質問応答記録書。それは、税務調査における質問調書のこと。
[序章]
従来、代理人である労働者を税務職員を使用して出頭させ、質問に回答させ署名押印させて、申述書、質問顛末書、確認書、聴取書の属性が付されてきたが、現在は「質問応答記録書」という属性が付されて、このような事実上の制度が残存している。
国債の返済負担を課すことを代理させられている税務行政庁は、行政機関内部の通達として下記のような文書をフィクションしている(法令通達の朱記部分は筆者による)。
質問応答記録書の作成の手引きについて(情報)
(国税庁課税総括課情報3号 平成25年6月26日)
はじめに
質問応答記録書は、調査関係事務において<font color=”#FF0000″>必要がある場合に、</font>質問検査等の一環として調査担当者が納税義務者等に対し質問し、それに対する回答を受けた事項のうち、課税要件の充足性を確認する上で重要と認められる事項について、その事実関係の正確性を期するため、その要旨を調査担当者と納税義務者等の質問応答形式で作成するものである。
事案によっては、<font color=”#FF0000″>課税処分</font>のみならず、これに関わる不服申立て等においても証拠資料として用いられる場合もあることも踏まえ、第三者(審判官や裁判官)が読んでも分かるように、必要・十分な事項を簡潔明瞭に記載する必要がある。
なお、納税義務者等から回答を受けた事項を記録する場合は、納税義務者等に読み上げるなどにより、その記載内容に誤りがないことを確認することになる質問応答記録を作成することが基本となるが、事実認定に当たってその他の証拠の収集・保全状況や質問応答記録書を作成する必要がないと判断された場合や、質問応答記録を作成することが困難な場合には、調査報告書に納税義務者等が回答を受けた事項等の要旨を記録することになる。
記録者が追加的な質問を促すことや補助的な質問をすることは差し支えない。
回答者から後日、訂正等の申立てがあっても、当該質問応答記録書には、訂正等を行われず、必要に応じ再度、質問調査を行って、当該質問応答記録書作成次には、記載内容のとおり回答したことを明らかにした上で、訂正、変更の主張及び変更後の回答の内容と記録した質問応答記録を新たに作成する。
質問応答記録書は、調査担当者と納税義務者等の応答内容を記載し、調査関係書類とするために調査担当者が作成した行政文書であり、納税義務者等に交付することを目的とした行政文書でないことから、調査時に写しを交付してはならない。回答者からこれらを要求されても応じられない旨を説明する。
※作成途中の質問応答記録書(署名押印前のもの等)もついても写しを交付してはならない。
上記のように規定した上で、
更に、同文書は、「質問応答記録に当たっての基本的事項」として、
1.質問の原則
回答者の申し述べを的確に聴取し、且つ、第三者がこの記載内容を理解できるようにするためには次の9項目を念頭においた具体的な質問を行うことが重要である。
また、回答者の行為について聴取する場合には、単に回答者の行為のみを聴取するのではなく、その行為に至った背景、理由、動機、及びその後の状況を記憶の正確性や事実に関する証拠(特に日付や金額等)と併せて具体的に聴取する必要がある。
2. 記載(表現)の方法
質問応答記録書の証拠力(価値)は、回答者自身が見たり聴いたり経験したことを回答者の言葉として記録するところにあるので、記載するに当たっては次のことに留意する。
イ 「問いは簡潔、答えは詳細」を基本にし、問いは短く、答えは長く記載する。
チ 誘導尋問(質問内容に質問者が期待する答えが実質的に示されており、回答者の単純に「はい」「いいえ」と迎合的に答えるような尋問)は行わない。
但し、回答者の職業、経歴等が実質的な質問に入るに先立って明らかにする必要がある場合その他特別の事情がある場合にはこの限りではない。
このように規定し、
続けて、
FAQ 問1「質問応答記録書はどのような場合に作成するのか」の回答において、
納税者の回答そのものが直接証拠となる場合、
直接証拠がないため、納税者の回答が立証の柱として更正決定すべき場合
問2「質問応答記録書の作成が必要となる場合を具体的に教えて下さい」の回答において
役員や外注先が役務提供の実体がない場合にも関わらず支払が行われている場合
相続税調査における名義預金(口座の管理実態)
のように事実認定しなければ否認できない場合に作成するとしている。
「問15 回答者が署名押印を拒否した場合どのようにすればよいのか」について
「読み上げ、提示の後、回答者から回答内容に誤りがないことを確認した上で、その旨を証することになるが、署名押印は回答者の任意で行うべきものであり、これを強要していると受け止められないよう留意する。
したがって、回答者が署名押印した場合には、署名押印欄を予定していた箇所を空欄のまま置いておき、奥書で回答者が署名押印を拒否したも旨(本人が拒否理由を述べている場合には、それも附記する)を記載し、また回答者が署名押印を拒否したものの、記載内容に誤りがないことを認めた場合には、その旨を記載する。」と回答している。
[解説]
当該通達は、それを手段に当該商品の評価が実体あるものとして社会に認めさせることができないという建前を採り、したがって、国際金融資本とその労働者の生産関係上のマニュアルでしかない。
国際金融資本の代理人である税務署長には、納税者が提出した納税申告書につき、更正を行うことができ、帳簿書類に関する調査をする労働が割り当てられている。
労働を疎外して、国際金融資本に前貸ししたところを、国際金融資本が労働力に貸付をしたことをフィクションして国債を負担させるわけであるから、
納税者からの請求がなくても、当該質問をすることに、当該物件を提出させ、必要があるとするに至った事実関係、理由(≠目的。目的は実体のない観念、恣意であるから)の説明をする義務があるということ。
国債の返済を処分により負担させる場合には、調査し、新たに事実関係をフィクションし、既成の事実関係を改定する場合、事実関係を土台とする評価を変える場合には、別途入手した資料を用いて、理由を附記して、それが実体あるものと認めさせなければならないから、納税者によって不利益となる事実関係の立証する義務は、代理人である税務署長にある。
よって、事実認定には観念が介在するから、また、法的評価についても事実関係がそれに先立って存在するから、実体のある物件の提示を要し(他の労働をしていたこと、通帳の存在)、FAQ問2のようなケースにおいても、質問に対する回答のみをもって信憑力という価値属性を付与して更正をしてはならないと解される。
当該通達は、誘導尋問を行ってはならないとするが、但し書きにおいて、「職業、経歴等で」「その他の」ではなく、「その他特別の事情」と現実に全面において誘導尋問したことを許容しているが、
納税者がその不利益になる質問について、実体ある、すなわち存在する物件を挙げて反証できなかったことをもって、直ちに不利益処分が行えるというものではないと解さなければならない。
税務職員が質問したことにつき
税務職員が提出を要求した書類につき、
それらが事業に関するものである限り、
(帳簿書類の範囲は、「係る」よりも広い。物件の範囲は、「その他」よりも狭い)
回答を拒み、提示を拒み、
虚偽の回答や虚偽の書類の提出をすることについては、
ペナルティが課せられているが(調査の開始を遅らせることは実体上認められている。)、
「わかりません」「見ていません」も回答したことに含まれる。
現実にそのような書類が存在しなければ「ありません」と答えれば
不提出や虚偽の書類の提示にはならないし、
質問された者は、当該質問に関する書類を実際に見たことがなければ、
「見ていません」と答えたことは、不答弁や虚偽の回答には当たらない。
短い問いに対して「ここにある帳簿記載のとおりです。調べて下さい」という答えでも
不答弁、虚偽の答弁には該当しない。
調べるのは調査官の労働であり、
調査官が数字を拾う手伝いという労働に応じる義務まではない。
資料の提示については、質問や提示を求められた箇所以外の部分について情報を提供する義務もない。
帳簿書類を提示することは義務付けられているが、調査確認できる状況を作り出す義務はあるが、
整理整頓をして少ない労働で帳簿書類を探し出せる状況を作るという労働をしなかったことをもって、
仮に段ボール箱に一緒くたに詰め込んであったとしても、帳簿の提示や調査を妨げたことには該当しない。
事前通知された
帳簿資料の準備に手間取り、一度に用意できなくても、
調査の進行過程で、事前通知以外の物件の提示を求められ、
資料を小出しにすることになったとしても
調査の執行を妨げたことにはならない。
物件の領置についても、それを持ち出されると労働ができない既成事実を説明することにより、国際金融資本の代理人であるから、国際金融資本が労働力に疎外労働をさせられなくなるから、物件の領置させない理由として認められる。
課税処分の実体に基づいて、更に、調査終了の際の手続(国税通則法74条の11)、74条の14において、理由附記義務が実体化されているから(国税通則法74条の14、法人税法130条2項、所得税法155条1項)、質問応答記録書に記載した内容は、更正通知書の書面自体に転記しなければならないものである。
労働力は、生まれながらに権利義務を備えていない。権利義務は、経済関係のフィクションを土台に、法律行為を手段にして、フィクションさせた経済関係を実体あるものとして社会に認めさせることにより実現する。自然人は実体のない観念である。
74条の8によって、刑事立件の要件となる調査ではないことが実体化されているから、事業に関係のない質問に答える義務もなく、事業の関係のない資料を提示したり領置させる義務もなく、質問応答記録書に署名押印する義務はない。
それでもなおかつ、立入検査するというのであれば、代理人は、令状を提示しなければならない。
質問応答記録書は、更正処分、重加算税の賦課決定処分に使用される。
一旦、質問に答えてしまえば、その後、訂正しても、当初回答したことは記録として残る。
事実関係を確定し認定する上で答えなければできないことなのか又、回答しなければならないことなのか、証明義務はどちらにあるのかを説明させ、
事実関係が曖昧な事項については、憶測で答えないこと、
署名押印が義務付けられていないのであるから、署名押印には応じないことである。
<h3>[関係条文]</h3>
国税通則法第24条
税務署長は、納税申告書の提出があった場合において、その納税申告書に記載された課税標準等又は税額等の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったとき、その他当該課税標準等又は税額が<font color=”#FF0000″>その調査したところと異なるときは、その調査により、</font>当該申告書に係る課税標準又は税額等を更正する。
国税通則法第74条の二
国税庁、国税局若しくは税務署(以下「国税局等という。)又は税関の当該職員(税関の当該職員にあっては、消費税に関する調査を行う場合に限る。)は、所得税、法人税又は消費税に関する調査について<font color=”#FF0000″>必要があるときは、</font>次の各号に掲げる調査の区分に応じ、当該各号に定める者に質問し、<font color=”#FF0000″>その者の事業に関する帳簿書類その他の物件</font>(税関の当該職員が行う調査にあっては、課税貨物(消費税法第2条第2項第11号(定義)に関する課税貨物をいう。第4号イにおいて同じ。)又はその帳簿書類その他の物件とする)を検査し、又は当該物件(その写しを含む。次条から第74条の六まで(当該職員の質問検査権において同じ。)の提示若しくは提出を求めることができる。
国税通則法 第74条の八
第74条のニから前条まで(当該職員の質問検査等)の規定による当該職員の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
国税通則法 第127条
次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
二 第74条の二、第74条の三(第2項を除く)、第74条の四(第3項を除く)、第74条の五(第1号ニ、第二号ニ、第三号ニ及び第4号ニを除く)若しくは第74条の六(当該質問検査権)の規定による当該職員の質問に対して答弁せず、若しくは偽りの答弁をし、又はこれらの規定による検査、採取、移動の禁止若しくは封かんの実施を拒み、妨げ、若しくは忌避した者
三 第74条のニから第74条の六までの規定による物件の提示又は提出の要求に対し、正当な理由がなくこれに応じず、又は偽りの記載若しくは記録をした帳簿その他の物件(その写しを含む)を提示し、若しくは提示した者
国税通則法74条の9
税務署長等は、国税庁等又は税関の当該職員に納税義務者に対し実地の調査において、74条の二から六までに規定による質問、検査又は提示若しくは提出の要求を行わせる場合には、予め、当該納税義務者に対し、その旨及び次に掲げる事項を通知するものとする。
一 調査を開始する日時
二 調査を行う場所
三 調査の目的
四 調査の対象となる税目
五 調査の対象となる期間
六 調査の対象となる帳簿書類その他の物件
七 その他調査の適正且つ円滑な実施に必要なものとして政令で定める事項
4.第1項の規定は、当該職員が、当該調査により当該調査に係る同項第3号から第6号までに掲げる事項以外について非違が疑われることとなった場合において、当該事項に関し質問検査等を行うことを妨げるものではない。
この場合において、同項の規定は、当該事項に関する質問検査等については適用しない。
国税通則法74条の7
国税庁は等又は税関の職員は、国税の調査において必要があるときは、当該調査において提出された物件を留め置くことができる。
「できる」は、それをした場合、認めるということ。
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質問検査権につき、2013年3月29日(最判昭和47年11月22日)
2013年3月30日(最判昭和48年7月10日)
理由附記につき、 2016年1月13日