[事実関係]

 審査請求人は、請求人の役員が請求人に対する債権を放棄したことによって債務免除を受け、当該債務免除の額を益金に算入するとともに、法人税法第59条第2項の規定により損金算入した欠損金額を損金の額に算入したことにつき、原処分庁は、法人税法施行令第117条各号に規定する事実に当たらないとして法人税法の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分を行った。

 審判所は、

「請求人は、平成13年9月期から本件事業年度の全事業年度までの期間において、貸借対照表上は債務超過の状態にあったと認められる。また、請求人の前取締役であるCは、請求人の債務超過の状態を放置すれば、いずれ請求人は成り立たなくなるため、累積債務の解消は長年の懸案であった旨答述していることから、本件債権放棄による債務免除は、請求人を再建するために行われたともうかがえる。

しかしながら、請求人は、本件臨時株主総会において、本件債権放棄をAらに要請することを決議しただけで、本件借入金以外の借入金及び買掛金などの営業債務に係る債務額の整理に関する事項並びに請求人の再建に向けた具体的な事業計画等に関する事項について債権者集会で協議を行うなど、期本通達に定める、法律等の定めに準じた一連の手続等は行われていないと認められる。

また、Cは、請求人においてそれまでJ銀行からの借入金の返済及び仕入先に対する支払が滞るなど、請求人が破産の危機にあったとか、事業の継続に著しい支障を来すような状況にはなかったと答述していること、及び請求人において本件事業年度の直前期末における借入金の約76%を占める本件借入金の債務者であるAらから本件債権放棄の直前までに一括返済を迫られるなど請求人の経営を圧迫するような事態が発生した事実も認められないことから、請求人は、本件債権放棄による債務免除を受けた直前の平成16年9月期の事業年度末において、貸借対照表上、債務超過の状態にはあるものの、事業経営が成り立たなくなるほどの経営の危機に陥っている状態ではなかったと認められる。

なお、請求人は、貸借対照表上、債務超過の状態にありながらも、E銀行P支店から融資を受けて、地裁から本件競売物件を取得していることが認められる。そうすると、請求人は、本件競売物件の取得等に係る資金として本件融資を受けるには、E銀行P支店からの求めに応じて債務超過の状態を解消する必要があったことから、請求人の財務内容を表面上改善するためにAらに本件債権放棄の要請を行ったものと認めるのが相当である。

以上のとおり、本件債権放棄による債務免除は、多数の債権者によって協議の上決められたものではなく、単に請求人とAらとの間における私的な協議によって決定され、その内容が一定の計画のもとに合理的に定められたものではないと認められることから、法人税法施行令117条4号に規定する「前3号に掲げる事実に当たらない」とした(平成21年6月24日裁決)。

[解説]

 請求人は、資本家から投融資を受けられる関係にあり、資本関係を土台とする現金留保義務から存続を余儀なくされている。請求人への債権は、現実には、貸倒れにはなっていない。紙幣発行権を有しない資本家Aは、国際金融資本との資本関係から競売物件を取得して生産手段にして労働を疎外して資本に転嫁して現金留保を蓄積せざるを得ず、更に投融資を受けざるを得ない。投融資をした側との資本関係から、債務免除益の計上をして現金留保をせざるを得ない。

裁判所のいう危機は実体がないから問題提起の土台とはならない。 債権放棄については現象に基づく理論にすぎない理論に合致しているかではなく、現実の経済実体に基づいた義務であるかが事実確定の土台となる。