売上の請求締め日と売上計上の特例
決算日(事業年度末日)が3月31日で、売上先への請求書の締め日は毎月20日の会社があるとします。この場合、決算での売上計上額については、発送毎に記帳している受払簿又は”納品書”を見ながら税務上2つの方法が認められています。
①4月1日~翌年3月31日までの全ての売上を計上する
②4月1日~翌年3月20日までの全ての売上を計上する
①が原則となります。②は3月21日~3月31日までの11日分の売上が計上されないので、①より利益が少なくなります。その分、法人税の額も少なくなります。経理事務上にも、売上だけに限って言えば、自社が納品基準の会社の場合、納品書通りに経理処理をするだけなのでシンプルです。
この②の特例は、下記の法人税法 基本通達2-6-1で認められています。
(決算締切日)
2-6-1 法人が、商慣習その他相当の理由により、各事業年度に係る収入及び支出の計算の基礎となる決算締切日を継続してその事業年度終了の日以前おおむね10日以内の一定の日としている場合には、これを認める。
10日以内のズレしか認めていないので、例えば毎月15日締め日としているようなケースで、3月16日~3月31日までの売上を計上しない(翌年度で売上計上)ケースは認められません。
なお、取引先の要請により締め日が取引先ごとに異なるケースがありますが、これも10日以内であれば適用できます。A社への売上は、毎月20日で締める。一方でB社への売上は毎月25日で締める。A社の売上のうち3月21日~3月31日までの分は翌年度で計上。B社の売上のうち、3月26日~3月31日までの分も同じく翌年度で計上することもできます。
但し、この特例を適用した場合、在庫の把握は少し労力を要します。
決算締切日の特例と在庫計上
売上と仕入原価は連動(費用収益対応)させないといけないので、21日以後の売上を翌年度に計上するなら、在庫も3月31日の金額ではなく、3月20日時点での金額で決算処理する必要があります。売上だけ翌年度にズラして、仕入は1年分フルに経費計上するというのはできません。
人件費は、例えば、休憩に入る前、商品の発送、製品、役務の完成といった労働の完了する毎に支払義務が発生しますので、金融資本への支払、法人資本の資金繰り、売上に応じてその支払いを伸ばすことは、経済関係上はできません。
なお、この決算締切日の特例を使う場合であっても、販売管理費は1年分まるまる計上できます。人件費の内、売上と連動する仕入原価は売上と対応させ、売上の建っていない分(上のA社売上の例で言うと、21日~31日分)については、在庫計上する必要がありますが、人件費等の販売管理費は締め日に左右されません。
2-6-1の取り扱いにも関係しますが、決算時に商品在庫をカウントするときに必要なことがあります。
商品の入出庫を、受払い簿や商品管理システムで正確に記録している会社であれば問題は生じにくい場合もありますが(それでも実地棚卸はしなければいけません)、期末に実在庫だけをカウントしている会社では、『預け在庫』もカウントしなければなりません
預け在庫とは、まだ販売(検収)又はそれを用いた作業が完了はしていないのだけど、取引先には仮納品している段階の商品です。つまり、会社としては、まだ売上に計上していないのだけど商品は、相手先にあるので、会社にある実在庫だけをカウントしていると、預け在庫分が漏れてしまうということになってしまいます。
搬送中の商品や返品された商品の在庫もカウントしなければなりません。
社員に在庫管理を一任していて、かつ会社内にあるものだけを数えているというだけでは不十分です。
上記のような、決算締切日の取扱いができるのは法人に限られています。
よって、、個人事業主が12月20日を決算締日として設定して、12月21日から12月31日までの売上と仕入を来年に繰り越して計上することは認められていません。