[問題の所在]
裁判例の中には、白色申告について、必ずしも理由附記をしなければならないというものではないとするものがあった(福岡高判昭和32年9月19日)。すなわち、白色申告についても、理由附記が認められる場合がケースによってはあることを示唆していたものと見ることもできなくはない。
しかし、従来、白色申告の更正処分については、法律上、理由附記は義務付けられていなかった。
ところが、所得税法231条の2は、下記のように規定する。
その年において、不動産所得、事業所得若しくは山林所得を生ずべき業務を行う居住者又はこれらの業務を行う非居住者(青色申告書を提出することにつき、税務署長の承認を受けている者は除く。)は、財務省令で定めるところにより、帳簿を備え付けてこれらの所得を生ずべき業務に係るその年の取引の内、総収入金額及び必要経費に関する書類を財務省令で定める簡易な方法により記録し、かつ、当該帳簿(その年においてこれらの業務に関して作成したその他の帳簿及びこれらの業務に関して作成し、又は受領した財務省令で定める書類を含む。次項において同じ)を保存しなければならない。
事業所得、不動産所得又は山林所得の金額が300万円以上の白色申告の事業者については、上記の記帳義務が課されていたのである(昭和59年所法等改正附則7)。
一方、国税通則法74条の2第1項は、
行政手続法第3条第1項(適用除外)に定めるもののほか、国税に関する法律に基づき行なわれる処分その他公権力の行使に当たる行為(酒税法第2章(酒類の製造免許及び酒類の販売免許等)の規定に基づくものを除く)については、行政手続法第2章(申請に対する処分)及び第三章(不利益処分)の規定は適用しない。
としていた。
行政手続法3条(適用除外)は、
次に掲げる処分及び行政指導については次章から第4章までの規定は適用しない。とし、
六 国税又は地方税の犯則事件に関する法令(他の法令において準用する場合を含む)がする処分及び行政指導並びに金融商品取引に関する法令に基づいて証券取引等監視委員会、その職員(当該法令においてその職員とみなされる者を含む)、財務局又は財務支局長がする処分及び行政指導。
としていた。
行政手続法8条
行政庁は、申請により求められた許認可等を拒否する処分をする場合は、申請者に対し、同時に、当該処分の理由を示さなければならない。但し、法令に定められた許認可等の要件又は公にされた審査基準が数量的指標その他の客観的指標により明確に定められている場合であって、当該申請がこれらに適合しないことが申請書の記載又は添付書類その他の申請内容から明らかであるときは、申請者の求めがあったときにこれを示せば足りる。
2. 前項本文に規定する処分を書面でするときは、同項の理由は、書面により示さなければならない。
行政手続法14条
行政庁は、不利益処分をする場合には、その名あて人に対し、同時に、当該不利益処分の理由を示さなければならない。但し、当該理由を示さないで処分をすべき差し迫った必要がある場合は、この限りではない。
2.行政庁は、前項但書の場合においては、当該名あて人の所在が判明しなくなったときその他処分後において理由を示すことが困難な事情があるときを除き、処分後相当の期間内に、同項の理由を示さなければならない。
3. 不利益処分を書面でするときは、前2項の理由は、書面により示さなければならない。
[国税通則法の見直し]
平成23年12月の国税通則法改定により
白色申告事業者については、平成26年1月1日より前述の者以外の事業所得者についても所得税231条の2の記帳義務が課された(平成23年12月所法等改正法等附則8)。
国税通則法74条の14第1項は、下記のように定める。
行政手続法第3条1項に定めるものの他、国税に関する法律に基づき行なわれる処分その他公権力の行使に当たる行為((酒類の製造免許及び酒類の販売業免許等)の規定に基づくものを除く。)については、行政手続法第2章(申請に対する処分(第8条の理由の提示)を除く)及び第3章(不利益処分(第14条(不利益処分の理由の提示)を除く。)の規定は適用しない。
従前から記帳義務が課されていた所得金額300万円以上の白色申告事業者については、平成25年1月1日以後にする処分について適用されるが、平成25年において記帳義務及び保存義務がない白色申告事業者(平成20年から平成24年までの各年分において記帳義務があった者を除く)にする処分については、平成25年中は適用しないこととし、平成26年1月以降の処分からとされる(推計課税の場合も含む)(改正附則41条)。
[コメント]
白色申告者の更正処分についても、国税通則法の改定により、理由附記が義務づけられることとなったが、更正処分を行う場合、青色申告と白色申告との間に理由附記の程度に差異を設けるべきとの見解が存在する。
しかしながら、白色申告者の確定申告書記載、帳簿記録から所得を知りうることができないとしても、白色申告者についても取引に係る原始記録は存在し、取引相手先に対する調査も認められているわけであるから調査官において取引事実に確認できる関係にあるのであるから、理由附記の程度に差異をつける根拠とはなりえない。
税務調査をしたにもかかわらず、当該白色申告者の現実の所得を知りえない又は確定できない場合には、白色申告者の申告書、帳簿記録、原始記録、調査により知った情報、得た資料のどこに疑問点が存在し、問題点を全て挙げ、誤りであると推論するのか、その結果推計課税を行うにしても、推計に用いた資料、算式についても、問題提起がしつくされ、科学的に推論がなされたものなのか、白色申告更正処分の理由附記については、国際金融資本の代理人たる税務行政側に詳細にテストがなされなければならないであろう。
国際金融資本の代理人は、従来から理由附記が行われたいた青色申告事業者の更正処分、青色申告承認取消処分以外について、税務調査手続等の試行結果報告書に把握した問題点等を記載し、調査結果の説明書、処分の理由書を作成し、統括官、審理担当官のチェックを受けることとされている(東京国税局課総臨4号)。
調査により現実の経済上の事実関係を把握し、処分の理由の方便が作成済であるのに何故納税者に知らせないのか。
資本関係がフィクションされ、労働の評価、現実の経済諸関係を疎外されて、利潤、現金留保が租税により収奪され国債を負担させられることは青色申告者も白色申告者も同じであるから、記帳の程度に応じて理由附記をしないことや理由附記の程度に差を付けることはできないと解釈しなければならない。。