[事実関係]

コンピュータソフトの販売支援、マーケティング、製品サポートを行う法人が、国外卸売業者から収受した手数料について、役務提供法人と卸売業法人とでは、機能及びリスクについて看過しがたい差異があり、課税庁が採用した再販売価格基準法に準ずる方法は、比準法人と類似していないから基本3法に準ずる方法とは言えないとして原告の主張を認めた判決がある(東京高判平成20年10月30日)。

[解説]

原告法人と比準法人のそれぞれが所有する経済関係を全て列挙してみるプロセスで、全て列挙し尽くしたかという問題が成立しうるが、一以上、経済上の事実関係に相違があることは原審が述べているところであるが、控訴審では、役務提供取引と販売取引についての原則、与えてきた属性に基づいて判示してしまっている。

原審は、大企業等の信用の高い顧客が多く、貸倒れのリスクが少ないと主張するが、信用という唯心論ではなく、現実には、大企業は内部留保が厚いからだけでなく、大企業には売上先が清算しても税金投入による損失補填と当該大企業が所有する株式、公社債に投融資して内部留保を蓄積する資本家の存在があるから清算しない。
産業資本家は、リスクが高いから商品に価値がある、金融資本家も、取引先の保護と称して、リスクという語を方便に、自社及び他社の労働者からの搾取の継続を行っている。リスク云々を持ち出さずに、機能という資本家が与えた属性に固執せずに、当事者たる法人と比準法人の現実の経済関係の相違を踏まえて斟酌する必要がある。

比準法人との比較を前提とする算定方法が行われうる余地が狭くなりうるが、残余利益分割法に基づいて処分を行うことになったとしても、親会社、子会社がそれぞれ経済利益を法律を媒介にして社会に認めさせるプロセスに鑑みれば、両者の所得を合算しえないという問題がある。

貢献度に使用する要素が全体化を尽くさず恣意的にならないかという問題がありうる。卸売事業について、事業再編を行ったことにより、国外関連者に譲渡されたわけであるが、事業譲渡の対価すなわち現金、有価証券の収受の有無については問題とされていない。直接に労働者を搾取する取引から、中間搾取者が介入した取引に変更し、すなわち、役務提供の方便により、第三者の労働者から搾取するという取引になったにもかかわらずにである。