[事実関係]

学校法人は、平成24年3月31日に退職した園長Kに財団にプールされていた金銭を原資に、平均標準給与に届出社員として財団に加入していた年数、所定の交付指数を掛けて退職金の額を決定し、24年5月1日にKに支給した。

Kは、24年4月1日に再雇用されている。

審判所は、

「原処分庁は、幼稚園を設置運営する学校法人の理事長兼延長であるKに支給された金員について、本件園長が、退職とされた日以後も引き続き、他の常勤職と同様に出勤し、本件法人から給与を受領していることからすると、勤務関係が終了したとは認められないこと、また、理事長としての業務を引き続き行っており、請求人の勤務関係及び給与の減額割合等からしても、請求人の勤務関係の性質及び労働条件に重大な変動があったと認めることができないから、本件法人から退職金として受領した金員に係る所得は、給与所得に該当する旨主張する。

しかしながら、本件園長並びに本件幼稚園の副園長及び事務長の答述その他関係資料等によれば、本件園長の行う職務の全体に占める理事長としての職務の割合は、本件の幼稚園の園長としての職務に比べごく僅かであったと認められること、請求人は、実質的な園長としての職務のほとんどを副園長に引き継ぎ、その職務内容は、量的にも質的にも大幅に軽減され、その実態に即するように基本給の額を減額するなど、労働条件も大きく変動したものと認められるから、請求人と本件学校法人との関係は、その性質及び内容及び労働条件等に大きな変動があって、形式的には継続している勤務関係が実質的には単なる従前の勤務関係の延長とみることができない特別の事実関係があるものと認められるから、本件金員は、所得税法30条1項の規定する退職所得に該当する」とした(平成26年12月1日裁決)。

[解説]

労働者は、労働を疎外され、労働力商品に経済過程に応じて更新される価値を付与して紙切れが支給され、紙切れに価値が付与される。疎外労働に応じることを余儀なくされてきた過程を終了し、新たな別個の資本、生産手段の貸付けをされ、労働を疎外されるという過程を進行させ、退職届出、登記という法律行為によって生産関係の終了を実体化させた場合、資本は、生産関係上、一労働が終了毎に支払わなければならないが支給を待たせてきた、疎外された労働に付与された価値についても全労働者に支払う生産関係上の義務がある。

法人との資本関係を土台に、資本を投下していない労働者の疎外された労働に付与された価値が、資本を投下した役員又は金融資本への支払いに転嫁して前者に退職給与の属性を付与された場合には、それが資本を投下した役員の、疎外労働に付与された価値に充当されたことになったと解しても、それは、金融資本の支払いが配当であるように、疎外労働を土台とした利潤のおこぼれを得ているのであるから配当である。

資本は、労働の疎外を土台に利潤を得ている。資本を投下した役員の、疎外された労働に付与された価値の分は、資本が負担しなければならない。上記のことを踏まえて支給された金員が退職所得か否か、付与された価値が過大か否かが決められなければならない。

職務の引き継ぎを終え、週30時間勤務となったことから、生産過程の終了し、労働力商品として新たに購入され、労働の疎外の過程に変化があり、生活における当該経済実体での労働過程の割合が減少し、国債の返済負担に変化があってのであれば、退職所得ということになるであろう。