フリーランスを開始した場合、会社組織を採用しなければ、登記は要りません。

あなたが、フリーランスとして活動した場合、開業から1ヵ月以内に「個人事業の開業・廃業等届出書」(以下、開業届という)を提出しなければならないとされています。

開業届を提出しなくても、提出期限に遅れても、事実上は、罰則は適用されることはありません。開業届が出されても、課税側は、収入がなければ課税できませんし、申告義務に該当する収入があれば、確定申告を提出させて課税することにより開業していることがわかるからです。

現実の実務では、所得税の確定申告書と一緒に提出すれば、差し支えはないでしょう。

税理士にフリーランスをやる予定やプランを話すと、税理士先生は、金がもうかるので、善は急げと称して「開業届は?」、「今申請を出せば、来年分の申告から青色申告できますよ」とせっついてきます。

フリーランスの経済関係によっては、青色申告承認申請は、必ず出しておかなければならないものとまでは思いませんが、ここでは、青色申告のメリットとされていること云々については書きません。新規開業の場合には、青色承認申請は、実際に労働を始めてからで間に合います(開業した日の2ヵ月以内)。空想の段階では一呼吸置いて、税理士にストップをかけましょう。

開業したのは、いつだろうか

法人税法上も、商法上も開業の日はいつかは規定されていません。課税側は、職員をして「いつでもいいよ」と言ってきます。

労働は生計手段です。フリーランスは、自分の肉体を使用し労働をして利潤を上げることを余儀なくされます。

現金商品を投下した段階では、現金商品は、労働をしませんから、利潤を産みません。

パソコンなどの生産手段は労働をしません。それら稼動するのは、労働力である人間の肉体である。それらを稼動させて労働力が労働をしますので、パソコンを購入しただけでは、利潤を産みません。

パソコンを試運転して、”社会と関係を構築して労働した”段階でフリーランスを始めたということができます。

開業に「日」を付すのであれば、経済上は、生産手段を試運転した段階に付すことになります。

何ら実際の経済関係上の土台に基づかずに、「開業の日」を記載してしまうと、あなたは、あなた自身に経済上、不利益を産み出すでしょう。

開業届を提出したことにより、どのような実体関係がフィクションされてしまうのか

独身小梨のフリーランスは、開業届を出したことによりどのような実体関係が産み出されていくのだろうか。

1. 会社員を退職しないうちに開業届を出した場合

会社員兼「個人事業主」になります。

個人事業主に該当するので、のちに会社員の仕事を辞めても、「失業したままではない」とみなされ、失業保険はもらえないことがあり得ます。
2. 会社員を辞めてから開業届を出した場合

(1)失業認定の手続をする前に提出

「個人事業主」に該当し、失業が継続していないと解されますので、失業認定の手続きをしても、失業保険を受給できないことがあり得ます。

(2)失業認定の手続きした後に提出

「個人事業主」に該当し。”失業の状態”ではありませんので、ハローワークに開業したことを伝えざるを得ません。

この場合、開業の前日までの失業認定を受けた日数分の失業保険が受けられます。

開業の決意は、実体がありませんので、開業の準備を始めた段階で、失業したままではないとみなされます。

失業給付が受けられない。

ハローワークインターネットサービスは、失業について、下記のようにいいます。

雇用保険の被保険者が離職して、次の1及び2のいずれにもあてはまるときは一般被保険者については基本手当が支給されます。

ハローワークに来所し、求職の申込みを行い、就職しようとする積極的な意思があり、いつでも就職できる能力があるにもかかわらず、本人やハローワークの努力によっても、職業に就くことができない「失業の状態」にあること。
したがって、次のような状態にあるときは、基本手当を受けることができません。

病気やけがのため、すぐには就職できないとき
妊娠・出産・育児のため、すぐには就職できないとき
定年などで退職して、しばらく休養しようと思っているとき
結婚などにより家事に専念し、すぐに就職することができないとき

「就職しようとする積極的な意思」というのは、実体のない観念です。いつでも就職できる状態は、すなわち労働をしていないということです。労働をしていない者が就職活動の実績があるにもかかわらず、職業に就くことができないままそれが継続しているということになります。

就職しようとする積極的な意思がないかどうかは、実体がありません。他人にはわかりません。事業を興したかどうかは、第三者は、一件一件、現場を見て調べない限りは、わかりません。開業届の提出をもって、そこに記載された日付に、フィクションした事業が実体化されます。すなわち、経済上の権利義務が産み出されるということです。現実には、労働していなくても、労働の実体があるとみなされてしまいます。

ハローワークのいう「開業を決意した日」は、実体がない観念ですから、「決意した日」を答えてしまうと、労働を開始していないにもかかわらず、失業手当の受給資格が失われます。

再就職手当は、基本手当の受給資格がある方が安定した職業に就いた場合(雇用保険の被保険者となる場合や、事業主となって、雇用保険の被保険者を雇用する場合など)に基本手当の支給残日数(就職日の前日までの失業の認定を受けた後の残りの日数)が所定給付日数の3分の1以上あり、一定の要件に該当する場合に支給されます。支給額は、所定給付日数の支給残日数×給付率×基本手当日額((注意1) 一定の上限あり)となります。

給付率については以下のとおりとなります。

基本手当の支給残日数が所定給付日数の3分の2以上の方は、所定給付日数の支給残日数×60%×基本手当日額((注意1)一定の上限あり)。

基本手当の支給残日数が所定給付日数の3分の1以上の方は、所定給付日数の支給残日数×50%×基本手当日額((注意1)一定の上限あり)。

1年以上働くことが確実とあるが、これは、実体がないので、実際の働いているか後日確認される。

失業手当は、勤務先が破産、清算した場合や解雇された場合ではなく、自分の経済関係に応じて退職すると、待機7日の後に給付制限が3ヶ月もあるから、待ってる間に提出してしまった人は、もらえなくなります。

現実に、労働をして開業準備をした段階に日付を付して提出しないと経済上の不利益を産み出してしまいます。

開業届の提出によってバレること

所得税の確定申告書、給与支払報告書、失業給付のそれぞれに紐つけがされるので、就職したことはバレるでしょう。フリーランスは、所得税法上、事業所得又は雑所得に該当するので、開業届を出していない場合、支払調書が税務署に提出されていれば、収入があったことはわかってしまいますが、開業した日まではバレません。しかし、あなたに税務調査が入ればわかってしまいます。

実務上は、最初の労働が完成して、値段が決まって収入が固まったときにはその旨を伝えざるを得ないと解されるでしょう。

ハローワークインターネットサービスは、下記の場合に失業手当の不正受給に該当するとします。

実際には行っていない求職活動を、「失業認定申告書」に実績として記すなど偽りの申告を行った場合

就職や就労(パートタイマー、アルバイト、派遣就業、試用期間、研修期間、日雇などを含む。) したにもかかわらず、「失業認定申告書」にその事実を記さず、偽りの申告を行った場合

自営や請負により事業を始めているにもかかわらず、「失業認定申告書」にその事実を記さず、 偽りの申告を行った場合

内職や手伝いをした事実及びその収入を「失業認定申告書」に記さず、 偽りの申告を行った場合

会社の役員に就任(名義だけの場合も含む。)しているにもかかわらず、「失業認定申告書」 に記さず、偽りの申告を行った場合

定年後、「積極的に就職しようとする気持ち」や「いつでも就職できる能力(身体的・環境的)」 がなく、しばらく失業給付を受け、受給終了直後に年金を受給しようと考えている者が、「失業認定申告書」により偽りの申告を行った場合

こういった不正行為が行われた場合、その不正行為があった日以降の日について、基本手当等が一切支給されず、不正に受給した基本手当等の相当額(不正受給金額)の返還が命ぜられます。さらに、返還が命ぜられた不正受給金額とは別に、直接不正の行為により支給を受けた額の2倍に相当する額以下の金額の納付が命ぜられることとなります。

職業欄等の記載によっては、事業税が課税されます。
開業届の「職業欄」「事業の概要」に現実にしていない労働を記載していまうと、申告書の所得金額次第(290万超)では、事業税が課されてしまいます。

将来の予定や目標や目的では、実体がありません。空想の世界です。

実体がないのに、課税だけされてしまいます。

そんなバカらしいことはありません。

「職業欄」、「事業の概要」には、前年末の際の現在進行形の労働を職業に記載しなければなりません。

開業届は、現実に労働をしてから、実際にしたことを書くことです。

因みに、事業税が課せられる職業は下記のとおりです。

地方税法72条のニ第3項

個人の行う事業に対する事業税は、個人の行う第1種事業、第2種事業及び第3種事業に対し、所得を課税標準として事務所又は事務所所在地の都道府県において、その個人に課する。

地方税法72条のニ第7項

事務所又は事務所を設けないで行う第一種事業、第二種事業及び第三種事業事業については、その事業については、その事業を行う者の住所又は居所のうちその事業と最も関係の深いものをもって、その事務所又は事業所とみなして、事業税を課する。

地方税72条のニ第8項

第三項の「第一種事業」とは、次に掲げるものをいう。

第1種事業

物品販売業(動植物その他普通に物品といわないものの販売業を含む。)

保険業

金銭貸付業

物品貸付業(動植物その他普通に物品といわないものの貸付業を含む。)

不動産貸付業

製造業(物品の加工修理業を含む)

電気供給業

土石採取業

電気通信事業(放送事業を含む。)

運送業

運送取扱業

船舶ていけい場業

倉庫業(物品の寄託を受け、これを保管する業を含む。)

駐車場業

請負業

印刷業

出版業

写真業

席貸業

旅館業

料理店業

飲食店業

周旋業

代理業

仲立業

問屋業

両替業

公衆浴場業(第十項第20号に掲げるものを除く。)

演芸興業業

遊技場業

遊覧所業

前各号に掲げる事業に類する事業で政令で定めるもの

地方税法72条のニ第9項

第三項の「第二種事業」とは、次に掲げるもので政令で定める主として自家労力を用いて行うもの以外もものをいう。

畜産業(農業に付随して行うものを除く。)

水産業(小規模な水産動植物の採捕の事業として政令で定めるものを除く。)

前各号に掲げる事業に類する事業で政令で定めるもの(農業を除く。)

地方税法72条の二第10項

第三項の「第三種事業」は、次に掲げるものをいう。

医業

歯科医師業

薬剤士業

あん摩、マッサージ又は指圧、はり、きゅう、柔道整復その他の医業に類する事業(両眼の視力を喪失した者その他これに類する政令で定める視力障害がある者は行うものを除く。)

獣医業

装蹄師業

弁護士業

司法書士業

行政書士業

公証人業

弁理師業

税理士業

公認会計士業

計理士業

社会保険労務士業

コンサルタント業

設計監督者業

不動産鑑定業

デザイン業

諸芸師匠業

理容業

美容業

クリーニング業

公衆浴場業(政令で定める公衆浴場業を除く。)

前各号に掲げる事業に類する事業で政令で定めるもの