[事実関係]

 運動具用品の小売業を営む原告有限会社が行った法人税確定申告につき、税務署長は、訴外Kへの支給額として損金経理した金額を役員賞与として否認して更正処分及びそれに伴う過少申告加算税の賦課決定処分を行った。原告は、訴外Kは、原告の代表者の同族関係者であるが、原告法人の出資者ではなく、また昭和35、36各事業年度中その役員としての登記もなく、原告者の単なる使用人にすぎず、しかるに税務署長は、同人を原告の役員とみなし、原告が同人に昭和35、36各事業年度に各8万円を支給して損金に計上した使用人賞与を否認し、これを役員賞与とみなし、各8万円を昭和35、36両事業年度の法人所得に加算した本件各更正処分は、共に違法であるとして課税処分の取消の訴を提起した。

 裁判所は、

「原告の取締役T、Dは、いずれも別途職業を有し原告の業務には実質上全く関与せず、原告法人から何らの報酬を受けていず、単に個人企業的色彩の強い原告法人の当初の出資者として形式上取締役になっているに過ぎないこと、代表取締役も原告法人の業務には従事しているものの、すでに老令であって、むしろ同人と生計を一にする次男Kが原告法人の営業活動の中心となり、商品の仕入、販売並びに集金等の業務を担当していること、以上の事実が認められる。してみれば、Kは、形式上役員として登記されていず、原告法人に出資していないくても、原告法人の事業運営上の重要事項に参画しているというべきであるから、その他使用人以外の者で法人の経営に従事しているものに該当し、同人を税法上原告法人の役員として取扱うべきである」とした(山口地判昭和40年4月12日)。

[解説]

 法人は、当該法人の株主、出資者、産業資本家、別法人の資本家、金融機関の資本家が現金を投下し、又、国際金融資本家投融資を受けることを余儀なくされ、国際金融資本家が現金を投下し、生産手段を購入し、労働を疎外し、現金留保を余儀なくされる。資本家が資本関係、生産関係、経済関係を規定する。

同族法人の役員が投融資を余儀なくされたり、資本関係、生産関係、経済関係、現金留保を規定しているのは、資本関係に基づいているのであって、役員に法人の資本家が投下した現金を金融資本家との資本関係から課された労働力商品、投融資先再生産義務を土台とした現金留保義務から使用する権利や労働を疎外するという生産関係を有しているのではない。

登記していないということは、資本関係上、法律行為によって役員という属性を実体あるものと社会に認めさせることを余儀なくされていないことであり、資本を有していなければ、法人の資本家が投下した現金を、金融資本家から課された労働力再生産、投融資先再生産義務を土台とした現金留保義務に基づいて使用することはできない。

資本を有する役員の報酬は、労働の実体があれば、労働力商品に労働力再生産、投融資先再生産、資本家再生産の土台という価値属性が付与され、支給された現金に付与された価値属性を実体あるものと社会に認めさせた金額に、労働を疎外したことによる、現実には配当である金額からなる。資本を有しない役員の役員報酬には既に労働を疎外され、労働力商品と現金商品の交換により実体化された価値属性に投融資が加算される。資本を有しておらず、登記もされていなければ、労働力商品と現金商品の交換により、労働力商品に付与された価値属性を実体化させて現金留保を所有している労働者であるから、その支給された賞与は使用人賞与である。