[事実関係]

 木材、鋼材等の輸出入を業とするA社(原告、被控訴人)は、ミャンマーにある公社と木材を取引する際に金員を支出したが、かかる金員を当該木材の売買代金であるとして、平成6年分及び平成7年分の法人税確定申告に当たり損金に算入した。税務署長は、前記支出一部は売買代金であるとは認められないとして、前記損金算入を否認して更正処分をした上、過少申告加算税及び重加算税を賦課した。

 第一審は、「主観的には、A社及び公社が、本件各金員を売買代金の一部であるとの認識を有していたのであり、また、客観的にみても、公社に対する支払は、前払が原則になるなど、取引上の力関係において公社はA社よりも優位な立場に立ち、公社側が要求した金額の支払をしなければ、原木の引渡しはされない関係にあって、本件各金員と原木取引の結びつきは相当程度強いと認められること、加えて、原木取引はミャンマー国とA社との間だけで行われていた取引であることもあって、相場のようなものが存在せず、その価額は、公社が決定したところによるものとされていたところ、本件各金員の単価と本件各売買契約書記載の売買代金単価と合計した額における本件各金員の単価を占める割合をみても、平成5年度取引については、約8パーセント、平成6年度取引については約6パーセントにすぎないことから、その合計額を売買単価とみても、そう不自然な価額とはいえないことを考え併せるならば、本件各金員と原木の対価性を肯定することができ、本件各金員は、売買代金の一部であったというべきである。税務署長の本件各更正処分は、前提としての本件各金員の趣旨の認定を誤った違法があるといわざるを得ない」とする。

 控訴審は、

「本件各金員は、被控訴人が公社から独占的に原木の供給を受けるために、公社から本件機械等を取得するための費用等にするなどとして要求された裏金に充てるために、被控訴人からその管理する本件各預金口座に送金されたものと認めるのが相当である。そして、A社は、その目的に従って本件各金員を原資として本件機械等を取得したものと認めることができ、この認定を妨げるに足りる証拠は存しない。

また、本件機械等がA社から公社に送付され、その代金の支払もされていないことからすれば、本件各金員は、A社が原木の輸入取引を独占することができるようにする目的で、公社との関係を良好に維持するための資金に充てるべき、自己の資金を国外に送金したものであり、その上で、本件金員によって本件機械等を購入して、前同様の目的で公社へこれを無償で贈与したものと認められるのである。そして、このようにA社が本件機械等を公社に無償で贈与した行為は、A社の事業の遂行上必要なものとして原木取引の相手方である公社との関係を円滑にする目的で行われたものであって、租特法61条の4第3項の『仕入先その他事業に関係のある者等に対する』『贈答その他これに類する行為のために支出した費用』に当たるというべきである。

A社は、本件各金員を支払わなければ原木が出荷されなかったものであるから、同金員は、公社の歓心を買い、あるいは迎合する目的で支出されたものであるはなく、あるいは取引を円滑にするための支出でもなく、売買の目的物を取得するための不可欠な費用であり、A社の裁量も認められない旨主張する」とする。

しかし、上記法上の文言からすれば、A社の主張するような目的が存する場合に限定されるものとは解されない上、本件各金員は本来の売買契約の内容に照らして公社から正当に要求できるものではなく、原告も裏金あるいはバックマージンの要求と解釈していたのであり、それにもかかわらず、A社がこのような公社の正当でない要求に応じたのは、公社との関係を円滑に維持し、独占的に原木の供給を受けることを意図したためであると認められることからしても、上記の判断を妨げるものではない」としている(広島高判平成16年3月3日)。

[解説]

 目的は実体がない。金員を支払う側の意思に関係なく、資本関係のみならず、経済関係から支払わざるを得なかったか否かから交際費か否かが規定される。現金を投下することにより、木材を生産手段として貸与して労働を疎外することの土台となったか否かということから交際費か否かが規定される。 生産物の完成、生産物と現金商品の交換による現金留保は、交際費か否かには関係がない。地裁は、不自然な価額とは言えないと宗教学を拠り所にして経済実体上の事実関係の全体化を放棄している。地裁は、主観的、認識という観念、本来や正当といった契約に備わっていない属性、実体のないA社の解釈、各金員の趣旨という実体のないものを根拠にしている。高裁も実体のない目的、意図を拠り所に経済上の事実関係の全体化を断絶して事実確定を行っている。