信託は、金融資本家が法人を買収し所有するプロセスである。金融資本家は、信用という実体のない属性を信託銀行に込め、資産の原取得者は、当該資産を信託に譲渡する。この時点で金融資本家が架空資本を所有する受託者が当該資産の現実には経済上だけでなるだけでなく、法律上の所有者となることが確定したと見ることができる。受託者は信託者の指揮監督に基づいて資産を運用し、受益者に資産運用の利得を与え、それによって得た利得を受託者は享受できないという建前になっている。
受益者は登記をしないから、資本家が資産隠しを行い、課税を免れていることがあると説明されることがある。全資本家の集合である国家に税収がプールされていなくても、金融資本家は、中央銀行を所有しているから、中央銀行には準備金がプールされ、また、紙幣を増刷することができる。信託会社、信託銀行を所有しているのは金融資本家である。金融資本家が信託すれば、受託者たる信託銀行と資本関係があるから、受託者は金融資本家の現金留保に応じざるを得ない。現実の受益者は金融資本家である。
産業資本家には、受託者に投融資している金融資本家との資本関係により資産運用につき自由意思はないが、信託者、受託者の登記という法律行為を媒介に、産業資本家は、自由意思による自己責任をフィクションされ責任を負わせられる。
価値というものは実体がないから価値の下落は方便である。投資した紙幣には記名がないから、紙幣は所有主を持たない。預かった紙幣を他に貸し付けることも経済上できる。現実には、支払手段である資産が不足はしていないが、投資した側に損失が生じたとする方便を社会に認めさせることに成功する。投資した側は、資産を手放さざるを得なくなるか、さらには破産せざるを得なくなる。
信託の場合においても、経済上の所有者と法律上の所有者が一致しないということは成立し得ないと見ることができる。買収した産業資本を第三者に売却したりして、投融資をして利息や配当を得て現金資本を増殖させる。タックスヘイブンに送金し、課税を免れているのは大部分が金融資本家である。