[事実関係]
原告ビックカメラは、家電製品の販売等を行っている株式会社であり、平成20年6月以降、東京証券取引市場第一部に上場している。
ビックカメラは、平成14年8月にその賃借する土地建物等を信託財産とする信託契約を締結し、その信託受益権を総額290億円で疎外A会社に譲渡した。ビックカメラは、本件信託受益権の譲渡を本件信託財産の譲渡と扱う会計処理をし、これに基づいて法人税の確定申告をした。
ビックカメラは、平成19年10月に、本件受益権をAから311億円で買い戻した。証券取引委員会は、平成20年12月、本件信託受益権の譲渡を本件信託財産財産の譲渡として取り扱い、本件信託財産である不動産を資産の部に計上しないものとすることは不適切であり、本件信託受益権の上記の譲渡を本件信託財産の譲渡とは認識せずに金融取引として処理し、本件信託財産である不動産を貸借対照表上の資産に計上することが適切であるとの行政指導を行った。
ビックカメラは、これを踏まえ、Aに75億5,000万円を拠出し、優先匿名組合出資金としていた、ビックカメラの代表取締役が登記上出資設立した豊島企画を、ービックカメラは劣後組合員として14億円を出資ー財務諸表規則8条に基づき、ビックカメラの子会社として認定すべきであったとした。
そして、これを前提とすると、不動産流動化実務指針によるビックカメラと合わせてのリスク負担割合が5%を超過することになるから、同指針に従い、平成14年8月期に遡って本件不動産流動化取引に係る会計処理を金融取引処理に改め、平成21年2月20日、関東財務局長に対し、有価証券報告書の訂正届出書を提出した。
ビックカメラは、同年7月30日、金融庁長官から、有価証券報告書等に虚偽の記載があったとして、納付すべき課徴金の額を2億5,3535円とする課徴金の納付命令の決定を受けた。ビックカメラは、確定申告の前提とした会計処理を改めたことにより、納付すべき税額が過大になったとして豊島税務署に更正の請求を行ったが、拒否する通知を受けた。
裁判所は、
「不動産流動化実務指針は、不動産が法的に譲渡され、且つ、その対価を譲渡人が収入として得ているときであっても、なお、子会社等を含む譲渡人に残された同指針のいう意味でのリスクの程度を考慮して、これを金融取引として取り扱うことがあるとしたものであるが、
法人税法は、適正な課税及び納税義務の履行を確保することを目的とし、資産又は事業から生ずる収益に係る法律関係を基礎に、それが実質的には他の法人等がその収益として享受する場合を除き、基本的に収入の原因となった法律関係に従って、各事業年度の収益として実現した金額を当該事業年度の益金の額に算入するなどし、当該事業年度の所得の金額を計算すべきものとしていると解されるのであるから、
当該事業年度の収益等の額の計算に当たり、本件におけるように、信託に係る受益権が契約により法的に譲渡され、当該契約に定められた対価を現に収入として得た場合において、それが実質的には他の法人等がその収益として享受すると思われる場合ではなくても、
また、同法において他の法人との関係を考慮することができると定められたときにも当たらないにもかかわらず、
他の法人との関係をも考慮し、リスク、経済価値アプローチにより、当該譲渡を有償による信託に係る受益権の譲渡とは認識せず、専ら譲渡人について、当該譲渡に係る収益の実現があったものとしない取扱いを定めた同指針は、上記目的を有する同法の公平な所得計算という要請とは別の観点に立って定められたものとして、税会計処理基準に該当するものとはいえないと言わざるを得ない。
上記に関連して控訴人が主張するところ踏まえて検討するも、同判断に変更を来すものではない」とした(東京高判平成25年7月19日)。
[解説]
当該事例については、受益権を購入した経済実体が290億円、労働者が資本となっている豊島企画が75億円、ビックカメラが、311億円、14億5,000万円を用意できるのかを考えなければならない。
国際金融資本から借りなければ用意できないであろう。現実に信託契約の委託者は、ビックカメラであり、受託者は国際金融資本であり、疎外株式会社Fが出資設立されFを通じて優先ローンを組まされ180億円、銀行を通じて劣後ローンを組まされ、国際金融資本から借入をしている。
実体のない観念である信託契約の目的は事実確定の基礎とはなりえない。法的安定性、予測可能性は、実体のない観念であり、事実確定、法の解釈適用の基礎とはならない。
国際金融資本は、疎外された労働を土台とした利潤に付された価値についてオンライン上で引換え証を渡す。国際金融資本は、疎外された労働に付与された価値を借りて、国際金融資本がフィクションした国債を買う。銀行を通して産業資本に金を貸す。労働力商品に付された価格から国債の返済負担分を差し引く。
産業資本すなわち国際金融資本は、労働の疎外を土台にした利潤に付された価値を借りて、国際金融資本がフィクションした不動産を購入する。
国際金融資本は、国債をフィクションし、国際金融資本から金を借りる。不動産をビックカメラの労働者に貸し出す。ビックカメラの資本(現実には国際金融資本)は、労働を疎外して利潤を国際金融資本に分配する。
国際金融資本は、フィクションした資本関係を土台に、不動産の処分権を取得している。信託契約により、それを実体化する。
不動産を国際金融資本が不動産を他の経済実体に引渡し、労働の疎外を土台にした利潤を国際金融資本に分配し、ビックカメラの労働者に投融資する。
紙切れを無限にフィクションできる国際金融資本に資金不足はありえず、リスクは実体のない観念であり、労働の疎外を土台に利潤が確定し、返還不要が確定していれば配当であり、法人税法上の所得である。
配当は国債負担前の利潤から支払われていること、資本関係を土台に各法人は、法律行為を通じて実体あるものとして社会に認めさせている。
各経済実体に課された国債の負担を国際金融資本が負わなければならない。国際金融資本は、商品ー紙切れも価値属性の備わっていない、労働の疎外を土台に価値が付与されることとなる商品であるー、労働力商品を購入することなく、所有することなく、投融資をした各経済実体に、労働を疎外したことを土台に留保された利潤は、国際金融資本に還流するから各経済実体の国債負担は国際金融資本が負うことになる。
法律上の債務の負担割合によって出資割合に基づいた経済上の権利が変わってくるのではなく、金融資本経済の過程によれば、紙切れは主人を持たないから、経済実体に自由意思はなく、資本関係、出資割合によって、経済関係が形成され、経済関係によって、労働を疎外する権限、配当受領権、利息受取権権、議決権、議案の拒否権を含む商法上、税法上の実体関係が規定されるが、取引の目的、法の目的という実体のない観念と交渉して、又、経済上の全関係と交渉していたとしても、国際金融資本側の経済関係に基づいて法の解釈適用がされるから、一旦形成された経済関係を実定法によって取り消すこと、疎外された労働に付与された価値を取り戻すことは現実には困難となり、その上、労働者は国際金融資本に貸し付けをしていながら、国債を負担させられているのである。
納税者が現金を受け取ってきたかその他を考慮するかを要因として、出資割合に変動なく納税義務が移転されるという規定が、適用されるが、そのような規定は、利潤の実現、及び経済上の費用の実現に至る関係を考慮するということに基づいている(Reid thompson,and David Weusbach,Attribution of Ownersship,Tax Law Reviw, Vol.67,p294)とするものがある。
[関係条文]
法人税法22条
内国法人の各事業年度の所得の金額は、当該事業年度の益金の額から当該事業年度の損金の額を控除した金額とする。
2. 内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、当該事業年度の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、資産の販売、有償又は無償による資産の譲渡又は役務の提供、無償による資産の譲受けその他の取引で資本等取引以外のものに係る当該事業年度の収益の額とする。
3. 内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、当該事業年度の損金の額に算入すべき金額は別段の定めがあるものを除き次の金額とする。
一 当該事業年度の収益に係る売上原価、完成工事原価その他これに準ずる原価の額
ニ 前号に掲げるものの他、当該事業年度の販売費、一般管理費その他の費用(償却費以外の費用で当該事業年度の終了の日までに債務の確定しないものを除く。)の額
三 当該年度の損失の額で資本等取引以外の取引に係るもの
4. 第二項に規定する当該年度の収益の額及び前項各号に掲げる額は、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算されるものとする。