである。納税者は、代物弁済及び動産売買の一方の当事者として、債務者の保有するめぼしい資産が喪失したことを認識していること、別件損害賠償請求事件の訴状において、債務者の自己破産の申立ての事実を認識しているものと自認しているのであって、そうすると、納税者は、債務者の資産状況、支払能力等を基礎付ける重要な事実を認識していたのであって、債務者の破産手続終結のころまでには、債権の全額が回収できないことを認識するに至っていたものと認めるのが相当である」とした(秋田地判平成17年10月28日)。

[解説]

 死亡しても、現金を源泉に、現金又は購入した資産を生産手段にして貸与し、労働を疎外して疎外した労働を資本に転嫁して、留保又は現金商品との交換、現金への価値属性の付与により現金を回収できないことでなければ、貸倒れが実現しない。

資本関係から生存を義務付け、生殖による搾取の土台の再生産を行わせ、債務を負う経済実体が死滅しても、既存の紙幣発行権の取得についての実体関係から、留保現金は回収される。 死亡した経済実体に相続する経済実体が存在しなくても、その他全ての法人の資本家、経済実体は、債務者たる経済実体に資産があれば担保名目でそれを提供し投融資を受けることができ、現金を生産手段にして、生産手段を購入して労働を疎外し、疎外した労働を資本に転嫁することができる。

債務者たる経済実体に留保現金があれば、現金を投下して架空資本を購入し、国際金融資本は、それを回収してそれを源泉に生産手段にして労働を疎外して、疎外した労働を資本に転嫁することができる。 回収できないことが明らかになっているかや客観という実体のない観念に基づいてではなく、現実に回収できなくなったことが確定した段階で損失となる。

紙幣発行権を有しない経済実体の経済関係を疎外し、紙幣発行権に関する実体関係を土台とした現金留保、回収義務に基づいて規定された会計基準に公正妥当の属性を付与して、この会計基準の見地から、貸倒れとすることができないのではない。

債務者は、債権者との資本関係から返済するしないに意思はない。資本関係を土台にした既存の紙幣発行権に関する実体関係から、紙幣発行権のある無しに関係なく、経済実体には意思に基づいて断じることはできないし、回収をやめるやめないに意思はない。

債権者が債務者の事実関係を全てを認識していたか否か、個々の事実を知っていたかは実体がない。社会通念や努力は実体のない観念である。現実の事実関係の全体化して事実確定することによって貸倒れが事実確定する。