[事実関係]
ビル清掃業を営む法人において、その経理部長が、架空外注費に上乗せした金額で法人の取引銀行の払戻請求書を作成し、業務上の外注費名義の金額を外注先に、上乗せ分を経理部長が管理を委ねられている口座に送金していた件で、最高裁は、架空外注費を計上していた各事業年度に損害賠償請求権の益金算入を行い、経理部長に対する損害賠償請求権の貸倒れを否認した課税庁の処分を維持した事例がある(東京高判平成21年2月18日)。
[解説]
正規の振込依頼書を確認すれば、資本家が容易に上乗せ金額の事実を知りうるから、資本家と経理部長の生産関係に鑑みれば、経理部長が自由意思に基づいて行うということはありえず、資本家の指示の下、行ったものとの推論が成立しうる。
資本家が、架空外注費の計上について、経理部長が行った行為であるとして、経済上の損害賠償請求権を法律上の権利とすることを司法を媒介に社会に認めさせることに成功したわけであるから、損害賠償請求権が実体がないものとは主張しえず、損失の知・不知に関係なく土台となった生産関係経済関係が構築された、架空外注費に計上していた、すなわち商法上の行為も行っていた各事業年度に経理部長に対する損害賠償請求権が計上されていなければならないということになると思われる。