[事実関係]
海運業を営む原告法人がした法人税の修正申告につき、税務署長は、原告が損金に算入したレセプション関係費498万8,728万円を交際費と認定し、交際費等の損金算入限度額を超過するものとして損金算入を否認して更正処分を行った。
裁判所は、
「交際費であれ、広告宣伝費であれ、元来企業会計上事業経費に属すべきものは、税法上損金として取り扱われるべきである。
ところが、租税特別措置法は、交際費等につき、法人税収の増加をはかり、あわせて、その浪費を抑制し、資本の蓄積を期するために、所得の計算上、一定の限度を画し、その限度を超える部分を損金に算入しないこととしている。
したがって、法63条2項所定の交際費等というためには、少なくとも次の要件を具備していることを必要とするというべきである。
その第一は、法人の当該事業経費が事業に関係のある者に対して支出されたものでなければならないということである。もとより、ここでいう事業に関係のある者とは近い将来事業との関係をもつにいたるべき者をも含み、これを除外する合理的理由はないが、だからといって、不特定多数の者まで含むものでないことは、右の文言からは明らかである。
その第二は、接待、きょう応、慰安、贈答等企業関係における交際を目的とするものであって、商品製品等の広告宣伝を目的とするものではないということである。もっとも、右の両目的は、相排斥する絶対的なものではなく、究極的にはいずれも企業利益に貢献することは否めないところであるから、現実の支出については、その主たる目的がいずれに存するかによって、当該経費の性質を決定すべきである、
また、その第三は、支出金額が比較的高額であるということであり、このことは、法63条2項及び同法施行令39条が交際費等から除外するものとしている費目の性質に徴して明らかである」とした(東京地判昭和44年11月27日)。</p>
[解説]
法人は接待を受けたか否かに関係なく資本関係、経済関係に基づいて現金を留保せざるを得ない。
法人名義で、法人資本家が労働者に支払を転嫁し、資本関係、経済関係から自由意思に関係なく現金を投下して接待することを余儀なくされているものが交際費である。
接待を受けた後に取引を始めるのは、接待の前に金融資本家との資本関係、経済関係が既成していて売らざるを得ない、買って売らざるを得ないからであって、自然現象ではない。心理に基づくものでもない。効果を期待という実体のない観念、目的という実体のない観念に基づいて判決を行っている。
現金投下の過程は、投融資又は配当ではあるが、謝礼を始め名目は各々異なるが、贈答した資産を受けた側が生産手段にして労働を疎外して現金留保できないから、投融資しても支出した側に資産と売上、売上原価が計上されないのである。
配当である場合でも資本関係だけでなく経済関係に基づき、資本関係だけでなく経済関係が創設されているから交際費とされている。近い将来事業と関係を持つにいたるべき者は実体のない属性付与である。近い将来事業と関係を持つ持たないは交際費の規定を包摂する土台とはならない。
資本関係、経済関係が成立する前の段階においても、また、資本関係、経済関係が成立しなかったとしても、接待を行わせ、労働を疎外して、法人内部に現金留保することを実現し、労働力商品に支払を転嫁して搾取の土台の再生産を余儀なくされ、更に支出した法人は法人内部に現金留保の蓄積を実現しているから交際費とされている。
資本家が所有する全ての法人は、国際金融資本家との資本関係から支出を抑えて現金留保を蓄積しておくことが義務づけられている。利子配当に加え、租税という名目で現金を回収し、原子力、石油というリターンの大きい産業への投融資に回しているのである。
国際金融資本家の有する資本関係、現金留保義務、現金回収義務を土台として交際費課税が立法された。接待で出された飲食物を接待を受けた側が生産手段にできず、支出した側は、接待労働を疎外して現金留保したから経費ではある。国際金融資本家は、現金の回収過程に応じて、経済関係上、生産関係上の過程を提示したか否かを捉えて交際費としたり広告宣伝費としているのである。