[事実関係]

 原告は、平成7年5月31日付けで、福井県知事に対し、本件土地について公有地の拡大の推進に関する法律の規定による土地売買希望提出書を提出した。

原告は、平成7年6月20日過ぎ頃、福井県職員から口頭で、税務署長に確認したところ、本件土地については、租税特別措置法65条の4第1項4号の特別控除に該当しない旨の説明を受けた。

原告は、平成7年6月23日、土地開発公社に、本件土地を代金4億5,914万400円で売り渡す旨の売買契約を締結した。

原告は、平成7年11月22日、本件土地の代替資産として土地を購入し、その後、同土地上に工場を新築した。

原告は、平成8年1月19日、福井県に対し、本件土地を土地開発公社に売り渡したことについて本件特例が適用されるとして、収用証明書の発行を求め、平成8年3月期の確定申告書に、本件特例を適用して、圧縮記帳を行い、圧縮額を損金に算入し、本件土地に係る収用証明書を福井県に対して申請中である旨の上申書を添付した。

しかし、後日、更正により特例の適用の要件を否認される。

福井県は、収用証明書の発行を拒否したが、原告は、平成9年11月10日に福井地裁に訴訟を提起、名古屋高裁金沢支部と争い、平成12年3月22日、福井県より収用証明書の発行を受けた。原告は、本件収用証明書を添付の上、平成12年3月24日付けで、平成8年3月期から平成11年3月期までの各事業年度の法人税につき、各更正の請求をした。

これに対し、税務署長は、平成12年6月19日付けで、本件更正請求についていずれも更正すべき理由がない旨の各通知処分をした。

 裁判所は、

「本件特例は、法人がその有する資産を収用されるなどして代替資産を取得した場合の税法上の租税特別措置を定めたもので、その趣旨は、収用等に伴って生じた譲渡益については、当該譲渡が所有者である法人の自由な意思に反するものである以上、一般の譲渡と同様に課税すると企業経営維持のための再投資(代替資産の取得)を阻害する結果になるために、税法上の租税特別措置を講じたものである。

租税特別措置法64条1項2号の趣旨は、強制力が背景にあることから、課税においても実際に収用された場面と同視するのが公平であり、収用前に譲渡した者が収用された者より不利益を被ることのないようにすることにあると考えられる。

租税特別措置法64条1項2号が適用されるのは、買取の申出に応じなければ収用されることが確実な状況にある場合に限られると解するのが相当である。

適用があるか否かについては、当該買取りの時において、当該事業の場所、施行内容等が具体的に確定し、当該資産について事業認定が行われうる状況にあるか否かによって判断するのが相当である(措通64(4)-3)。

土地収用は、財産を強制的に取得するものであるから、法令上事業施行の権限を有せず、又はこれを有する見込みのない起業者に収用権を付与することは許されない。

そのため、土地収用法は、事業認定を行う建設大臣が、この点を判断するために、事業認定申請書に当該事業を遂行するために基本的に必要とされる行政機関の意見書を添付することを要していると考えられる。

事業認定が行われうる状況にあるといえるためには、その事業を遂行するにあたり基本的に必要とされる行政機関の許可等を取得しているか、それに代わる行政機関の意見書を取得していることが必要であると解すべきである。

事業施工者においては、当該事業に反対する地権者をあまり刺激したくないとの配慮から、事業認定の申請を見合わせたまま、地権者を説得しつつ、可能なところから順次用地を取得するということも考えられなくはない。

事業認定を受けるために基本的に必要な許可又は意見書を取得していない段階では、事業認定を受けるか否かは不確実であって、実際に収用された場合と同視できる利用状況にあるとは言い難いから、そのような段階での先行取得の場合にまで本件特例を適用することはできない。

税務署長は、課税の適正を期するために調査を行う権限及び適正な課税標準に基づき課税処分を行う権限を有するが、その権限には、土地の譲渡が税制上の優遇措置に該当するか否かの判断を行うことも当然に含まれるから、課税に関して何らの権限も有しない事業の施工者のした判断が最終的なものとして税務署長を法的に拘束すると解することはできない。

また、本件特例は、収用証明書の添付がある場合に限り適用されるが(措法64④)、これは他の要件を充足していることを前提として、なお本件特例適用のためには、収用証明書の添付が必要であるとしているのであって、収用証明書の添付さえあれば、他の要件を欠く場合であっても、なお本件特例が適用されることまでを規定したものではない。

仮に収用証明書発行を求めた行政訴訟判決が事業遂行の許可又はこれに代わる意見書の取得を不要であると判断したとしても、これは法令の解釈に関する判断にすぎないのであって、国税通則法23条2項1号の「事実」に関するものとはいえないから、国がそれに拘束されることはない」とした(最判平成19年4月12日)。

[解説]

 空港建設を含む公共事業は、金がかかるから、金融資本家の現金留保の数パーセントの拠出から成る国家は、金融資本家から投融資を受けざるを得ないから、金融資本にとってはリターンがそれだけ得られるのである。

国家は金融資本の数%の現金留保しかなく、紙幣発行権を所有せず、既に存在する国際金融資本との資本関係から、建設の土台となる経済実体に関係なく建設をせざるを得ず、また、労働を疎外して資本に転嫁済みの土地を現金商品と交換して、現金に価値属性を付与して、投融資し、利子配当を国際資本に得させることを余儀なくされ、国家に公共事業を行う行わない、交換により取得した現金の使用に自由意思はない。

国際金融資本は、紙幣発行権の所有関係、それを土台とした実体関係に基づく現金留保義務、現金回収義務から、労働を疎外して資本に転嫁済みの産業資本の土地を買収する。

紙幣発行権を有しない産業資本は、資本関係から収用に応ずることをせざるを得ず、納得に基づいて収用に応じるのではない。

産業資本は、金融資本との資本関係を土台として課された現金留保義務から、現金を投入して生産手段を新たに購入し、労働を疎外して、資本に転嫁せざるを得ない。

収用されることにより得た現金だけでは足りず、金融資本から投融資を受けざるを得ないから、国際金融資本はリターンを得て更に現金留保を蓄積する。

国際金融資本は、既存の中央銀行を所有する民間銀行の所有関係を土台とする実体関係、実定法を土台とした現金留保義務、現金回収義務から、産業資本に、償却や損金とは別枠で特別控除による補助金を与えて、国際金融資本への現金留保の集中させ、 トータルの損金は変わらないが圧縮記帳により、現金流出を伴わない損金の前倒しにより、早い段階に現金留保を蓄積させ、国際金融資本への現金留保を集中させることになる。

国際金融資本との資本関係、生産関係から、補助金を与えるか否か、法を適用するか否かの権限は国家は有しない。

買取に応じないと収用されることが確実、事業認定を受けうるか否かが確実か不確実かというのは実体のない観念である。

産業資本は、経済関係を土台にして事業確定、収用発行を受けることに意思はないから、証明書の発行を受けて、実体あるものと社会に認めさせざるを得ない。

事業許可、収容証明と現実の経済関係が異なるということは有り得ない。事業許可の否定は事実確定である。

通知処分については、経済実体上の事実関係の全体化をしたか否かの問題であって、信義誠実という実体のない観念の問題ではない。

見込みは実体のない観念である。国家は、国際金融資本との資本関係、生産関係から、調査し処分を行わざるを得ず、国際金融資本は、国際金融資本の紙幣発行権の所有関係、それを土台とする実体関係の存在に基づく現金留保義務、回収義務から、収用権の付与を疎外して、租税の名目で国際金融資本の現金留保を蓄積する。