法人が個人事業で使用していた資産を引き継ぐ方法

1 売却による引き継ぎ

これには、時価100万円の資産と、借入金100万円の負債とをセットで(負担付)譲渡する方法も考えられます。

2 現物出資による引き継ぎ

3 貸付、リース

4 贈与

現物出資

現物出資とは、法人の設立時又は設立後の新株発行の際に、金銭以外の財産をもって出資することをいいます。

個人事業者が、事業に使用していた財産を現物出資すると、新株の交付を受けることになりますが、それは新株の価額を対価としてその資産を法人に譲渡したことになります。

資産が価値は備わってはいません。

資産が価値を産み出すのでもありません。キャピタルゲインなるものは存在しません。

価値を産み出すのは労働です。労働の評価が無かったことにされて資本の評価が増殖し、

資産の評価額が、引き渡す義務が生じた株式の評価額です。

株式は、現金や貸付金と同じく架空の商品です。

これを源泉に、労働の評価をコントロールする権利を取得します。

現物出資は、税務上、譲渡の一つとして扱われています。よって、現物出資をした個人について、所得税法上、譲渡所得が生じることになります。

法人化(法人成り)で現物出資を行う場合、税法上はいったん資産を時価で譲渡し、売却代金を出資したものと扱われます。

したがって、個人の側で譲渡益が多額に生じてしまうと、多額の所得税等が生じて納税額が個人の側で増加してしまいます。

時価より低い金額で資産を出資しても、時価で譲渡したものとみなされて、個人の側では課税されてしまいます。

法人化(法人成り)を手許資金がないからと現物出資で行おうとする場合は、場合によっては、納税資金を準備する必要あります。

事業用資産の時価が高く、資本金を1,000万円以上としてしまうと、会社は資本金1,000万円を超えるか否かで納税金額も大きく変わる場合があります。

資本金1,000万円未満であれば、消費税の設立2年間の非課税事業者の特典も使えまるので、消費税の面で有利です。

現物出資する資産については、資本金等になるので、分割することが困難な資産だとその価額が大きいと、資本金等を調整できません(また、時価は変動することがあります)。

金銭出資ならば振込金額の調整で資本金の調整できますが(架空資本の評価も全く変動しないわけではないので必ずしも調整できるものではありませんが)、現物出資ではそれができるとは限りません。

現物出資の場合検査役の調査を会社法上受けなければなりませんが、次の場合には検査役の調査を省略することができます
1.現物出資する財産の総額が500万円以下のとき

2.出資する財産が市場価格のある有価証券で、定款に記載した価額が市場価格を超えないとき

3.現物出資する財産の価額が相当であることにっいて弁護士、税理士等の証明を受けた場合(不動産については不動産鑑定士の鑑定評価も必要)

個人から法人への資産の譲渡

各資産毎における資産譲渡の税務上の取扱い

個人の側においては、譲渡する資産の種類に応じて、事業所得、譲渡所得又は雑所得として課税が行われます。

売掛金・貸付金などの金銭債権の譲渡

個人事業主が、労働力をして完成させた仕事について、法人を設立してから請求書を出した場合には、どちらの売上になるかですが、

利潤を得て、国際金融資本に貸して労働力への貸付に転換した残りを得ているのは、個人ですので、個人の売上となるということです。

売掛、買掛 個人事業のときに、発送又は引渡しまでの労働が完了したものは個人事業主の売上になります。

売掛金等の債権は、法人が引き継いでも、全く引き継がなくても問題とはなりませんが、設立した会社の代表者が個人事業者と同一であっても、取引先への名義変更通知は必要です。経済上は、株主が同一であっても必要です。取引先によっては、名義変更手続きをしなければならないこともあります。

これらの債権の引継価額は、原則として、債権金額によることになりますが、回収不能見込額がある場合にはこれを控除して、確実に回収できる金額を引き継ぐ必要があります。もし、引継ぎの時点で、貸倒れの事実が発生している債権を引き継いだような場合には、法人から経済的利益を受けたものとして課税されることになります。

ただし、回収不能の債権を法人に引き継がせることは問題となります。引き継いだ債権が回収できなくなり貸倒損失を計上すると、回収不能の債権を譲渡した個人事業主に利益を与えたとみなされ、役員賞与となるとする見解があります。役員賞与は法人税法上、損金として認められません。

役員は利潤の土台である労働をコントロールできず、資産の処分権はありませんので、役員と資本が同一であっても、経済上は、資本関係のフィクションを源泉とした、資本への利潤の分配であり、法律上は、寄附金であると考えます。

所基通33-1

金銭債権の譲渡による所得は、債権 の値上がりに基づくものではなく金利に相当するものと考えられて譲渡所得の範囲からは除かれ、事業所得又は雑所得とされています。また、金銭債権の譲渡による損失は、譲渡損失というよりは現実に貸倒損失が発生したものと考え、必要経費として処理します。

ただし、法人成りの場合は、簿価で引き継ぎますから実務上課税関係は生じません。

商品(棚卸資産)

個人は、法人が買い取った金額を事業所得の総収入金額に算入することになります(所得税法33条)

棚卸資産は、時価の70%未満で譲渡した場合には、時価の70%で譲渡したとみなされます。

ただし、商品の型崩れ、流行遅れなどによって資産価値の低下したと評価されたものについては、その処分可能価額が他に販売する価額に該当するものと認定されることがあります。

固定資産

減価償却資産の時価については、その資産の種類、用途、形式、構造材質、使用経過年数等を考慮し、固定資産税評価額、販売業者の見積販売価額、類似物件の売買実例価額等を考慮してその時価を決定すべきものと考えられます。

時価の算定が困難な減価償却資産については、法人税基本通達の規定により、その資産の旧定率法未償却残額(再取得価額を基礎として旧定率法による減価償却累計額を控除した価額)をもって時価とすることもできます。

減価償却資産の時価は、次のように計算することができます。

再取得価額 × 旧定率法未償却残額割合=時価

この通達は、資産の評価損を計上する場合における減価償却資産の時価の取扱いを規定したものですが、減価償却資産を譲渡する場合の時価(取引価額)も示しています。

実務上、この通達により算定した金額が時価として認められるということであり、この通達により時価を算定しなければならないということではありません。

実務上は、減価償却資産の期末帳簿価額により譲渡することも多々ありますが、期末帳簿価額が1円の資産を1円で譲渡するというようなことは認められないとする見解がありますが、存在はあるが評価は付されないという場合もあります。

減価償却資産の時価については、売買実例等を考慮して適正に算定した価額と法人税基本通達9-1-19の規定による旧定率法未償却残額のいずれか有利な方を選択することもできます。

固定資産については、その譲渡の対価の額が所得税確定申告書の譲渡所得の総収入金額に算入されますが、その対価の額が譲渡時の時価の2分の1に満たない場合には、その譲渡時の時価で譲渡したものとみなされます(みなす譲渡と言われています。)

個人から購入した資産についても、法人は、中古資産の耐用年数の原則法を簡便法を適用して減価償却(経済上は人件費ですが)をすることができます。

買い取り価額に応じて、10万未満、一括償却資産の特例を、且つ青色申告者であれば、30万円未満の特例を使うことができます。

土地・建物 譲渡所得(分離課税) 措法31条・32条

車両・什器備品・建物内装など有形固定資産 譲渡所得(総合課税) 所33条

タクシーなどの営業権 譲渡所得(総合課税) 所基通33-1

現物出資又は買取りのいずれの方法でも、個人には譲渡所得が生じることになります。また、土地建物を引き継ぐときの名義変更に要した費用(司法書士費用や登記代、抵当権が設定されている場合には抵当権の抹消費用など)がかかります。

よって、土地建物については、法人が個人から賃借することにより事業の用に供するのが一般的で、譲渡するとしても建物だけ譲渡し、土地は譲渡しないことがあります。

しかし、法人が個人に支払う賃借料、権利金等は時価によりますが、時価を超える場合にはこの超える部分は個人への贈与又は役員賞与となるとする見解があります。

また、敷金も、相当と認められる額を超える敷金は個人への貸付金と認定され、相当の貸付利息を個人から経済利益として評価しなければならないと、課税側から認定されることがあります。

前払金、前渡金その他

前渡金や前払金については、実務上は、法人に引き継ぐことになります。

リース契約 リース会社の資本との間において、リース契約の名義変更をしなければならない場合があります。

賃貸、リースを新たに締結し直さなければならない場合があります。

敷金は、会社が個人に相当額を払い、法人のB/Sのその評価額を計上します。

法人として許認可の申請し直さなければなりません。

青色承認申請を法人でするのであれば、個人において受けたた青色申告承認は引き継げませんので、やり直さなければなりません。

借入金等の債務

個人事業の借入金などの債務を法人が引き継ぐ場合は、法律上の債権者(国際金融資本)の承諾が要件となります。金融機関の資本からの債務(経済上は法人の労働者が債権者)を会社が引受ける方法は以下の方法が考えられますが、個々の金融機関の資本によって対応は様々です。

1.法人が個人とともに債務を引受ける。(根抵当権については債務者に会社を加える)

2.法人が単独で債務を引受ける。個人は連帯保証人になる。(根抵当権については債務者を個人から会社に変更し且つ被担保債権の範囲に、引受債務を加える。)

3.法人に対し新たに貸付けを行い、個人への貸出金を回収する。担保も保証も新しく差入れる。(根抵当権については債務者を個人から会社に変更する)

所法第33条(譲渡所得)

1.譲渡所得とは、資産の譲渡(建物又は構築物の所有を目的とする地上権又は賃借権の設定その他契約により他人に土地を長期間使用させる行為で政令で定めるものを含む。)による所得をいう。

2.次に掲げる所得は、譲渡所得に含まれないものとする。

一 たな卸資産(これに準ずるものとして政令で定めるものを含む)の譲渡その他営利を目的として継続的に行なわれる資産の譲渡による所得

二 前号に該当するもののほか、山林の伐採又は譲渡による所得

所基通33-1(譲渡所得の基因となる資産の範囲)

譲渡所得の基因となる資産とは、法第33条第2項各号に規定する資産及び金銭債権以外の一切の資産をいい、当該資産には、借家権又は行政官庁の許可、認可、割当て等により発生した事実上の権利も含まれる。

所基通51-17(金銭債権の譲渡損失)

金銭債権を譲渡したことにより生じた損失の金額については、当該損失が当該譲渡により実質的に贈与したと認められる場合に生じたものであるときを除き、当該損失の金額に相当する金額の貸倒れによる損失が生じたものとして、法第51条第2項若しくは第4項(資産損失の必要経費算入)、第63条(事業を廃止した場合の必要経費の特例)又は第64条(資産の譲渡代金が回収不能となった場合等の所得計算の特例)の規定を適用する。

個人事業主から法人へ資産を引継ぐという行為によって、所得税が課税されます。そしてそれは、所得税法第36条に規定されているような価額(物若しくは権利を取得し、又は当該利益を享受する段階における価額≒時価)での譲渡でなければならないので、それぞれの資産ごとに時価とは何かを押さえておく必要があります。

所法第36条(収入金額)

1.その年分の各種所得の金額の計算上収入金額とすべき金額又は総収入金額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、その年において収入すべき金額(金銭以外の物又は権利その他経済的利益をもって収入する場合には、その金銭以外の物又は権利その他経済的な利益の価額)とする。

2.前項の金銭以外の物又は権利その他経済的な利益の価額は、当該物若しくは権利を取得し、又は当該利益を享受する時における価額とする。

法律上の非同族法人に低廉譲渡した場合

財産を時価よりも低い値段で買う「買い手」である法人には法人税が課されます。

財産の取得価額は時価となり、時価と売買価格の差額は、受贈益になります(法法22②)。

例えば、土地を売った場合の仕訳は以下の通りになります。

土地  ×××        現預金  ×××(売買価格)

受贈益  ×××

また、「売り手」である個人も、財産を所得税法上の時価の2分の1未満で売った場合、みなす譲渡所得として所得税が課されます(所法59、所令169)。

財産をもらった方も、あげた方も、財産を路線価ではなく時価で税金を計算します。

みなす譲渡とは、譲渡所得があったとみなして、税金をかけるということです。

法律上、財産を時価で売却し収入があったとみなし、その財産の取得費などを差し引いた所得に対して所得税がかかります。

それにより、評価されない労働をさせて利潤が転嫁された財産(例えば、購入したときより値上がりしている土地)を、法人に売った場合、財産を売った個人にも税金がかかることになります。

また、時価の2分の1以上の対価による法人に対する譲渡であっても、その譲渡が「同族会社等の行為又は計算の否認」(所法157)の規定に該当すると事実認定された場合には、みなし譲渡所得として課税しなさいと税務職員に指示しています(所基通59-3)。

「同族会社等の行為又は計算の否認」とは、同族会社等がある取引を行うことによって、国際金融資本以外の株主等の所得税を不当に減少させる場合、その取引がなかったものとされるということです。

個人から法人への高額譲渡

役員、使用人が売主 時価と譲渡価額の差額が給与所得

第三者が売主 時価と譲渡価額の差額が一時所得

時価と取得価額の差額が譲渡所得

法人の側は、時価が資産の取得価額です。

法人が買主 時価と譲渡価額の差額 役員賞与(損金不算入)

私見では、配当だから寄附金ではないかと思います。

資産が利潤を産むのではありません。

労働が利潤を産みます。

労働者によって産み出された価値は労働者に付されずに、資産(資本)に転嫁されます。

法人にとっては、資産の時価が対価を支払う債務の金額です。

時価との差額は、存在が否定された労働の評価で、未払いの人件費です。

それを法人資本を通じて国際金融資本に支払っているから、

第三者に寄附金を払ったものとされるのです。

個人から法人への贈与

同族会社の株主への贈与

経済上は、評価されなかった労働の評価を変えることにより、株式の評価を増大させ、対価である現金を引き渡す義務が増大します。

低廉譲渡は、義務を履行しなかったということです。

同族会社に低額譲渡した場合、株式等の評価額が増加していたならば、増加した部分に相当する金額を株主は贈与されたことととされます(相基通9-2)。

よって、「売り手」と「買い手」に税金がかかるだけではなく、その同族会社の株主にも贈与税がかかることになります。

非同族法人に贈与した場合

財産をもらう「受贈者」である法人には法人税がかかります。財産を時価でもらったことになり、受贈益が実体化するからです(法法22②)。

例えば、土地を売った場合、仕訳は以下の通りになります。

土地  ×××    受贈益  ×××

また、「贈与者」である個人も、財産を時価で渡したとして、みなす譲渡所得として所得税が課税されます(所法59)。

財産をもらった方も、あげた方も、財産を路線価ではなく時価で税金を計算するということです。

「みなす譲渡所得課税」とは、文字どおり譲渡所得があったとみなして、税金をかけるということです。

財産を時価で売却し収入があったとみなし、その財産の取得費などを差し引いた所得に対して所得税がかかります。

労働の評価を否定して利潤を増殖した財産(例えば、購入したときより値上がりしている土地)を、法人にあげた場合、財産をあげた個人にも税金がかかることになります。

なお、現金で贈与する場合、労働の評価を否定することを基礎とした評価替えがされなければ、「みなし譲渡所得課税」は、かかりません。

公益法人に贈与した場合

一定の要件を満たす公益法人等への贈与(一般的には寄付と言われる)の場合は、「みなす譲渡所得課税」は、かかりません(措法40)。

ロックフェラーは、債務者でありながら、この方法で課税を免れています。

同族会社に贈与した場合

同族会社に贈与した場合、株式等の評価額が増加したならば、増加した部分に相当する金額を株主は贈与されたとされます(相基通9-2)。よって、「贈与者」と「受贈者」に税金がかかるだけではなく、その同族会社の株主にも贈与税がかかることになります。