[事実関係]

徳島県鳴門市里浦地区の住民は、十二神社及び人丸神社改築奉賛会を設立し、氏子などから寄付を募り、両神社の改築を完成した。立岩地区の住民は、八幡神社御造営奉賛会を設立し、八幡神社及び恵比須神社の改築を完成させた。

医薬品の製造販売、清涼飲料、栄養保存食品の製造販売を業とする大塚製薬工場は、大塚製薬工場は、十二神社人丸神社改築奉賛会に合計5,000万円の、立岩八幡神社御造営奉賛会に合計1億円の各寄付金を支出した。

裁判所は、

「八幡神社の総代らが大塚製薬工場の役員Bを訪ね、八幡神社と恵比須神社の改築の寄付を要請したところ、同役員は1億円の寄付を承諾した。

大塚製薬工場においては、取締役会において立岩八幡神社御造営奉賛会への寄付に係る承認決議がされ、

これに基づいて立岩八幡神社造営奉賛会に対し、社主部門の寄付として小切手で支払われた。立岩八幡神社御造営奉賛会は、これらの寄付を受けるに当たり、3通の領収書の宛名欄に法人名を記載したが、趣意書や落成奉祝祭御案内の書類には当該役員から多額の寄付をもらった旨記載し、寄付取扱件数金額集計表には「B100,000,000」と記載されていた。これら境内には八幡神社恵比須神社改築記念寄付者芳名碑が建てられたが、そこには100,000,000Bと刻まれた。

立岩八幡神社奉賛会は、落成奉祝祭において、Bに対し、神社本庁総理徳川宗敬の感謝状及び八幡神社奉賛会会長と宮司連名の感謝状を贈呈した。本件寄付の主体は法人ではなく、B個人であると認めるのが相当である。もっとも、本件寄付金が大塚製薬工場により出捐されていることは前示のとおりであるが、寄付の主体と寄付金の出捐者が異なることは本件のように寄付金が多額にわたるときは往々にしてありうることであるから、格別異にするとは当たらない。

Bらは、大塚製薬工場の取締役会において本件寄付に係る承認決議がされ、これに基づいて本件寄付金が支出されていることをもって、本件寄付の主体が大塚製薬工場であることの根拠としているが、前認定のとおり、本件寄付金はBが取締役会の決議を経ることなくこれを決定しているのであるから、大塚製薬工場の取締役会のした承認決議は寄付を出捐することについての承認決議とみるのが相当であり、これをもって、本件寄付の主体が大塚製薬工場であるとみることはできない。

また、本件寄付の領収証の宛名が大塚製薬工場とされていることは前認定のとおりであるけれども、その余の受入手続が全てB個人としてされていることに鑑みれば、そのような記載は、寄付金の出捐者が大塚製薬工場であることによるものというべきであり、これをもって各奉賛会が本件寄付の主体を大塚製薬工場と考えていたとみることはできない。

また、Bらは、起工式や落成式に大塚製薬工場の役員が出席していることをもって、本件寄付のの出捐者が大塚製薬工場であることの根拠としているが、これについても、寄付金の出捐者が大塚製薬工業であることによるものというべきであるから、これをもって各奉賛会が本件寄付の主体を大塚製薬工場とかんがえていたとみることはできない」とした(徳島地判平成5年7月16日)。

[解説]

法人が支出した現金には、予め価値属性が備わっていない。効用を期待して支出したというのでは、土台となる経済実体、支出をせざるを得なかったという義務が存在しないし、現金商品と現金商品、現金商品と生産手段との交換が余儀なくされていなかったとしても、生産手段を貸与して労働を疎外することをしなければ、現金留保を蓄積できない。

法人が当該支出をするという土台となる経済実体がなく、生産手段の貸与を通じた労働の疎外が行われていないとすれば、資本を所有する役員は、役員は使用人との生産関係を有しないし、生活の土台となる現金留保義務から資本家が拠出した法人の金を使用することができないから、資本関係から資本家の工作費を含む生活費を法人名義で支出させ、負担を労働者に転嫁すなわち労働の再疎外をしたのであって、当該支出は配当ということになる。

商法上の法人も所得税法上の法人も、金融資本家との資本関係から実体あるものと社会に認めさせられている。現金は所有主を持たないから、贈与、支出を規定するのは意思ではなく、資本関係、生産関係、経済関係である。人が主体ではない。宗教法人は国際金融資本家が所有する持株法人であることもあれば、国際金融資本家の工作員たる坊主であることもある。

宗教施設名義建物の建設改修には金がかかるから、国際金融資本家は投融資をして、投融資先の労働を疎外して利子配当を得ることができる。寄付金名義の現金は、生産手段を貸与し労働を疎外し現金留保の経済過程の源泉となる支出ではなく、国際金融資本家への利払い配当払いである。