[事実関係]

 X社(原告、控訴人)の法人税、法人臨時特別税及び法人特別税等について、X社の本件事業年度における有限会社Kへの貸付けは、X社が金融機関等からの借入金をその借入利率より低利でK社に貸付けたものであり、法人税法37条7項の経済的な利益の供与に当たり、その金利差に係る利息相当額が、同場項の寄附金に該当するとして税務署長が各課税処分をしたところ、その取消を求めた事案がある。

第1審は、

「これを本件についてみるに、本件各貸付けはX社の本件借入先からの借入れとひもつき見合いの関係はないが、X社は、本件借入先からの借入金をもって本件貸付けをしているから、適正利率を措定するに際しては、X社の本件借入先からの借入利率(何れも同一ではない)を基準として、できる限りこれを平準化することが望ましく、その平均借入利率に依拠することも合理的であり、平均借入利率が市中金利と比較してこれを上回らないなど、その合理性を欠くとはいえない事情がある場合には、本件借入先からの平均借入利率をもって適正利率とすることにも合理性があるというべきである、そうすると、本件では、X社の適正利率は、平成3年2月期が6.928%、平成4年2月が6.895%,、平成5年2月期が5.362%、平成6年2月期が4.665%、平成7年2月期が3.483%、平成8年2月期が2.119%となり、これにX社のK社に対する貸付金を乗じた額からX社のK社からの受取利息を控除した差額が経済的利益に当たるといえる」とする(鹿児島地判平成13年10月1日)。

 控訴審は、

「X社は、本件貸付けによる低利融資が法37条7項にいう実質的な無償の供与に当たらず、したがって寄付金に当たらない旨を当審において改めて主張し、その理由として、利率上の供与は0.4%から1%余りにとどまること、本件貸付けによりK社の経営が回復し、同社に対するX社の貸付けの元利金が回収できたほか、Lグループ全体の信用が回復し、資金繰りが楽になり、格付けが上昇した等の利益が得られたことを挙げる。しかし、利率だけをみればわずかな供与であっても、本件各貸付けの元本額が巨額である結果、X社がK社に供与したことになる利益の額もまた巨額となるから、利率だけをみて本件各貸付けによる低利融資が寄付金に該当しないとは到底いえない。また、X社が主張する本件各貸付によりX社ないしLグループが得たという諸利益は、低利融資に対する直接の経済的な対価、見返りといえるものではないから、本件貸付けによりX社がK社に供与した利益はやはり無償のものといわざるを得ない。したがって、本件各貸付による低利融資は適正利率により算定された利息と受取利息の差額は実質的な無償の供与に当たるものであり、寄付金として扱わざるを得ない」とする(福岡高判宮崎支部平成14年10月29日)。

[解説]

 現金は無記名で所有主を持たない。 現金は留保しているだけでは更なる現金留保を産まない。現金を投下し、生産手段と労働力商品を購入して労働を疎外することにより現金留保を産む。利息は実体のない方便であり、国際金融資本家は、証券取引所と民間銀行を通じた中央銀行の所有による契約により利息を実体あるものとして認めさせている。

無利息貸付、低利貸付の取引は、無償貸付の部分から現金留保を産み出し、留保した現金から寄附金を拠出しているのではない。有償貸付の部分からは現金留保、すなわち収益が実現したものと実体化され、無償貸付部分からも現金留保を産みだしたとして収益計上することは、実体化を余儀なくされた経済関係と乖離する。

貸付債権は、元本の金額と国際金融資本家が付与した実体のない属性を実体化した利息の合計額である。貸付債権を回収をした段階において、貸付債権と現実の入金額との差額は未収利息、利息債権が確定していない段階では投資ということになる。

子法人は金融資本家との資本関係から課された現金留保義務から架空資本を購入し返済の原資を調達せざるを得ず、金融資本家が当該架空資本に低い価値属性を付与することにより子法人の現金留保を収奪することに成功しても、子法人は親法人から投融資を受けられる資本関係にあり、労働の疎外、仕入、租税、利子配当支払を労働者に転嫁することにより現金留保の蓄積に成功している。親法人の資本家は、子法人の労働力商品の労働を疎外し現金留保を蓄積できる資本関係は存続できないというのではない。

原告のいう経済利益の内、信用は実体がない。架空資本に付与された価値属性は、利子配当を支払い、労働を疎外して現金を得て現金に価値属性が付与されて実体化するから、それまでは経済利益、現金留保は実体化せず、格付けが上昇しただけでは、現金留保がわずかであることにつき実体がない。