[事実関係]

 平成7年9月13日に設立された商品券販売業及び不動産販売業等を業とする原告有限会社が、愛知県により収用が決まっている土地を強制競売により手続によって取得した上、これを子会社である株式会社Bに転売し、その土地の一部が同社からC公社に売却されて、B社が租税特別措置法65条の2(収用換地等の場合の所得の特別控除)所定の特別控除による譲渡益の損金算入をした法人税の確定申告をしたが、税務署長が、原告法人とB社間の上記売買契約は、A社がC社に対する売主となった場合に生じる租税負担を回避すること等の目的で行われた通謀虚偽表示であって無効であり、C公社への真の売主はC社であって、上記土地の売却によって得た利益はA社に帰属するものとして、A社に対し確定申告に係る法人税並びに消費税及び地方消費税の更正処分を行った。

 裁判所は、

「A社は、本件土地を自らが売主になって愛知県(C公社)に売却した場合には本件特別控除の適用が得られないため、不動産業を営んでおらず本件特別控除の適用をBを介在させてその売却を行い、自らが売主となる場合に課せられることとなる法人税等の負担を免れ、また、Bの多額の繰越欠損金を利用して、上記譲渡益に係る法人税等の負担を免れることを企図して本件取引を行ったものであるところ、

そのような実態にある本件取引は、Bの事業目的とは全く無関係に、単に同社の別法人としての外形と、同社が実質的に原告と一体の経営支配下にあって、その経営意思を実質上決定できることを利用して、専ら本件特別控除の適用を受けること、

及び同社の繰越欠損金の利用による租税負担の回避を目的として便宜的に行われたものであることが明らかであって、

それ自体本件特別控除制度の趣旨の潜脱を図るものというべきであり、私法上の取引契約としても、正常な取引としての実質を伴う所有権移転を伴う効果意思を認め難いものといわざるを得ない。

したがって、本件取引は原告とBとの間の通謀虚偽表示として無効と認めるほかはない。B社に対する貸付金として処理されていた本件取引の代金に係る受取利息は税額の計算上減算すべきであり、B社に計算上留保されている売却益は、原告からの寄附金と解するのが相当である」とした(名古屋平成18年12月13日)。

[解説]

 企図は実体のない観念である。事業目的という実体のない観念ではなく、現実の生産手段の貸与、労働の疎外、資本の転嫁の過程である。

全ての経済実体は、国際金融資本との資本関係から、経営意思がないから支配関係ではなく資本関係である。

現金商品は所有主を持たず、土地と交換された現金商品によって、現金に所有される経済実体が規定される。外形という現象ではなく、実体から見れば、国際金融資本との資本関係から、全ての経済実体は、法律行為を媒介に、実体あるものとして社会に認めさせざるを得ない。

租税回避の目的は実体がない観念である。

裁判所は、経済関係の根拠のない、国際金融資本の資本関係を土台とした現金留保義務、回収義務に基づいた、法の趣旨と交渉し、現実の取引を全体化するのではなく、実体あるものとして取引に備わっていない属性たる正常な取引を取引に付与したり、取引の原因たる経済関係上の事実確定の全体化をせずに、所有権移転を自然、偶然に生じたものとし、実体のない観念たる効果意思の有無に基づいて事実確定をしてしまっている。

原告が債務者から取得した既に労働を疎外済みの土地を、資本関係を土台に子法人に購入させ、労働を疎外させ、資本に転嫁させて、現金商品と交換をしたのであるから、原告の資本家は、原価のない配当を得たということになる。B社に留保された経済利益で、B社の債務未済分は、原告からの投資をいうことになると解される。