[事実関係]

相続人は、被相続人の代理人として、相続開始の2ヶ月前の昭和62年10月に全額借入金により不動産を取得した。不動産の購入価額は、758,000,000円である。

昭和62年12月19日被相続人は死亡し、当該不動産は相続人4人が各人1/4ずつの共有持分により相続した。財産評価基本通達により評価した価額は131,707,319円である。

遺産分割協議の成立日は、昭和63年1月22日である。昭和63年4月から7月にかけて相続した不動産を774,000,000円で他に売却した。

当該売却代金をもって上記借入金を返済した。

当該事案について、相続人は、被相続人に係る相続財産の申告に当たって、本件不動産の価額を財産評価基本通達に基づいて131,707,319円と評価して相続財産に計上し、購入金額である借入金をそのまま債務に計上して債務控除を行ったが、

課税側は、この一連の行為を本件不動産の取得価額と財産評価基本通達に基づく評価額との差額を利用することによる相続税の課税価額の圧縮効果を得る目的のためになされたものであるとして、当該不動産の評価額は、財産評価基本通達による評価額ではなく、当該取得価額によるべきであるとした。

判決は、

「相続財産の評価については、別段の定めのある場合を除き、財産評価基本通達の定めにより評価することが原則であるが、当該財産基本通達によらないことが相当と認められるような特別な事情のある場合には、他の合理的な時価の評価方式により評価することが認められるものと解すべきである。

本件事案の場合においては、被相続人が相続開始直前に借り入れた資金で不動産を購入し、相続直後に当該不動産が相続人により売却され、当該売却代によってその借入金が返済されているような、当該不動産と借入金との対応関係が明確なものにまで画一的に財産評価通達に基づいて評価することが当該不動産を客観的な市場における不動産の交換価値によって評価したときとの比較において、実質的な租税負担の公平を著しく損なうもので容認し難いものであると考えられ、このような事態が特別の事情がある場合に該当するものであると解されるものである。

本件事案は、相続により取得した財産の評価について特別の事情が存することにより、財産評価基本通達の定めによらず、他の合理的と認められる時価の評価方式により評価したに過ぎず、財産評価の基本原則である相続税法22条(時価による評価)の解釈の範囲内であり、納税者側の有するような租税法律主義、遡及処罰の禁止及び平等原則に反するような事態を招来しているとは到底解し得ないものである」として、当該不動産の評価は当該取得価額によるべきであるとした(最判平成5年10月28日)。

[解説]

全ての資産には価値属性は備わっておらず、評価は、価値属性を付与することであり、実体はない。

現実に当該資産を引き渡して現金を得て、現金に価値属性を付与することによって、時期渡した資産の価値属性が実体あるものと社会に認めさせることになる。

通達は、金融資本家と税務行政機関の生産関係上の義務である。金融資本家は、担保として得た不動産を、資本関係のある子法人たる不動産法人に売却し、不動産の譲渡があった場合、子法人に資料処箋を税務行政機関に引き渡させる。

税務行政機関は金融資本家との資本関係、生産関係に基づいて課税を行う。マンションに現金を投下したことによる配当は、実定法によれば、譲渡所得で課税され、取得費は被相続人の取得価額を引継ぎ、63年1月1日は原始取得の日から5年以下であるから短期譲渡所得で、当該相続開始時においては申告書提出から3年以内に譲渡した場合の取得費加算の特例はなかった。

土地や架空資本は価値という属性を備えていないから、土地や架空資本は所有するだけでは、現金留保を産み出さない。

産業を興すか投融資するかして、労働を疎外して、所有する法人に現金を留保する。資本家は配当名目か譲渡名目で現金商品と交換して現金を受け取る。

現実にはどちらも配当であり、取得価額すなわち現金を投融資した金額は取得価額とはなり得ない。金融資本家は、交換によって得た現金商品を架空資本の譲渡先法人に投融資すれば、譲渡先法人が子法人となり、譲渡した架空資本の発行法人は孫法人となる。

発行法人の架空資本の所有権は失っていない。

融資取引の場合、子法人の資本家は、法人は全て実体あるものとして社会に認めさせることに成功せざるを得ず、資本関係上、生産関係上、法律上、現金留保を流出させ、支払利子を支払う義務があるが、親法人、子法人は同一の金融資本家であるから、金融資本家のトータルの現金留保は融資取引について言えば変わらないが、子法人の現金留保が減少することにより、株価を下落せざるを得ず、他の資本家が当該子法人を買収し、中央銀行を所有する民間銀行に投融資できてしまい、金融資本家は投融資を受けて産業をせざるを得なくなるから、支払利子は労働を疎外して労働力に付与された価値属性から控除することにより、子法人、孫法人の労働者に利子配当支払を転嫁せざるを得ず、金融資本家の現金留保は増加する。

損をしていないから法人の支払利子は現実には損金ではない。

当該事例の場合、資本家は被相続人に融資した金融機関の資本家である。現実どおりに土地に投融資したことによる配当であったとみれば、譲渡収入の必要経費に資産の取得価額は算入されない。当該不動産の相続財産となる金額は相続時の時価ということになる。

購入するのも売却するのも不動産法人を所有する金融資本家を通じてであるから、取得時価、売却時価を規定するのは金融資本家である。

時価は、中央銀行を所有する民間銀行を所有する金融資本家が規定する。現金の投融資をした実体と受けた実体が異なるから、元本返済と利子支払により、不動産に現金を投下して現金商品を交換して取得して投融資に回すことができない。

所得税法、金融資本家と納税者は別の法人として商法行為を通じて社会に認めさせている。所得税法上の法人は使用人がいない場合には、利子配当を転嫁できないから、純資産が減少をして利子配当が必要経費ということになる。

投融資を受けたことによる金融資本家との資本関係に基づいた現金義務から、不動産を引き渡してサブリースによる収入を得る土台、権利を滅失させることと引換えに現金を得て、現金に価値属性を込め、手離した不動産に付与された価値属性を実体あるとさせている。

当該事例の場合は、譲渡所得ということになり、取得価額は必要経費ということになる。

判決は、土台となる経済関係を全て把握することなく、相続価格の圧縮効果を得る目的のためにのみなされたものであると実体にない効果を得るという目的によっているという問題がある。

取得価額を評価額とすることは、不動産取得時から相続開始までは事業に使用していないから減価したという価値属性は備わっていない。

被相続人から相続人への譲渡があったとき、相続時の時価で評価し、損益を実体あるものとして申告により社会に認めさせることを義務づける相続税法22条に抵触するとの見解があるであろう。生産関係上の義務である通達による評価や課税の過程に鑑みれば、遡及処罰の禁止に反するという問題はあるであろう。