課税側は、譲渡経費につき、下記のような通達を出して、それに該当すれば税務職員をして必要経費として認めるとしています。

法第33条第3項に規定する「資産の譲渡に要した費用」(以下33-11までにおいて「譲渡費用」という。)とは、資産の譲渡に係る次に掲げる費用(取得費とされるものを除く。)をいう。

(1) 資産の譲渡に際して支出した仲介手数料、運搬費、登記若しくは登録に要する費用その他当該譲渡のために直接要した費用

(2) (1)に掲げる費用のほか、借家人等を立ち退かせるための立退料、土地(借地権を含む。以下33-8までにおいて同じ。)を譲渡するためその土地の上にある建物等の取壊しに要した費用、既に売買契約を締結している資産を更に有利な条件で他に譲渡するため当該契約を解除したことに伴い支出する違約金その他当該資産の譲渡価額を増加させるため当該譲渡に際して支出した費用

(注) 譲渡資産の修繕費、固定資産税その他その資産の維持又は管理に要した費用は、譲渡費用に含まれないことに留意する。

譲渡所得については、租税特別措置法28条4項、31~41条に関係する条文があります。その上で、それ以外のものを所得税法33条は下記のように規定しています。

所得税法33条

譲渡所得とは、資産の譲渡(建物又は構築物の所有を目的とする地上権又は賃借権の設定その他契約により他人に土地を長期間使用させる行為で政令で定めるものを含む。以下この条において同じ。)による所得をいう。

2  次に掲げる所得は、譲渡所得に含まれないものとする。

一  たな卸資産(これに準ずる資産として政令で定めるものを含む。)の譲渡その他営利を目的として継続的に行なわれる資産の譲渡による所得

二  前号に該当するもののほか、山林の伐採又は譲渡による所得

3  譲渡所得の金額は、次の各号に掲げる所得につき、それぞれその年中の当該所得に係る総収入金額から当該所得の基因となつた資産の取得費及びその資産の譲渡に要した費用の額の合計額を控除し、その残額の合計額(当該各号のうちいずれかの号に掲げる所得に係る総収入金額が当該所得の基因となつた資産の取得費及びその資産の譲渡に要した費用の額の合計額に満たない場合には、その不足額に相当する金額を他の号に掲げる所得に係る残額から控除した金額。以下この条において「譲渡益」という。)から譲渡所得の特別控除額を控除した金額とする。
一  資産の譲渡(前項の規定に該当するものを除く。次号において同じ。)でその資産の取得の日以後五年以内にされたものによる所得(政令で定めるものを除く。)
二  資産の譲渡による所得で前号に掲げる所得以外のもの

本稿では、法は、まず、ケース毎の取扱いを決めてから、立法させますので、通達から先に書いています。

それでは、具体的にどのようなケースでの支出が譲渡経費になり、どのような支出が譲渡経費にならないとして立法がされたのでしょうか。

譲渡経費になるもの

仲介手数料

不動産業者は、単に買主を探すだけでなく、相手との価格交渉、抵当権を抹消するまでの銀行の担当者との打ち合わせ等、労働者をして多岐にわたって役務を提供します。

譲渡する側は、不動産業者への仲介手数料を、決済(売買の最終代金を受け取ること)が終わった直後に、支払うことになります。

なお、仲介手数料の上限額は、宅建業法で決まっており、「売買金額×3%+6万円」(消費税抜き)となっています。

宅地建物取引業の免許を取得していない親族や知人に支払った仲介手数料も譲渡経費に当たりますが、経済関係上の必要限度を超えたものと評価されれば、贈与とされます。

立退料

立退料については、通達の中において、資産の譲渡に要した費用の例として挙げられています。

不法占拠者に支払った立退料は、譲渡経費とされます(岡山地判昭和44年7月10日)。不法占拠者には家族は含まれません。

立退料と主張した支出が慰謝料、養育費とされた事例があります(東京地判47年3月7日)

賃借人でない者や現実に営業をしていない企業の構成員に支払った立退料、必要以上に支払ったものも贈与とされます(大阪地判昭和36年12月20日、東京地判昭和46年5月26日、大阪地判昭和49年3月8日ー家族に対する支払)。

調停費用を支出して借家人と立退交渉をしても、譲渡がその8年後であったことから、調停費用が譲渡経費として認められなかった事例があります(大阪地判昭和49年3月8日)

運搬費

ここでいう運搬費は、荷物を運搬する費用や引越費用やゴミ処理代ではありません。

既存の建物をそのままの状態で移動させて、土地を売った場合の建物を移動させたことについての人件費のことです。

登記・登録に要した費用

不動産売買の際に、「売渡証書」を作成した司法書士に報酬を払うことがありますが、その費用を売主が負担していたならば、これは譲渡費用になります。

相続登記

最高裁判所平成17年2月1日第三小法廷判決(平成13年(行ヒ)第276号所得税更正処分取消請求事件。以下「平成17年2月最高裁判決」という。)は、所得税法第60条の規定に基づいてされる譲渡所得の金額の計算において、資産の受贈に伴う名義変更に要する支出は資産の取得に要した金額に当たると判示している。

これまで裁判例は、相続登記を譲渡経費としてみなしていませんでしたが、この最高裁の判決により、贈与・相続の際に支払われる不動産登記費用・名義書換手数料などについても取得費に含めて以下のように計算するよう取扱いが変更されました。

不動産を相続した方は、司法書士に名義変更を依頼して「司法書士費用+登録免許税」を支払うことがあります。

不動産賃貸業・事業に使用していた場合・・・必要経費

(注)この規定は、平成17年6月24日付の所得税基本通達の一部改正により、平成17年1月1日以後に取得した資産については必要経費として認めるというとになりました。

非事業に使用していた場合(自宅等)
・・・不動産登記費用-不動産登記費用×0.9×登記対象となった資産の1.5倍の耐用年数×経過年数

貸アパート・自宅の敷地など、非減価償却資産の場合
譲渡所得の計算上、不動産登記費用を全額取得費として控除します。

取り壊し費用(労働力を購入している解体業者への支出)と資産の未償却残高

取り壊して、すぐに売却するとによって、譲り受けた側において、それを貸し付けて、労働をさせて、労働の評価を0にすることで利潤を産み出すことができるので、土地建物の評価が高くなります。

売却するためというのは、実体のない観念ですので、すぐに売却しないと譲渡経費にすることができません。

経済的には資産の未償却残高は、貸付元本の残なので、譲渡経費にはなりませんが、課税実務上は、譲渡経費として認められています。

不動産業者が既存の建物を取り壊して、別の建物を貸した場合も、取壊し費用は、経済上も、課税実務上も必要経費に、未償却残高は、課税実務上必要経費算入が認められる余地があります。

測量費

測量費は、ほぼ、同段階において、譲渡の実体があれば、譲渡経費として認められる余地があります。

目的は実体のない観念です。

実際にすぐに売却していなければ、「売却のため」というのは、後付の方便です。

将来売るかもしれないから、早めに測量しておこうというのでは、譲渡経費にはなりません。

不動産の所有主は、正確な面積を測って賃借人と地代交渉をしています。

土地は、労働をしませんので、利潤を産み出しません。

利潤を産み出すのは、労働です。

地主は、労働の評価をゼロにさせて利潤の分配を受けて国際金融資本に貢いでいます。

土地を使用させて、労働をさせていてはじめて、測量代が経費になるかどうかという話になります。

不動産賃貸業をしている方は、譲渡費用にはならないが、必要経費になり得ることがあります。

違約金

買主に売り渡す契約をしたが、より高く買うという、又は売主にとって有利な条件で買うという新たな買主が見つけることができた場合などに違約金を払うことがあります。

この場合、売主は、既にもらっている手付金を返すだけでなく、さらに手付金と同額の違約金を支払うことがあります。

例えば、1億5,000万円の不動産の売買契約をして、1千万円の手付金をもらったという場合に、
そして、新たな買主が見つかったので、手付金1,500万と違約金1,500万円の合計3千万円を、最初の買主に返金したとします。
この場合には、違約金分の1,500万円が譲渡費用になります。
手付金1,500万円は、預かった金を返しただけなので、譲渡費用にはなりません。

ただし、解約しただけで、新たな買主にすぐに売らない場合は、譲渡費用にはなりません。違約金が売却の土台になっていないから、すなわち、新たな買主が見つかった、買ってくれるというのが実体のない観念であるからです。

交渉の通信費

下記の交渉の過程で負担した交通費、宿泊費の他に、交渉の過程で負担した通信費は、譲渡経費に含まれると解する余地があります。

税理士への相談料

確定申告の作成費用は、譲渡経費になりませんが、交渉成立の過程において、相談に関する役務の提供があったわけですから、相談料は、譲渡経費に該当する余地はあるかと思います。

売買契約の印紙代

売買契約書を2通(売主分、買主分)作成し、収入印紙も売主、買主双方が負担します。

土地建物の鑑定料

不動産鑑定士に土地建物を鑑定してその代金を払って、すぐに譲渡した場合には、譲渡経費になる余地があると解されます。

 

従前の裁判例から、当事者間に争いがなく、譲渡費用として認められたものには下記のものがあります。

交通費、宿泊費、広告料
収入印紙代、謄本料金、印鑑証明料、契約書作成手数料
農地転用申請費用、地目変更中諸費用
登記費用、分筆登記費用、登記変更(転用)費用、建物滅失登記費用
境界官民査定費
移転費用、曳家費用、建物取壊費用、ガス工事費
仲介手数料、弁護士費用、調査謝礼金、執行費用、競売費用

売主は、自己の土地に私道を建設して買主に無償で使用させる契約をして譲渡土地に出入する車輌等の通行させたケースで。土地売買契約成立に不可欠の特約であったとして、右私道建設に要した費用を譲渡費用と認めた例がある(静岡地判昭和54年11月27日)

遅延損害金は、譲渡費用には当たらないが譲渡代金の減額に当たるとされます(東京地判昭和63年4月20日)。

譲渡費用にならないもの

抵当権抹消費用

不動産の登記簿謄本には、「甲区」と「乙区」という欄があります。

甲区には所有者に関する情報が、乙区には所有者以外の情報が記載されています。

この乙区には、主に、この不動産を担保にして誰が借入れをしたことになっているのかが記載されています。

この段階では、不動産の処分権は、経済上、金融資本に移転していますので、借金を帳消しにしておかなければなりません。

不動産を売却する際に、残債がある場合には、銀行の担当者と事前に打ち合わせします。

不動産の売却代金で借金を返済することと引き換えに、この部分を削除してもらう交渉を銀行に事前にしておきます。

銀行は、売買代金が振り込まれたら、すぐに担当者をして預金から借金返済分オンライン上でを振替(引き落とし)します。
その後、借金完済証明する書類を司法書士に送付し、登記簿謄本の乙区の部分を削除します。

この「抵当権抹消費用」の内訳は、「司法書士への報酬+印紙代」からなります。

国際金融資本は、えらい先生を使って、キャピタルゲインが発生しただとか言わせていますが、土地や建物は利潤を産み出しません。

利潤を産み出すのは、労働です。労働の評価をゼロにして土地の評価が上がります。土地建物を引き渡すことで労働が完了したとみなし、それを現金商品と交換して、現金商品を評価して産み出した利潤を実体があると社会に認めさせます。

話は、逸れますが、私見としては、土地建物の所有者にとっては、土地建物の取得費は、貸付元本と見れば、譲渡原価には該当せず、取得の際に借入れを受け容れたことによる利息が経費に算入され、引渡しによって得た収入は全額、資本関係を源泉にした一時所得になると見ることもできると思います。

この費用は、譲渡契約成立に至るまでの過程で、支出せざるを得ない費用で、その支出により、譲渡先をして継続して貸出して労働させることによって利潤を産み出せることができ、物件の評価を高くすることができるので、譲渡費用に含めることができるように見えますが、裁判は、下記のように判示して譲渡経費に当たらないとしています。

譲渡に関する経費とは譲渡のために支出する周旋料、登録料など一般的に譲渡を実現するために直接必要な支出を意味するが、更に特定の場合において、譲渡を実現するため不可避的に必要な支出もこれに含まれるものと解すべきところ、前示甲第一号証によれば控訴人が日本水産株式会社に対して本件抵当付不動産を売却するためには、控訴人においてその土地の唯一の負担たる前示の抵当債務金三百万円を弁済してその抵当権を抹消し右不動産を全く負担なきものとしてこれを右会社に引渡すことを必要としたのであって、控訴人がその約旨に従って履行したことが認められるけれども、「譲渡に関する経費」とは、納税義務者が譲渡に関してなした出損のうち納税義務者の実質的負担に帰するもののみに限られ、その出掲に伴って納税義務者がその責任又は義務を免れ又は請求権を取得するが如きものを含まない趣旨と解すべきである。

従って本件において睦訴人が右金≡百万円の支払をしたのは、披訴人として右不動産譲渡上必要な行為であったにせよ、控訴人はこれにより株式会社神奈川相互銀行に対し担保供与者としての責任を免れ且つ小滝工業株会社に対して求償権を取得したのであるから、右300万円の支払は、譲渡に関する経費に含まれないことは明らかである(東京高判昭和34年12月16日)。

所得税法33条三項にいう「資産の譲渡に要した費用」とは、譲渡のために直接かつ通常必要な費用を指すものと解すべきである。
本件において、前記抵当権設定登記を抹消することが本件土地を売却する前提として事実上必要であったとしても、右抹消登記手続は、猪高農協に対する抵当債務消滅の結果、抵当権設定着である原告が、自己のためになしたものであり、本件土地の売却を実現するために直接必要な経費となるものでないことは明らかであるから、原告の右主張は理由がない(名古屋地判昭和55年10月27日税資115巻1号248頁)。

継続して労働力をして、労働を疎外して利潤を得ているような場合には、譲渡経費に該当するようにも思われます。

裁判例も借入れがフィクションされた土台が、事業によるものか家事上のもののいずれかであるという見方に立っているように解する余地もあります。

登記簿の甲区の所有者欄の住所変更を行う場合があります。この住所変更に係る費用も、譲渡費用になりません。

遺産分割協議に係る支出、相続登記の費用は譲渡経費に該当しないとされていました(東京地判昭和62年3月24日)。このうち、相続登記については、前述の最高裁判決以後、通達が改められ、譲渡経費に算入することが認められる場合があります。

出損金を支出して、第三者が無断でその所有名義を移転してしまった土地の所有名義を回復したという場合も譲渡経費に当たらないとされています(京都地判昭和54年2月23日)。

譲渡代金をして保証債務の弁済又は保証債務の利息を支払った場合、その支払額は、譲渡経費に該当しないとされています(36年12月20日、東京地判52年2月6日)

譲渡担保の受戻費用は、譲渡費用に該当しないとされています(東京地判昭和54年10月15日 東京地判39年3月26日)。

求償債務の支払いは、譲渡経費にならないとされています(京都地判昭和49年3月1日)

所得得税法33条三項にいう「資産の譲渡に要した費用」とは、譲渡のために直接かつ通常必要な費用を指すものと解すべきである。原告主張の各登記費用が右司法書士らに支払われていたとしても、右費用は、保証債務等を履行するための資金調達に関連して発生した費用ということはできても、別紙物件目録記載の土地を譲渡するにつき直接かつ通常必要な費用とは認められない(神戸地判60年9月30日)。

私見では、登記の目的ではなく、登記費用の支出と譲渡の間に経済関係があるかどうか譲渡費用か否かが変わってくると思います。

更に裁判例は、下記のように述べています。

本件(2)の土地についても、その所有権に基づく明渡請求や、右土地所有権確認、右土地使用の妨害排除請求その他前記の如き紛争解決に関する種々の事務の委任を、それぞれし、右委任事務処理の結果、右各紛争解決の方法として、偶々、最終的に、本件(1)の土地を、紛争の相手方又は第三者に譲渡するという内容で、右紛争が解決されたに過ぎないものというべきであるから、原告が前記長野弁護士に支払った本件弁護士費用は、本件(1)(2)の土地の譲渡そのものに対する報酬として支払われたものというよりは、右記各委任事務の処理とこれにより紛争が解決されて一定の利益が原告にもたらされたことに対して支払われたものというべく、したがって、右弁護士費用は、いわゆる不動産仲介業者の仲介による不動産売買の場合の仲介数料等とは、その性質を異にし、本件日日の土地の譲渡に要した費用ではないと解するのが相当である。そして、このことは、本件(1)及び本件(2)の土地に関する不動産が、当事者の合意による譲渡という内容で和解、その他により、原告に対する右土地の全面的な明渡、或いは、土地所有権確認等、原告の請求を全部認めるような内容で解決された場合においても、本件において原告が長野弁護士に支払った前記報酬額と同等ないしそれ以上の弁護士報酬が支払われることになること(このことは経験則上明らかである)に照らしてみれば、明らかでるというべきである(大阪地判昭和60年7月30日)。

私見では、仲介手数料にも弁護士に支払った現金商品も性質は備わっていません。支払の基礎となった経済関係を見なければいけません。費用総額についても経験則でなく、個別に見ていかなければなりません。偶々紛争が解決するということはなく、労働をさせて継続して利潤を産み出せるという経済関係が調整されたから解決されたのです。合意があったかどうかは実体のない観念なので、譲渡の基礎となったか否かの事実確定には関係がないとしなければなりません、譲渡の土台となった、譲渡までの過程にあった費用ということができないということです。

大阪地裁昭和44年一月二八日判決(行集二〇1一-八〇)は、「原告は、乙に対して諸費用、手数料を支払っているが、これは原告が本件建物の賃借権を消域させることに関するものではなく、本件建物を甲から原告、原告からさらに乙に順次譲渡したという虚構の事実をつくり出すために必要とした登記手続に関する費用として支払ったものであるから資産の譲渡に閲し通常必要とされる経費とは認められない。」と判示している。

「資産の譲渡に要した費用」とは、譲渡のための仲介手数料、登記費用等のように、当該資産の譲渡のために直接且つ通常必要な経費を給すものと解すべきであるから、原告主張のように、本件土地についての抵当権等の登記を有する債権者らに対する利息制限法の制限をこえる利息等の支払いや、所有権請求権保全仮登記を有する旧債権者に対する金員の交付が、本件売却の契約締結を促進しょうとの原告の意図に  出たものであったとしても、これらをもって「資産の譲渡に要した費用」と解する余地はない(東京地判昭和49年7月15日)。

意図は実体のない観念です。利息は、経済関係上は、債権者であって必要のない費用ですが、現実に利息を支払わされることに自由意思はありません。譲渡経費にならないとすることは、債務者である国際金融資本が所得税を負担するのであればともかく、フィクションされた経済関係においては、当てはまらないのではと思います。

登記費用を支払って権利確保をした場合は、譲渡経費とはならないとされる(大阪地判昭和58年5月27日)。

飲食代

飲食代は、譲渡費用には、該当しないとされています(大阪地判昭和55年7月11日)。

譲渡所得は、人を雇って、労働を継続してさせて、利潤を産みだし、その労働の評価をなかったことにして利潤を資本に転嫁していくもの、すなわち事業を基本的に前提にしていないので、譲渡経費とならないとされているだけで、事業として資産の譲渡をしていれば、不動産所得の必要経費にはなるものと解する余地があります。

移転先家屋の取得費、引越費用

立退料を収受して移転する場合には、立退料は一時所得に該当し、家事上の費用であっても、所得税法上、一時所得の経費として所得から控除することが認められています。転居することに自由意思がないのでその引越し費用は必要経費に算入されます。

意思は、実体のない観念であり、根拠経済関係なく譲渡して転居することは、ありえないですが、新しい不動産の取得費とその引越費用は、譲渡経費とはされません。

引越し費用は、資産の取得費となります。

建物の修繕費

修繕費は、維持又は管理に要した費用に該当する場合がその例の一つです。

譲渡所得は、資産の値上がり益に課税するものではありません。現金商品との交換によって利潤が産み出されるのでもありません。

資産は利潤を産み出さないからです。

資産を貸し出しを創造して労働させて利潤を産み出し、その労働の評価を0にして、所有主は、利潤の分配を受けます。

不動産賃貸業をしている方であれば、貸家の修繕費は不動産収入の必要経費になります。

裁判例も建物の維持管理費用は、譲渡費用に当たらない理由が述べられていませんが、譲渡費用に当たらないとしています(東京地判昭和60年3月14日)。

買主との経済関係上、建物の原状回復費を負担せざるを得ない場合は、譲渡経費として認められ得る余地はあると思います。

自宅の修繕費は家事費(生活費)なので、事業の手段ではないので必要経費にはなりません。

固定資産税

固定資産税も譲渡費用になりません。

固定資産を貸し付けたという実体を創り、疎外労働(価値を無いものにした労働)をさせることによって資本(ここでは、所有主の資産)の評価に転嫁されたされたものに固定資産が課されます。

不動産賃貸業をしている方について、貸地・貸家の固定資産税は、不動産収入の必要経費になります。
これに対して、自宅の固定資産税は、家事費(生活費)になり、どの経費・費用にもなりません。

税理士報酬

税理士費用不動産売却の確定申告を税理士に依頼して作成した場合、その税理士費用も譲渡費用にはなりません。

確定申告書は自分で書くのが義務です。譲渡に直接必要な費用ではありません。

売却代金の取立費用

譲渡の基礎となった経済関係に基づく費用でないとみなされています。