[事実関係]

賃貸している建物のユニットバス、システムキッチンの取替工事の費用が修繕費に当たるか否かについて争われた事例で、審判所は「本件各工事の内容は、単に既存の台所設備、浴室設備の部材の一部を補修、交換したものではなく、本件建物の各住宅内で物理的・機能的に一体不可分の台所部分及び浴室部分について、建築当初から設置されていた各設備及び壁・床の表面等を全面的に新しい設備等に取り替えたものであり、このことは、本件建物の各住宅等を形成していた一部分の取壊し・廃棄と新設が同時に行われたとみるべきである。

本件各取替費用は、新たにシステムキッチン、ユニットバスを設置し、台所及び浴室を新設したことによって、当該各住宅ひいては本件建物の価値を高め、その耐久性を増すと認められるから、その全額が資本的支出に該当するというべきである」とした(国税不服審判所平成26年4月21日裁決)。

[解説]

工事の目的は、実体のない観念であるから事実確定の基礎にはならない。建物に価値属性、機能は備わっていない。

建物を建築しただけで価値を産み出すものではない。米国の修繕費についての見解(Bittker)は、当該修繕が、資産の主要な部分を構成するか否かを拠り所にする。これは、ユニットバスとシステムキッチンが、建物を貸すことによって、家事労働を含む労働過程を短縮して労働の価値を疎外し労働力商品として付与される価値属性を引き下げて資本増殖をさせる土台となったか否かから考えるということであろう。

それに鑑みると、建物を貸すことによる資本増殖の土台となったというのである。取り壊したユニットバスとシステムキッチンは、実体がなく、それを貸出して疎外労働をさせて資本増殖をすることができないのであるから、質問検査の段階で事実確定した以上、課税側は、所得から減算する義務がある。国税通則法23条2項によりこれは立法されている。