[事実関係]
原告は、商事法人であり、関連法人は、棒鋼の製造業を業とし、発行済株式の44%を原告が所有し、50.3%を原告の代表取締役及びその親族並びに同棒鋼製造業法人の代表取締役その親族が所有する同族法人である。
原告の関連法人が棒鋼の製造に使用する原料のビレットは、総て原告が商社から仕入れて原告関係法人に販売する形式をとっているが、実際の仕入業務は、原告関係法人が仕入先との間で直接に行っており、原告は手形を振り出しているに過ぎず、これを仕入と仕入額と原告関連法人に販売している。
原告関係法人は、異形棒鋼を丸紅を通じて販売する実績を有していたが、異形棒鋼の市況の下落、需要供給の悪化から、丸紅がこれを原告の関係法人から買い受けても、更にこれを丸紅から買い受ける買手が見つからない状況があった。
丸紅の側では、当面右異形棒鋼を仮仕切りの価額で買い受け、後日その買手が見つかった段階で最終的な売買価額を確定し、右仕切り価額との差額を精算するという形の売買を行うこととなり、昭和61年3月末になっても、本件異形棒鋼を丸紅から買い受ける買手は見つからないままであった。
丸紅の側では、丸紅との間において従来の取引実績のある原告において、原告の関係法人に代わって本件異形棒鋼を買い戻すことを要求するに至った。
原告は買い戻しを行った。昭和61年6月下旬頃になって、丸紅の斡旋で日商岩井等の本件異形棒鋼の買手が見つかったが、原告には右買受価額と、売却差額である3,049万5,639円の売却損失が生じた。
裁判所は、
「本件売上値引きは、関連会社に多額の赤字が見込まれるようになったことから、売上値引き実行時における関連会社の残高試算表の欠損金とほぼ同額の売上値引きが行わている。
本件売上値引きは、一般に売上品について量目不足・品質不良等があった場合に一定の具体的な算定根拠に基づいて行われる通常の売上値引きとはおおよそその性質を異にするものであって、寄附金の除外費目であるいわゆる営業経費の性質を有するものではないことから、関係会社に対する経済的利益の無償の無償の供与として法人税法37条の寄附金に該当する。
更に、原告は法人税基本通達9-4-1の定め等からして、本件売上値引きが寄附金に該当しないと主張する。
しかし、本件売上値引きが行われた時点で関連会社の業績は悪化していたものの、解散・経営権の譲渡といった通達に掲げられたような事態が生じ、あるいは銀行取引停止処分等のため倒産状態に陥るような事態まで至っておらず、原告が本件値引きを行わなければ今後原告において大きな損失を被ることとなることが社会通念上明らかであると認められるような状態にあったとまでは認められない。
また、本件売上値引きに相当する原告の関連会社に対する売掛債権の回収が不能な状況にまでなっていないことも明らかであることから、原告の主張は採用できない。
法人税法37条7項が寄附金として取り扱う経済的利益の無償の供与は、その取引行為の時点でみて、自己の損失において専ら他の者の利益を供与するという性質を有するような行為のみをいうものと解すべきであり、その取引行為の時点においては自己に利益が生ずる可能性があるとみられていた行為が、その後結果として自己の不利益となり、専ら他の者に利益を供与することとなったにすぎない場合にも、これをもって経済的な利益の無償の供与に当たるものとすることは相当ではないものと考えられる。
原告は、訴外会社からの要求に応じて本件異形棒鋼の買受けを行う義務を負っているわけではないのに、関連会社のために買受けを行ったという面は認められるにしても、その行為自体としては、客観的な市場価格に相当する価額で将来はさらに価額が上昇に向かう可能性もある商品を買い入れるという、ごく通常の取引行為の性格をもつものであったとも考えられるところであり、これを無償の利益供与に当たるとすることには疑問がある」とした(東京地判平成3年11月7日)。
[解説]
原告関係法人と訴外丸紅とは、経済関係にある。訴外法人と原告の関係法人との間に、売り渡し段階、買い戻し段階共に現金商品と鉄鋼の交換の実体はある。全ての物には品質という属性は備わっていない。寄附金や値引きに性質は備わっていない。
鉄鋼を生産手段に労働を訴外し、棚卸資産に訴外分を転嫁して現金商品と交換している。原告法人は、投下した現金を源泉に非関連者から生産手段を購入し、その使用人の労働を疎外し、鉄鋼に転嫁し、その関係法人との間で、現金商品と交換し、国際金融資本の既存の中央銀行、証券取引所の所有関係、それを土台とした実体関係に基づく現金留保義務、現金回収義務から規定された現金商品に価値属性を付与することで、取引を実体あるものとして認めさせることを余儀なくされるという過程に基づいた価額が、鉄鋼の引渡債務、支払債務の金額である。
鉄鋼と現金商品を各々引き渡すことで債務を弁済する。現金は価値属性は備わっておらず、現金は価値測定の尺度ではないから、現金商品を保有することで、引渡債務金額の無償分から、時間の経過とともに収益が実現するのではない。
紙幣発行権を有しない法人が、売却段階で国際金融資本との資本関係により時価名目で規定された価額を疎外し、疎外分は原告法人の労働力商品に転嫁されている。
関係法人は、原告法人との資本関係から課された現金留保義務から、存続を余儀なくされている。
関係法人が、紙幣発行権を有していて資金不足がない国際金融資本から投融資を受けられる関係にあることから、親法人たる原告、国際金融資本が関係法人の使用人の労働の疎外による疎外分の資本に転嫁された分を回収できなくなることはないとされたのである。
親法人が損失を被ることとなるか否かということは実体がなく、さらに損失を被るか否かを社会通念上明らかであるか否かによるとしているが社会通念という観念は実体がない。
裁判所のいう、自己に利益が生ずる可能性があるとみられていた行為というものも実体がない。結果に偶然はない。結果に至る原因、過程の全体化を裁判所は行っていない。
国際金融資本の所有関係を土台とした現金留保を土台とした実体関係による現金留保義務、現金回収義務から、労働の疎外、資本への転嫁の過程が改定され、労働力商品に損失が転嫁される。経済利益を供与することは、紙幣発行権を所有しない法人の資本家に、国際金融資本との資本関係から課せられた現金留保義務を土台としており、現実には、経済利益を子法人に供与して子法人を存続させ、子法人が労働の疎外により留保した現金を回収せざるを得ない。
将来は更に価格が上昇する可能性があるというのは、実体がない観念である。商品を買うことの原因となる事実を全体化せず、通常という宗教学を商品を買うことの拠り所にし、商品を買うことに備わっていない通常、性格という属性を付与している。