<p>[事実関係]</p>
<p> 原告は、昭和62年12月期及び平成元年12月期の法人税につき、税務署長が役員賞与の損金不算入として行った更正処分の取消の訴を提起した。</p>

<p> 裁判所は、

「訴外Mは、支配人就任後である昭和62年9月8日、原告法人は、訴外Oとの間で土地建物を目的とする売買契約を締結した。右契約締結に至るまでの事前交渉、現地検分及び売買価格の決定等は全て訴外Mが対応し、原告法人内で契約書に原告代表者名を記入し押印したのもMであった。また、右契約書中の特約事項についても、訴外Mが交渉を行い、記入した。

原告は、訴外Mが原告支配人として登記されていた右期間中の昭和62年7月31日及び同年9月30日に、訴外N信用農業連合会から事業資金の融資を受けているが、その際訴外Mは原告代表者とともに右連合会に来店し、原告代表者とともに借入金額、借入目的、担保設定について説明し、さらに訴外Mは、償還財源について説明した。訴外Mが昭和63年10月1日付で原告そ代表取締役を退任した後である同年11月23日、原告法人は、訴外Aとの間で、新潟市内の土地建物を目的とする売買契約を締結し、その契約書の買主の欄に原告法人代表者としてMの名が入った社判を押捺し、右契約の手付金及び売買代金の領収書にも、右同様の社判を押捺して、また、右売買契約締結に至るまでの交渉、現地検分等を行ったのは訴外Mであり、その際、同人は原告法人代表取締役との肩書のついた名刺をAに交付し、契約後の代金支払についても、訴外Mを通じて行っていた。

本件格係争事業年度において、原告法人に常時勤務し、報酬あるいは給与を受けていた者は訴外Mと原告代表者の2名のみであって、その他に臨時的な従業員がいたに過ぎないが、歩合給の支払額を除いてみても、訴外Mに対する毎月の支払額は、原告代表者に対する支払額を常に上回っており、また訴外Mが昭和63年10月1日付で原告法人の代表取締役を退任したのちも、同人の報酬月額と給与金額に変化はなかった。原告法人が、昭和62年3月以降平成2年4月までの間に、訴外S銀行新潟支店に対して借入申込をする際は、ほぼ訴外Mに余程の都合があって来店できない場合のみ、原告法人代表者が来店していた。訴外Mと原告法人代表者との間で代表取締役の交替があった際においても、両名の職務内容には何ら変化はなく、訴外Mは常に社長と呼ばれていた。

以上認定した事実によれば、訴外Mは、本件各係争事業年度において法施行令7条2号の要件を充す使用人であると認められるから、同人は法人税法上、役員として扱われるべきである」(新潟地判平成6年12月8日)。</p>
<p>[解説]</p>
<p> 原告法人は、係争事業年度において、Mの同族関係者が発行済株式の97.5%を所有する同族法人であり、Mとその妻が当該法人の株式の67.5%を所有している。Mも2.5%所有している。疎外Mは、当該法人との資本関係に基づいて、金融資本家との資本関係から課せられた現金留保義務から金融資本家から投融資を受けざるを得ないことを規定し、法人名義で労働を疎外し、経済関係を規定し、現金留保を行うことを余儀なくされているから、報酬の名目で支給された現金は、配当ということになる。 </p>