前事業年度以前に継続的取引関係のある取引先等から請け負った設備の補修工事について(当社は下請会社)、契約後、当社に発注した法人を通じ、着手することを待つよう求められ、当事業年度に入って、当該工事が行われないこととなった。取引先は請負契約締結後、工事取消後も法律上も解散清算等を行なっておらず、経済的にも財産状態及び経営成績も悪化していない。当社は、前事業年度以前において、契約等により返還不要の金額が確定してことをもって、収益計上をしている。その後も、相手先及び人的担保たる連帯保証人の支払能力、業績等も悪化していないことから、貸倒損失等をはじめ損失として何ら認識していなかった。こうした場合、当事業年度において貸倒損失として、処理できるか。

貸倒損失として処理した場合寄附金又は交際費等として認定されないか。確かに役務提供を業とする者について課税庁は、返還不要が確定したときに収益計上すべきと認定しうるが、原則は、役務提供完了時又は完成引渡時に収益計上されるものである。当該事例の場合、何ら完成引渡しが行われていないのであるから、請求権が顕在化していない。

したがって、貸倒損失云々の問題ではないことになる。契約等の変更等があって、それを知りうることとなった当該事業年度において、前期損益修正を行うことは、税務上も認めることとしていることから、当事業年度において、(借)売上高(貸)売掛金として、売上金額の訂正を行えばよいことになる。仮に売上の訂正処理を行なっていなかったことが確定申告書提出後一年以上経過した後に判明したとしても、調査において知り得たことは、増額更生となろうが、減額更正となろうが更正しなければならないから、更正するしないの自由意思は介在しない。資本家集団に命じられて職権で処分すなわち申告した経済関係に属性を与えそれを変えるわけであるから、課税庁の職員に課税処分をするしないの自由意思は与えられていない。したがって、納税者は、調査等において工事の実体がなかったことを主張する必要がある。