[事実関係]

 不動産販売を業としていた原告法人は、ドラム管口金加工を業としていた訴外有限会社を吸収合併した。原告法人は、訴外有限会社に清算所得が生じたとして確定申告を行った。

原告代表取締役で訴外有限会社の持分を有する原告でもある甲と、原告法人の株主であり、訴外有限会社の持分を有していた原告でもある乙が、本件合併によりみなし配当所得が生じたとして確定申告を行った。

その後合併無効判決が確定したことにより、上記各確定申告に係る課税標準等又は税額等の基礎となった事実が当該計算の基礎としたところと異なることが確定したとして、税務署長に国税通則法23条2項1号に基づき更正の請求したところ、税務署長が各原告に更正の理由がない旨の通知処分を行った。

 第1審は、

「商法415条が準用する商法110条は、『合併ヲ無効トスル判決ハ合併後存続スル会社又は合併ニ因リテ設立シタル会社、其ノ社員及び第三者ノ間ニ生ジタル権利義務ニ影響ヲ及ボサズ』と規定している。

会社の合併は、団体法上の行為であり、特に法人格の消滅又は存続に関するため、合併における瑕疵を民法及び民事訴訟法における一般原則に委ね、既往に遡って解決することは、会社法における法的安定性及び法的確実性の要請に合致しないことから、合併を無効とする判決が確定してもその判決の効果は、存続会社、その株主及び第三者の間に生じた権利義務に影響を及ぼさず、将来に向かって生じるものとし、存続会社又は新設会社は、従前に復帰するのではなく、いわば新しく分割されることになるのである。

そして、税法上、商法110条の適用を排除する明文の規定がない以上、税法上も商法上の取扱に従って処理すべきであり、合併無効の判決が確定しても合併に基づく課税関係に遡って影響を与えることはないから、合併無効判決が確定したことは国税通則法23条2項による更正の根拠にはならない」とした(大阪地判平成14年5月31日)。

 控訴審は、

「商法415条3項が準用する商法110条は、、『合併ヲ無効トスル判決ハ合併後存続スル会社又は合併ニ因リテ設立シタル会社、其ノ社員及び第三者ノ間ニ生ジタル権利義務ニ影響ヲ及ボサズ』と定めている。

これはいったん合併が行われると、合併が有効にされたことを前提に多数の法律関係が積み重ねられるものであり、民法の一般原則のとおり遡及効を認めると、取引の安全を害し、いたずらに法律関係の混乱を招くおそれがあることから、合併無効判決が確定しても、従前の権利義務には影響がないとして、合併無効判決の遡及効を制限しているものと解される。

そして、租税法上、課税関係における合併無効判決の効力に関する規定はないが、私法上の効力と別異に解すべき理由はなく、課税関係においても、合併無効判決の効力が遡及しないと解するのが相当である」とした(大阪高判平成14年12月26日)。

[解説]

 被合併法人、分割後の持株法人の資本家は、既に疎外された労働による留保現金を、架空資本と現金商品と交換し現金留保を実現している。

分割後の持株法人の資本家、被合併法人の資本家、合併法人の資本家は存続産業法人の労働力商品の労働を疎外して現金留保を得ている。

自然や偶然や現象によって権利義務が実現するのではない。

判決に効力という属性は備わっていない。合併や判決が効果があったか否かが問題となるのではない。

資本関係、経済関係を土台に法律行為を通じて実体あるものと認めさせることを余儀なくされるのである。

実現した現金留保は、合併が実体のないものとされても、判決の前に実現した留保現金は実体のないものとはされない。現実には、取引の安全、混乱を招くおそれという実体のない属性によって判決が遡及されないとされているのではなく、国際金融資本家の資本関係、現金留保義務から遡及しないと規定されているのである。国際金融資本家以外の全てにおいて経済実体に基づかない立法趣旨と交渉して法を解釈、包摂することにより、国際金融資本家に現金留保が集積していくのである。