[事実関係]

 原告法人は、同法人が所有していた土地の一部を売却し、確定決算において、右土地の売買による利益金相当額を特別勘定として損金経理した。

税務署長は、租税特別措置法65条の7(特定の資産の買換えの場合の課税の特例)を否認して更正処分を行った。

 裁判所は、

「原告法人使用部分について、原告法人は前記建物の一部及びその付近の空地の一角においてその事業目的である合成樹脂の製造に必要な機械等を保管していたものであるが、原告法人に自らの使用状況は、

本件買換資産の従前の使用状況に変化に支障をきたさない範囲内のものであり、とりわけ右建物の一部の使用は、原告法人が鉄工に懇請して同社に支障がない所を使用していたにすぎないこと、

右使用のために原告とKグリーンとの間において賃料の修正をしていないこと、

保管している機械類の一部にはS所有のものも含まれ、原告法人自らの使用とは認められないこと、使用面積は本件買換資産全面積の10%に満たない(その区分特定もされていない)こと、

同所の管理はKグリーンが行っており、原告法人自身同所に出入りするにはKグリーンの承認が必要であったこと、原告法人が本件買換資産を自ら使用するにはその管理状況とその位置関係などからみて常時容易にできるような状況になかったこと等が認められ、

むしろ、原告法人のその使用状況は課税の特例を受けるために急いで取得した本件買換資産のごく一部を同特例を受けるために便宜上使用しているもので、これにより、本件特例の趣旨である産業設備の整備、更新、又は工場移転による産業立地の改善促進による資本の活用が図られたとは言えず、

したがって、原告法人の使用部分に限ってみても右使用状況からは、原告の本来の事業である経営活動のために利用されたもの、すなわち「事業の用に供した」ものとは到底認められない。

本件買換資産の使用状況からすると、原告法人は本件買換資産をいかなる意味においても事業の用に供したものとは認められない」とした(神戸地判昭和60年9月30日)。

[解説]

 資産は、取得し所有しているだけでは現金留保を産まない。金融資本家との資本関係から課せられた現金留保義務から、生産手段として貸与し、労働を疎外することによって現金留保を産まざるを得ない。

金融資本家との資本関係から課せられた現金留保義務から、労働を疎外済みの資産を譲渡して現金留保と譲渡資産付与された価値属性が実体あるものと認めさせ、現金留保を産まざるを得ない。生産手段として貸与し労働を疎外が既に行われて現金留保を産むのである。

現実に原告法人において取得した資産が、経済関係上、使用できなかったこと、経済実体上遊休であった場合には事業の用に供したとは言えないことになる。

目的は観念であり実体がないから、課税の特定を受けるために急いで取得した資産のごく一部を、特例を受けるために便宜上使用しているという目的については実体がなく、特例適用を否定する理由にはなりえない。

買換の特例の適用の源泉は、資本の活用である。

立法趣旨は実体がなく、買換えの特例は、資産の買換えにより産業資本家が所有する法人名義で金融資本家から投融資を受けることにより、金融資本家の現金留保が蓄積されるという既存の過程に基づいて創設されたものであるから、立法趣旨と交渉して解釈すると金融資本家の現金留保集中の装置となるのである。