アメリカ金融資本家が、さほど利益を生まない投資について行ってきた準備は何か。それは、起業の奨励である。起業を行わせれば、生産関係上、生産手段や労働力を購入せざるを得ず、借入をせざるを得ない。労働者のままでいさせるよりは、多くの金を借りざるを得ないのである。

アメリカ資本家は、創業者支援の各種助成金を用意し、起業家に投資する側に各種優遇税制を用意した。更に、事業を継続させ、資金を投融資し続ければ、投融資を受けた側は、金融資本家に支払いをしなければならないから労賃を搾取して内部留保を蓄積せざるを得ない。利子配当及びその原資である内部留保が蓄積される。アメリカ資本家は、その所有物である日本という国家に事業承継税制を成立させた。10月1日から実施させた中小企業経営力保証強化制度もその一部を構成している。

金融資本家は、起業を申請すれば、その者の経済関係に関係なく金を貸す。金融資本家は、無産階級たる労働者に投融資や労働力再生産、投資先再生産の土台とすることを余儀なくさせる現金を支給して価値属性を付与しても、投下した現金についてのリターンが産業資本家に投下するよりも得られないから、投融資による資本関係により、起業をせざるを得なくさせる。労働者の経済の全てについて問題提起をせずに安易に起業を促すことは、労働者を経済的に苦しめることとなる。確かに、労働者を資本家の奴隷のままにさせておいておくのは問題である。しかし、起業を促進することが直ちに奴隷解放につながると考えるのはあまりにお花畑であろう。起業家支援、事業承継を後押ししてきた、後押しすることを法を媒介に資本家が社会に認めさせることに成功した税理士、会計士はアメリカ資本家の下僕としての任務を与えられ、協力させれてきたのであり、協力させられるのである。