[事実関係]
原告は、航空機、車、造船等の生産設備、試験装置等の設計製作販売等を行っていた甲(創業者の子)一族の100%同族法人である。乙は退職後原告と資本関係は実体上ない。
乙は、非常勤取締役になる直前まで月額報酬は87万円であり、非常勤となってからは月額40万円である。
原告法人の創業者である役員乙が原告の代表取締役を辞任して非常勤取締役となったことに伴い、乙に対する退職慰労金として2億5,000万円を支給することを決定し、平成19年8月期に7,500万円を支払い、平成20年8月期にその一部である1億2,500万(第二金員)を支払い、本件第二金員が退職給与に該当することとして、損金の額に算入し、本件第二金員が退職給与であることに基づいて計算した源泉所得税額を納付したところ、税務署長から、本件第二金員は本件第二金員は、退職給与に該当せず、損金の額に算入できないといして更正処分及び加算税賦課決定処分を受け、本件第二金員について、賞与であるとして計算された源泉所得税に基づいて、原告の納付額との差額について納税の告知処分を行った。
裁判所は、支給した金員が所得税法30条1項に定める退職給与に該当するか否かについて、
「当該金員が、①退職すなわち勤務関係の終了という事実に基づいて初めて給付されたこと、②従来の継続的な勤務に対する報償ないしその間の労務の対価の一部の後払いの性質を有すること、③一時金として支払われることの要件を備えることが必要であり、上記の要件を備えていなくても、実質的に見てこれらの要件の要求するところに適合し、課税上、退職により一時に受ける給与と同一に取り扱うことを相当とするものであることを必要とする」と
最判昭和58年9月9日を引用し、
「原告は本件取締役会決議において、本件計算書に基づき、本件退職慰労金の総額及び分割支給の終期を決議していたのであり、本件第二金員が本件退職慰労金の一部として支給されたものである以上、具体的な分割支給が定められていなかったことは、本件第二金員について退職基因要件を否定すべき事情には当たらないというべきである(なお、予め退職給与の総額が定められていない場合においては、現実に支給された金員が、退職に基因して分割支給されたものであるかどうかの判断に通常困難になるものと解される)」とする。
被告が、「本件退職慰労金の分割支給について、原告が利益調整を意図して行ったものであり、本件通達(※)の但し書きの趣旨に反する旨の主張をしている」ことについて、
裁判所は、分割支給について規定した「本件通達は、短期的な資金繰りがつくまでは、役員退職給与を支給しないということがあり得るという企業の実態を前提に設けられたものである」とした上で、
「企業が資金繰りに支障を来さないように役員退職給与を分割支給すること自体は、企業経営上判断として合理的なものであるということができる。
そして、原告が退職慰労金を支払う資金的余裕がなく、経常収支が赤字にならない範囲で支給するという目的から、本件退職慰労金を3年以内に分割支給することにしたものであり、平成19年8月期の損益計算書及び期末における貸借対照表の記載内容に照らしても、本件退職給与慰労金を3年以内に分割支給することとしたことが不合理であるとすることができない。
又、原告が、平成20年8月期以降の事業年度における所得金額を低く抑えるために、本件退職慰労金を分割支給したことにしたというような事情をうかがわせるような事実もないし証拠もない」とした。
裁判書は、更に、
「税務行政が法人税基本通達に依拠して行われているという実情を勘案すれば、企業が、法人税基本通達を斟酌して、企業における会計処理の方法を検討することは、それ自体自然なことであるということができる。
更に、金融商品取引法が適用されない中小企業においては、企業会計原則を初めとする会計基準であるよりも、法人税法上の計算処理に依拠して企業会計を行っている場合が多いという実態があるものと認められるところ、本件通達に依拠した支給年度の損金経理は、一般に公正妥当な会計慣行の一つであるというべきである。」とした(東京地判平成27年2月26日、3月3日)。
※法基通9-2-32
法人が役員の分掌変更又は改選による再任等に際し、その役員に対し、退職給与として支給した給与として支給した給与については、その支給が、例えば、次に掲げるような事実があったことによるものであるなど、その分掌変更等によりその役員としての地位又は職務の内容が激変し、実質的に退職したと同様の事情があると認められることによるものである場合には、これを退職給与として取り扱うことができる。
(1)常勤役員が非常勤(常時勤務していない場合であっても、代表権を有する者及び代表権は有しないが、実質的にその法人の経営上主要な地位を占めていると認められる者を除く)になったこと。
(2)取締役が監査役(監査役でありながら、実質的にその法人の経営上主要な地位を占めていると認められる者及びその法人の株主等で令71条第1項5号(使用人兼務役員とされない役員)に掲げる全ての要件を満たしている場合を除く)になったこと。
(3)分掌変更後におけるその役員(その分掌変更の後においてもその法人の経営上主要な地位を占めていると認められる者を除く)の給与が激変(おおむね50%以上の減少)したこと。
(注)本文の退職給与として支給した給与には、原則として、法人が未払金等に計上した場合の当該未払金等の額は含まれない。
[解説]
国際金融資本は、大手民間銀行、民間銀行たる中央銀行、日本銀行との資本関係を土台に、民間銀行に国債の発行をオンライン上でフィクションし、日本銀行券の発行をオンライン上で事実上無制限にフィクションし、価値を付与することができ、法定準備率の方便が用意されているから、国際金融資本は、現実には欠損である法人に架空資本を貸して価値を付与して利益計上をフィクションさせて回収できなくとも、数字上、紙切れが不足することはない。
労働者が銀行に貸し付けた紙切れの価値を国際金融資本は再投融資に回し、疎外労働をさせる。国際金融資本は、国際金融資本がした国債を全額返済しても紙切れが数字上不足することはない。
にもかかわらず、銀行に貸倒れを産業資本に棚卸損失をフィクションさせ、投融資を受けさせ、労働を疎外し架空資本を引き渡させる。産業資本を担保という後付の方便を付した資本を含め売却する。国際金融資本は、現実には欠損である法人の労働者の労働を疎外し、資本に付された価値を増殖して利息という方便を使用することができる。
同族法人であろうとなかろうと役員は使用人であって、使用人と法人の間の労働力商品の売買という経済関係に基づいて留保された紙切れの処分を行う権限が付与されるのではなく、法人との資本関係に基づいて法人に留保された紙切れの処分を決めることができる。当該役員が法人の架空資本に全額投資したとしても、国際金融資本が法人に融資した紙切れに付与された価値が大きければ、留保された紙切れの処分を決めることは困難である。国際金融資本は需要をフィクションし、疎外労働強化の方便とする。
役員、取締役会若しくはその他食事会において自然に退職金に付される価値が産み出されるのではない。中小企業が法人税通達に依る会計帳簿を作成することは自然ではない。通達の適用という現象面から通達を適用しているのではない。疎外労働を通じた資本の蓄積に付された価値によって産み出される。法人の労働者に意思はない。
原告法人は、退職金支給より前から国際金融資本から融資をフィクションされている。
現実には、労働者は国際金融資本の債権者であること、疎外労働があったから資本に付される価値が増大し事業が存続させられていることから、生産関係上、労働力商品への支払いを国際金融資本に優先させなければならない。にもかかわらず、国際金融資本が金を貸してくれたおかげで資本に付される価値を増大し事業を存続できていると教えられている。
平成19年3月13日付課法2、3他1課共同「法人税基本通達の一部改正について」の法令解釈の趣旨説明の但書では、
「役員退職給与という性格上、その法人の資金繰り等の理由による一時的な未払金等への計上までも排除することは適当ではないことから、原則としてという文言を付しているものである(このような場合であっても、その未払の期間が長期にわたったり、長期間の分割払いとなっているような場合には、本通達の適用がないことは当然である)」と言っている。
紙切れという御主人様に雇われている国際金融資本が、代理人を使用して、賃金を支払うよりも、融資をフィクションさせて労働力を再生産させて労働を疎外し国際金融資本への利潤の分配を優先させろということを言わせているのである。そうすれば、国債、現実には国際金融資本の民間銀行を通じて国際金融資本からした借金の返済負担において恩典を与えてやるぞということを言っているのである。
国際金融資本の代理人も利益操作の意図という実体のない観念と交渉し、司法も「経営上の判断として合理的」いう上層、「経常収支が赤字にならない範囲で支給するという目的」という実体のない観念、方便と交渉して通達を解釈するという役割を演じさせられた。
法人の労働者に自由意思は存在しない。
資本は労働をしないから利息は方便である。労働者は、労働を提供したが、支払いが待たされている間、経済、生活が停滞することは実体がある。労働の実体があれば、疎外された労働の評価を労働力商品に転嫁して役員にも生産関係上給与を支払わなければならない。
法人資本は、労働力の再生産、事業承継を国際金融資本との資本関係から義務付けられている。当該訴訟に関与した税理士は、中小企業においては、円滑な事業承継から、平取締役となることがあるから、9-2-32は特例通達ではなく分割支給した段階での損金経理が認められる旨主張するが、これは、役員イコール経営者であると誤解したままであることにほかならない。紙切れは主人を持たない。紙切れは物差しではない。紙切れは価値属性が備わっていない。紙切れは実体のない架空の商品である。登記上役員を退職したか分掌変更のケースかを問わず、価値を付しただけでは足りず、オンライン上でそれを印字し実体化させなければならない。
国際金融資本との資本関係による制限はあっても、法人との資本関係に基づいて、労働者に疎外労働をさせたことによる利潤を労働力商品に役員という属性を付与して受け取っていて、他の労働力商品に付される価値を実体関係上の価値すら付さないということであれば、退職の段階で支給された金員、分掌変更後の労働に支払われた金員の内、役員の労働に付された価値を超える部分の価値は、利益配当ということになるであろう。
国際金融資本に前貸しされ、労働力の再生産を余儀なくされ、労働力への貸付がフィクションされ、退職金が支給されないという生産関係上あってはならないことが実在する以上は、分掌変更が、退職という経済上の実体があるものであって、すなわち、分掌変更後は、疎外労働を土台とする利潤を受け取らず、労働の実体があるが、労働量が減ったということであれば、分割支給で支給した金員に退職給与という価値属性を付与することができる余地があるであろうが、分掌変更された役員に未払の段階では、労働力商品と引き替えに得る架空の商品に転嫁される価値が決まっていないということは、労働の評価が疎外されるかどうかも含め、労働の価値が確定したとすることは困難であり、法人の側に損金を建て退職給与という属性を付与することはできないであろう。
金品が支給されなくても、資本関係により、疎外労働を土台にした利潤をコントロールし、利潤を処分する権利が付与されていれば、退職という実体があるとは言えないであろう。
当該事例の場合、19年8月期以後も、前代表取締役は、疎外労働の土台に利潤を得て架空資本を書面上引渡したという事実がないことから、退職給与の支払いの実体化によっては、分掌変更の段階における当該金員は、経済上、利益配当と解される余地はあるであろう。
そして、実定法上は、法人の側は、寄附金、配当を受けた側は、一時所得に該当するであろう。
取引に偶発性はない。偶発性は法律の適用要件と解することはできない。
公の正義、妥当は実体のない観念、後付の観念である。現象や慣行ではなく、会計基準ではなく、また、実体のない観念である目的、意図と交渉することなく、現実の資本関係、経済関係、生産関係上の事実関係を確定し、当該金員について事実確定をしなければならないであろう。その上で、実体のない観念である法の趣旨目的と交渉することなく法律の解釈、適用を行わなければならないであろう。
労働力商品の評価の分割支給に退職給与の属性を付与することができる余地があるとしても、未払の段階においては、労働を疎外され、利潤が国際金融資本に貸し出され、労働力の再生産の評価が疎外され労働力商品に転嫁され労働力商品と交換された商品に価値を付与されることを待たされている過程においても、国際金融資本によって他の経済実体に貸し出されて労働力の再生産を余儀なくされていることもあるのであるから、退職給与の未払計上の過程に長期という評価がされれば、未払の労働力商品の評価に退職給与の属性を付与することは、経済上困難である。
[関連条文]
法基通9-2-9
法第34条第4項(役員給与)及び第36条(過大な使用人給与の損金算入)に規定する「債務の免除による利益その他の経済的な利益」とは、次に掲げるもののように、法人がこれらの行為をしたことにより、実質的にその役員等(役員及び同条に規定する特殊の関係にある使用人をいう。以下9-2-10まで同じ)に対して給与を支給したと同様の経済的効果をもたらすもの(<font color=”#FF0000″>明らかに株主等の地位に基づいて取得したと認められるもの</font>及び病気見舞、災害見舞等のような純然たる贈与と認められるもの<font color=”#FF0000″>を除く</font>。)をいう。
(1)役員等に対して物品その他の資産を贈与した場合におけるその資産の価額に相当する金額
(2)役員等に対して所有資産を低い価額で譲渡した場合におけるその資産の価額と譲渡価額との差額に相当する金額
(3)役員等から高い価額で資産を買い入れた場合におけるその資産の価額と譲渡価額の差額に相当する金額
(4)役員等に対して有する債権を放棄し又は免除した場合(貸倒れに該当する場合を除く。)におけるその放棄し又は免除した債権に相当する金額
(5)役員等から債務を無償で引き受けた場合におけるその引き受けた債務の額に相当する金額
(6)役員等に対してその居住の用に供する土地又は家屋を無償又は低い価額で提供した場合における通常取得すべき賃貸料の額と実際に徴収した賃貸料との差額に相当する金額
(7)役員等に対して金銭を無償又は通常の利率よりも低い利率で貸し付けた場合における通常取得すべき利率により計算した利息と実際徴収した利息の額との差額に相当する金額
(8)役員等に対して無償又は低い対価で(6)及び(7)に掲げるもの以外の用益の提供をした場合における通常その用益の対価として収受すべき金額と実際に収入した対価の額との差額に相当する金額
(9)役員等に対して機密費、交際費、旅費等の名義で支給したもののうち、その法人の業務のために使用したことが明らかでないもの
(10)役員のために個人的費用を負担した場合におけるその費用の負担額に相当する金額
(11)役員等が社交団体等が会員となるため又は会員となっているために要する費用で、当該役員等の負担すべきものを負担した場合におけるその負担した費用に相当する金額
(12)法人が役員等を被保険者及び保険金受取人とする生命保険契約を締結してその保険料の額の全部又は一部を負担した場合におけるその負担した保険料の額に相当する金額
法人税法37条
七 前各項に規定する寄附金の額は、寄付金、拠出金、見舞金その他いずれの名義をもってするかを問わず、内国法人の金銭その他の資産又は経済的な利益の贈与又は無償の供与(広告宣伝及び見本品の費用その他これらに類する費用並びに交際費、接待費及び福利厚生費とされるものを除く。次項において同じ。)をした場合における当該金銭の額若しくは金銭以外の資産のその贈与の額における価額又は当該経済的な利益のその供与時における価額によるものとする。
八 内国法人が資産の譲渡又は経済的な利益の供与をした場合において、その譲渡又は供用の対価の額が当該資産のその譲渡の時における価額又当該経済的な利益の供与の時における価額に比して低いときは、当該対価の額と当該価額との差額の内、実質的に贈与又は無償の供与をしたと認められる金額は、前項の寄附金の額に含まれるものとする。
所得税法34条
一時所得とは、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得及び譲渡所得以外の所得の内、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得で、労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しないものを言う。
(コメント)
目的は、実体のない観念であるから、ここでいう営利目的は、労働力商品を直接購入し、資産を労働力に貸し付けたことをフィクションし、労働を疎外して、実体化させたものでなければならないと解される。
労働力商品を直接購入することなく労働を疎外することにより得た利潤は一時所得に該当すると解せられる。
性質は、予め備わっていないから、労働を疎外することを土台に利潤と引き換えられた商品に付された価値のことである。