[事実関係]

借地権の対価として支払う立退料の額は、その土地の返還時における更地の時価にその土地の借地権割合を乗じて算出され金額であるとする裁判例があるが、評価基準とされ課税基準とはされていない(横浜地判昭和59年4月18日)。

[解説]

土地の貸主が土地の借主を立ち退きさせた場合、造作の取壊費用、引越代、営業損失につき、土地の貸主が現金を支払って、それに充てた事実があれば、必要経費することを、金融資本家は、生産関係に基づいて認めさせている(法基通13-1-15(注)。

所得税法上の事業者においても、損害賠償の土台となった経済関係が同じであるから、立退料は、譲渡の場合以外は不動産所得の必要経費となり、既に土地建物の所有者である者が土地の使用者に立退料を支払って既存の建物を建て直した場合の立退料は損金であるが、土地建物の所有者でない者が、立退料を払って、土地賃借権付きの建物を取得して、一年以内に建物を取り壊して立て直すなど更地を使用した場合には土地、建物の取得価額とされることは経済関係成立の過程が異なる。

借主の経済関係、借主と金融資本家との間の現金留保義務による立退で代替建物を提供を受けているといった経済関係があれば、必要経費の一部又は全部が否認されることがある。

建物だけを借りている場合には、経済関係上、経済実体上、借地権は成立しえないが、貸主の経済関係、現金留保義務に基づいて借主の経済関係を疎外して、退去させるのであるから、生産手段の貸与と借主の剰余利益の移転いう生産関係から、退去による生産による留保所得の増殖が現実に行いえなくなること、造作の移転、引越しの余儀なくされ、そのコストを要したのであるから、貸主の側にしそれによる賠償義務が生ずる。

現実には、所得税法上の事業者も、金融資本家から、金融資本家が所有する金融機関から融資を受けていて資本関係は実体があるのであるが、投資を行った資本家が存在しないことから、資本家の経済関係、現金留保義務に基づく支払いを負担したことによる配当支払の規定がない、同族法人、関係法人も株主になりえないから寄附金課税は行い得ない。

所得税法上の事業者が、その事業者本人又は同族関係者が所有する、代表者を務める同族法人に土地、建物を貸して付けていた場合で、法人の現金留保がなくなったことにより数年前から使用貸借にしていた場合、立退料の減額事由に当たり、税務上、寄附金と認定されても、所得税法上に寄附金の損金不算入の規定は存在しないのである。

立退料も相場は、差額家賃の24ヶ月分、地代の時価の1年分といった事実上の基準があるが、それに引越代、取壊費用負担額を加えて必要経費とすることができるものと思われる。