[事実関係]
役員給与を損金に算入して青色申告を行った同族関係会社が、当該給与を役員が受領していないとの申述から損金に算入した役員給与が支払われていないとして、損金の架空計上であるとして行われた更正処分につき、裁決は、各役員に勤務実体があり、取締役会において支給金額が確定しており、支給日は他の使用人と同じ毎月10日であるということを認定し、債務は確定しており、架空のものであるとは認められないとして更正処分、青色申告承認取消処分を取り消した事例がある(平成24年3月28日裁決)。
[解説]
裁決において請求人側の役員は、給与の支給を受けず、当該給与について、会社のために使われたが何に使われたかわからない旨述べている。勤務実体が現実に存在し、生産関係上、給与すなわち損金が存在し確定する。
資本関係上、確定した役員給与が、役員に支給されずに、役員給与以外の名目で他に支出されていたということがありうること、役員は資本関係、経済関係、生産関係上、自由意思の介在する余地なく、その給与を資本家に前貸しせざるを得ないことがありうる。
労働基準法上、給与についての消滅時効は2年であることを社会に認めさせることに成功しているが、生産関係上、資本家は、役員を含め使用人に給与支払の債務を自由意思で免れることができず、支払がないことをもって、経済関係を土台とする所得の計算上、損金に算入することを直ちに否認することはできない。
裁決は、給与を法人に貸付け又は贈与したものとするが、資本関係上、役員は、給与を贈与せざるを得ない経済関係を、法律行為を媒介に社会に認めさせることに成功したわけではないから、会社に貸し付けたものと見ることができる。