[事実関係]
前代表取締役が、23年5月30日の役員改選をもって代表取締役を退任後、取締役(相談役)に就任し、月額報酬を205万から70万に減額させ、退職給与を支払い、56,096,610円を24年3月期に損金算入したところ、原処分庁を通じ賦課決定処分が行われたことにつき、国税不服審判所に審査請求を行い、分掌変更後も役員として主要な地位にあったとして棄却された事例がある(平成26年10月16日)。
敷衍すると、
請求人は、プラスティック製品の製造販売を業とする株式会社である。
請求人親会社が請求人の発行済株式の全てに出資していた。
請求人は、会社法上の取締役会設置会社である。
前代表取締役は、平成23年7月支給の賞与の査定について、新代表取締役X2は、前代表者に相談しながら行い、前代表取締役のやり方に倣って査定し、このとき、X2は、前代表からの助言のあった従業員に対する評価については、その助言のとおりに、その従業員の評価に反映させた。
代表取締役X2は、平成23年7月支給の従業員賞与の総額決定の後、前代表取締役の助言を得て念査、再計算を行い、借入額を下方修正した。
取締役は、予算を査定する際に、一定の事項について代表取締役に確認しながら行った。
前代表取締役は、平成24年4月25日までの間、複数回にわたり、請求人の主要な取引銀行の請求人の担当者と面談し、請求人の資金調達等に関し、請求人側の人員として対応していた。
請求人親会社から資金調達の要求があったとき、代表取締役X2は、前代表取締役に相談し、前代表取締役は、X2と請求人親会社との間の役割を果たした。
平成23年6月以降の取締役の報酬月額は、代表取締役が850,000円、取締役相談役が700,000円、取締役統括本部長が600,000円である。
審判所は、
「役員の分掌変更又は改選による再任等がされた場合であっても、例えば、常勤取締役が経営上、主要な地位を占めない非常勤取締役になったり、取締役の経営上主要な地位を占めない監査役になるなど、役員としての地位又は職務の内容が激変し、実質的に退職したと同様の事情にあると認められる場合には、その分掌変更又は改選による再任等に際して退職給与等として支給される金員については、法人税法上も退職給与として取り扱うのが相当であり、
本件通達は、このような点を踏まえて、どのような場合に実質的に退職したと同様の事情があると認められるかという一定のケースを示したものであって、当審判所においても相当と認められる。
そして、本件通達が具体的に定めている事情は飽く迄例示にすぎないのであるから、分掌変更又は再選の時に支給する給与を法人税法上の退職給与として損金の額に算入できるか否かについては、当該分掌変更又は再任に係る役員が法人を実質的に退職したと同様の事情にあると認められるか否かを具体的な事情に基づいて判断する必要があるというべきである。
本件分掌変更後の前代表取締役の月額報酬は、代表取締役の月額報酬と近似した額となっており、前代表取締役の職務に対する報酬が代表取締役の職務に対する報酬額と遜色のないものとなっていることからすると、前代表取締役の月額報酬が50%以上減少していることによって、直ちに前代表取締役の地位又は職務の内容が激変したことを認め得るものとはならない。
また、この時期に請求人における取締役全体の報酬水準が変更されており、前代表取締役の本件分掌変更後の報酬は、請求人における常勤取締役として相応の報酬水準であるとも評価できる。
したがって、前代表取締役に対する月額報酬が50%以上の減少となっているという事実のみをもって、本件通達の趣旨は、役員の分掌変更後の給与が、概ね50%以上減少すれば、直ちに、当該役員が退職したと同様の事情にあり、当該役員に対して、当該分掌変更時に支給された退職給与等を損金の額に算入することを認めるという定めが定めではないのであるから、本件分掌変更に係る役員が法人を退職したと同様の事情にあると認められるか否かを具体的な事情に基づいて判断する必要がある。
前代表取締役は、引き続き常勤していたこと、社長室に相当するスペース内において代表取締役の席の横に座席を設けられて常勤していた状況も併せ考慮すれば、請求人の社内に実質的な影響力を持つ地位にあったことが伺われる。
請求人における社内の稟議書の決裁について、決裁事項につき、請求人における最高決裁権者である代表取締役に対する助言者として、請求人の経営の主要な部分に関与していたことが認められる。
また、株式会社における経営上の重要な事項である人事及び財務面についても、最高責任者である代表取締役と共に関与する状況にあり、これらを考慮すれば、前代表取締役は、請求人の経営の主要部分に関与していたと認められる。
以上を踏まえれば、前代表取締役は、本件分掌変更後も請求人において、その役員として主要な地位にあったものというほかなく、本件分掌変更により前代表取締役が請求人を実質的に退職したと同様の事情があったことは認められない」とした。
[解説]
前代表者は、労働者として、国際金融資本から借入をして資金調達し、労働者に現金、生産手段の貸付をして労働を疎外して、代表取締役を使用して労働力商品への支払に価値を付していた。
紙切れは御主人様を持たないから、借入が賞与の支払のためというのは、実体のない観念であるが、当該取締役は、借入をフィクションされて、現場労働力に貸し付けて労働を疎外して利潤に転嫁させているのである。
国際金融資本と親法人資本が、当該法人の資本に現金を供与しそれを源泉に処分権を取得しているから、当該法人の資本である親法人の資本への利潤の配当ということになるであろう。国際金融資本には、利息という後付けの名目で利潤を分配している。国際金融資本は配当の中から国債返済を負担しなければならないのである。当該役員が親法人に出資していたのであれば、当該金員は、役員賞与ではなく経済上利潤の配当であり、実定法上は、法人側の経理は、寄附金、受け取った役員の側は、一時所得ということになるであろう。
当該役員が当該法人に出資していなければ、当該支給金員は、役員賞与ということになり、労働の疎外を土台として資本関係をフィクションしていることからすれば、経済関係上からすれば、法人及び給与所得に関する国債返済については、国際金融資本が負担しなければならないであろう。
判決は、前代表者が、請求人親会社に出資しているのか否かを明らかにせずに判示をしてしまっているのである。
前代表取締役が営業面での関与がなかったこと、分掌変更後の非常勤の取締役について、自然不自然という宗教に基づいて審査をしている。上記のように現実の資本関係、生産関係を見れば、営業面にも関与している。退職金支給の錯誤は、動機も錯誤も実体のない観念であるから、訴えの利益はないであろう。
[関係条文]
法基通9-2-32
法人が役員の分掌変更又は改選による再任等に際し、その役員に対し、退職給与として支給した給与として支給した給与については、その支給が、例えば、次に掲げるような事実があったことによるものであるなど、その分掌変更等によりその役員としての地位又は職務の内容が激変し、実質的に退職したと同様の事情があると認められることによるものである場合には、これを退職給与として取り扱うことができる。
(1)常勤役員が非常勤(常時勤務していない場合であっても、代表権を有する者及び代表権は有しないが、実質的にその法人の経営上主要な地位を占めていると認められる者を除く)になったこと。
(2)取締役が監査役(監査役でありながら、実質的にその法人の経営上主要な地位を占めていると認められる者及びその法人の株主等で令71条第1項5号(使用人兼務役員とされない役員)に掲げる全ての要件を満たしている場合を除く)になったこと。
(3)分掌変更後におけるその役員(その分掌変更の後においてもその法人の経営上主要な地位を占めていると認められる者を除く)の給与が激変(おおむね50%以上の減少)したこと。
(注)本文の退職給与として支給した給与には、原則として、法人が未払金等に計上した場合の当該未払金等の額は含まれない。
(法人税法第34条)
内国法人がその役員に対して支給する給与(退職給与及び第54条1項(新株予約権を対価とする費用の帰属年度の特例等)に規定する新株予約権によるもの並びにこれら以外のもので使用人としての職務を有する役員に対して支給する当該職務に対するもの並びに第3項の規定があるものを除く。以下、この項において同じ)のうち、次に掲げる給与のいずれにも該当しないものの額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。
2. 内国法人がその役員に対して支給する給与(前項又は次項の規定の適用があるものを除く。)の額のうち、不相当に高額な部分の金額として政令で定める金額は、その内国法人の各事業年度の損金の額に算入しない。
(法人税法第2条第15号)
一 法人の取締役、執行役、会計参与、理事、監事及び清算人並びにこれら以外の者で法人の経営に従事している者のうち、政令で定めるものをいう。
(法人税法施行令第7条)
法人の使用人(職制上、使用人としての地位のみを有する者に限る。次号において同じ。)以外の者でその法人の経営に従事している者
二 同族会社の使用人のうち、第71条第1項第5号のイからハまで(使用人兼務役員とされない役員)の規定中、「役員」と読み替えた場合に同号のイからハまでに掲げる要件の全てを満たしている者でその会社の経営に従事しているもの
(法人税法施行令第71条第1項第5号)
イ 当該会社の株主グループにつき、所有割合が最も大きいものから順次その順位を付し、その第一順位の株主グループ(同順位の株主グループが二以上ある場合には、その全ての株主グループ イにおいて同じ。)の所有割しを算出し、又はこれに順次第ニ順位及び第三順位の株主グループの所有割合を加算した場合において、当該役員が次に掲げる株主グループのいずれかに属していること
(1)第一順位の株主グループの所有割合が百分の五十を超える場合における当該株主グループ
(2)第一順位及び第二順位の株主グループの所有割合を合計した場合にその所有割合がはじめて百分の五十を超える場合におけるこれらの株主グループ
(3)第一位から第三順位までの株主グループの所有割合を合計した場合にその所有割合がはじめて百分の五十をときにおけるこれら株主グループ
ロ 当該役員の属する株主グループの当該会社に係る所有割合が百分の十を超えていること。
ハ 当該役員(その配偶者及びこれらの者の所有割合が百分の五十を超える場合における他の会社を含む。)の当該会社に係る所有割合が百分の五を超えていること
(法人税法第22条第3項)
3 内国法人の各事業年度の各事業年度の所得の金額の計算上、当該事業年度の損金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、次に掲げる額とする。
一 当該事業年度の収益に係る売上原価、完成工事原価その他これらに準ずる原価の額
二 前号に掲げるものの他、当該事業年度の販売費、一般管理費、その他の費用(償却費以外の費用で当該事業年度の終了の日までに債務の額の確定しないものを除く。)の額
三 当該年度の損失の額で資本等取引以外の取引に係るもの
(国税通則法第23条第1項第1号)
納税申告書を提出した者は、次の各号のいずれかに該当する場合には、当該申告書に係る国税の法定申告書に係る国税の法定申告期限から5年(第2号に掲げる場合のうち、法人税に係る場合については、9年)以内に限り、税務署長に対し、その申告に係る課税標準等又は税額等(当該課税標準等又は税額等に関し次条又は第26条(再更正)の規定による更正(以下この条において「更正」という。)があった場合には、当該更正後の課税標準等又は税額等)につき更正をすべき旨の請求をすることができる。
一 当該申告書に記載した課税標準等若しくは税額等の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったこと又は当該計算に誤りがあつたことにより、当該申告書の提出により納付すべき税額(当該税額に関し更正があった場合には、当該更正後の税額)が過大であるとき。
(法人税法施行令70条2項)
法人税法34条第2項に規定する政令で定める金額は、次に掲げる金額の合計額とする。
内国法人が各事業年度において退職した役員に対して支給した退職給与の額が、当該法人のその内国法人の業務に従事した期間、その退職の事情、その内国法人と同種の事業を営む法人で、その事業規模が類似するものの役員に対する退職給与支給の状況等に照らし、その退職した役員に対する退職給与として相当であると認められる金額を超える場合におけるその超える部分の金額