[事実関係]
インターネットのウェブサイト上で、当該サイトの男性会員に映像を見せながら会話をする等のライブチャット業務を行って報酬を得ていた審査請求人が、平成19、20、21年分の所得税確定申告をしていなかったところ、原処分庁が雑所得があるとして所得税の決定処分及び無申告加算税決定処分を行った。審判所は、パソコン購入代、ウェブカメラの購入代、インターネット接続料については業務に関連があるものとして必要経費として認められるとしたが、衣服代、美容代、部屋の装飾代については、業務に関連があるとは言えないとして必要経費として認められないとした(国税不服審判所平成26年5月22日裁決)。
[解説]
パソコン、ウェブカメラを購入して経済実体の労働者(当該ケースでは請求人)に貸し付けて、労働させなければ、所得を実現できないから、パソコン、ウェブカメラ、デジタルカメラ、メモリーカード、インターネット接続サービスと引換に支出した金員は、雑所得の必要経費となるであろう。
衣服、化粧、家電、水槽、棚、メタルラック、ソファ、照明、家具、工具、音楽、録音再生機、食品、調理機器については、これらの物は家事用、業務用という価値属性は備わっていないから、申告をする側も、司法、行政をさせられている側も、目的という実体のない観念と交渉するのではなく、現実に使用したところに基づいて、事実関係の確定、法の解釈適用をしなければならない。
そうすると、家事に使用している機器、備品を、住居と事務所を同一の場所にして器具備品を一箇所に集めて、遊休させることなくフル稼働して、労働させて所得を実現させざるを得ない経済実体は現実にあるから、当該請求人は記録に不備があったのであったのであるが、現実に生産手段として貸し付け労働させて、そのことを実体に即して記録、保管していた場合に、自宅にこれらのものがあることをもって必要経費を全額否認するのは実体に即していると言い切れるであろうか。
請求人も現実に上記の費用を業務に使用した実体があって、使用の記録を残して使用したことを証明できれば、購入して支払った金員の価値について、必要経費を一括に費用計上するか、使用に応じて減価償却するかして、その上で会計上の費用を請求人が、現実の使用に基づいて家事関連費と必要経費に按分して前者を否認すれば必要経費に算入する余地があるとの解釈が成立するのであって、そのような場合にも、オールオアナッシングの処理が現実に即しているか疑問の残るところである。