[事実関係]

審査請求人は、繊維製品の輸入代行業を営む法人であるが、平成9年2月1日から平成10年1月31日までの事業年度において売上先に対しそれぞれ売上割戻し459,570,528円、17,117,868円の合計額476,688,396円を所得金額の計算上、損金の額に算入し、確定申告を行った。原処分庁は、本件売上割戻金が本件事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入できないとして更正処分及び重加算税の賦課決定処分を行った。原処分庁は、会計担当者A氏が10年2月3日に出力した試算表の当期利益に調整を加えた後の利益金額によって売上割戻金を算定した旨申述していることを主張した。

審判所は、

「本件割戻金の算定基準は、請求人が得意先との間で平成8年2月1日に締結した基本契約書に基づき平成9年12月12日に作成された協議書により、当該得意先に明示されていること、本件事業年度の販売実績に基づいて算出していることが認められる。そして、本件割戻金は、平成10年1月31日に相殺により決済され、相手先である取引先では本件割戻金に対応する仕入割戻金が計上されているから、本件事業年度中に債務として確定していると認められる。

また、課税庁側は本件割戻金を仕訳した振替伝票が3月30日のものであり、平成10年2月3日及び2月20日に出力された試算表に計上されていないから同年1月31日までに債務が確定していなかった旨の主張をしているが、本件割戻金は、上述のとおり、得意先に対する本件事業年度中の取引金額に3%の割戻率を乗じて算出するのであるから、本件事業年度が終了しなければ算定できず、おのずと決算修正項目となるものであるものであり、また、課税庁側が指摘したA氏は納税者の会計事務所の担当者であり、割戻し算定基準の決定には全く関与していない者であり、その申述は採用できないため、その点でも課税庁側の主張は合理性がない」とした(平成11年6月21日)。

[解説]

紙幣発行権を有しない法人の資本家は、国際金融資本との資本関係から課された現金留保義務から、既に労働を疎外済みの生産手段を現金商品との交換により取得し、それを労働力商品に貸与し、労働を疎外し、疎外した労働を資本に転嫁し、現金商品と交換し、価値属性を付与ざるを得ない。

国際金融資本が有する、既存の資本関係を土台とする紙幣発行権に関する実体関係に基づく現金留保、現金回収義務から、紙幣発行権を有しない法人の資本家が入手した留保現金、現金に付与された価値属性は、売上割戻しという方便によっても、改定を余儀なくされ、現金商品を引き渡さざるを得なくなり、労働は再度疎外され、割戻しの支払は労働力商品に転嫁される。

割戻金とその利息は、労働の疎外を土台として現金商品と交換し価値属性を付与した売上を土台に、国際金融資本の有する資本関係に基づく紙幣発行権に関する実体関係による現金留保、回収義務から実現する。売上を土台とするから、売上確定した後に計算せざるを得ないのであって、これは自然や自動により決算仕訳で行うのではない。