[事実関係]

 課税時期後に公表された不整形地の評価情報に基づいて、相続に係る土地の評価を行ったことにつき争われた事例で、

裁判所は、

「評価通達は、評価すべき当該土地が不整形地である場合には、その不整形地の程度、位置及び地積の大小に応じ、近傍の宅地との均衡等を考慮して、路線価から100分の30の範囲内において相当と認める金額を控除した価額によって評価することとしている。

これは宅地の形状が悪いこと等により宅地としての機能を十分に発揮しできず、その利用価値が減少することを宅地の評価額の算定に当たって考慮する趣旨であり、したがって、宅地の形状が完全な正方形ないし矩形でなくても、その宅地の地積が有効利用することのできる広さを有し、宅地の有効利用に格別の支障を生ぜしめない程度の不整形にとどまる場合にはこれによる補正をする必要がないというべきである。

また、宅地の形状が同一でも、その地積が大きければ有効利用するための制約を受ける程度も少なくなると考えられることから、不整形地の評価額の算定については、不整形地の形状だけではなく、不整形地の程度、位置及び地積の各要素を考慮してなされるべきである。

評価通達に定める不整形地補正は、100分の30の範囲で相当と認められる金額を控除するだけで、具体的な算定基準が定められていない。

これは、評価対象である宅地の形状が多種多様であることに鑑み、一律にその経済的価値の減少割合を算出することが困難であるため、個々の不整形地についてその価値の減少していると認められる範囲内で補正することとしているものと考えられる。

そこで、課税実務上は不整形地について、仮に売買されたとして取引価格に対してどの程度の影響を与えるか、過去の類似事例で適用された不整形地の補正率がどの程度のものであったか、鑑定評価があった場合どの程度の補正率が適用されているのか、国土庁による土地価格比準表ではどの程度の補正率が適用されるのか等、経験則に従って不整形地補正率を決定していたが、課税の公平、簡素化の観点から、平成4年3月3日、本件情報が公表され、不整形地補正率の算定に当たっては、単に宅地の形状だけでなく、当該宅地の存する地区や不整形地の程度、位置、地積の大小等の諸要素を考慮してこれらを行っている。

評価方法、評価基準、そして本件情報のいずれも、要するに相続財産たる宅地の時価評価方法に関するものであることからすれば、それが時価評価の方法に関するものであることからすれば、それが時価評価の方法として合理的で有効なものと認められるか否かが問題であって、本件情報が、従前、不整形地補正率を経験則に従って決定従って決定して従っていたのを、課税の公平、簡素化の観点からその算定を統一的に行うために公表されたものであることに照らしても、それが単に本件相続の開始後に公表されたものであることの一事をもって、これに依拠して行われた被告による本件係争地の評価が直ちに違法ということはできない。

本件土地は、普通住宅地にあり、三世帯三棟の建物の敷地として利用されていて、その形状は、細長い多角形の地形ではあるが、正面と裏面の二方面が道路に面しており、また地積も1,018.17㎡と三棟の建物の敷地として有効に利用できるだけの十分な広さがあることが認められ、細長い形状による不利はあるにしても、宅地としての有効利用に大きな支障を与えるものとは言えないところ、被告は、評価通達に基づいて奥行価格逓減をなした上、本件情報の地積区分及び不整形地補正率表により、不整形地補正として5パーセントを逓減しており、これ以上更に減額する必要があるということもできないから、同土地についてより高い割合の補正(10%)をすべきであるとの原告らの主張は採用できない」とした(千葉地判平成10年10月26日)。

[解説]

 土地の境界線は資本関係、経済関係により規定されたものである。土地には何ら価値属性は備わっていない。

現金を土地に投下して、生産手段、労働力商品を購入し、労働を疎外することによって現金留保を得るのであって、土地が現金留保を生み出すわけではない。

現金を土地を購入し、住居を建設、購入することによって、生殖という再生産の土台としている。このような現金留保の蓄積過程を見れば、産業や再生産の基礎となる事務所、住居を建設できるか否かによって、事務所、住居によって現実に現金留保を得たかによって課税の基礎事実が規定されることになる。

全ての不整形地について調査し、全ての事実関係の把握、確定、それを土台にした問題提起によって、蔭地割合、不整形地補正率を各土地毎に規定したのであれば別であるが、不整形地補正率が問題提起のいくつかを捨象して類型化したにすぎないのであれば、土地使用による現実の経済実体から乖離している。

不整形地補正率以外の実体を斟酌するにしても、金融資本家の資本関係、現金留保義務を土台として、各所有主の経済関係を疎外して、価値属性を付与する、すなわち評価する、すなわち、事実認定するのであれば、現実の経済実体から乖離したものとなる。

課税側たる金融資本家は、法改定、通達改定の土台となる事実につき、当該相続の前に、各納税者の全ての経済事実、事実関係を把握、確定し、立法、金融資本家と税務行政機関の生産関係の改定の原因事実を生産関係上、金融資本家に認めさせることに成功していないこと、法改定よって社会に認めさせることに成功していない。

課税側は、法律通達の遡及適用により、全ての経済事実、事実関係の把握、確定を土台とした相続開始時の法律上の事実確定、法への包摂ではなく、経済を土台とした法律上の事実確定につき、経済上の評価を行って、各納税者の全ての経済事実、事実関係、立法の土台となる原因事実が相続開始までの過程に存在していることを把握、確定、問題提起していなかった、認めさせていなかったことにより存在しなかった法律による法律上の評価すなわち事実認定により、相続財産の土台となった経済実体を疎外して担税力という価値属性を課税によって得た現金に価値属性を与え、実体あるものと社会に認めさせているという不利益処分を行っているのである。