[事実関係]

推計課税の裁判例として、

税務署長が原告方を訪れ主原料である生餡の仕入量、仕入先、餡入り饅頭の総売上に占める割合等の原告の営業内容につき、原告より聴取り調査を行い、生餡の仕入先に対する反面調査、同業者に対する餡使用量についての聴取り調査をした事実が認められ、国税通則法の更正決定をなすについての調査の方法、内容、程度等を規定する何等の規定を設けていないところよりみれば、更正決定をなすについては、右認定の程度の調査をもって足りるものと解すべきであるとした上で、餡の使用量によって和菓子の売上金額を推計するに当たり、和菓子の一個当たりの餡使用量についての課税庁の認定が相当でないとした事例がある(大阪地判昭和44年5月13日)。

[解説]

借入をせずに、当該段階までの、労働を土台とした資本のみで、労働者に資本、生産手段を貸し付けて、労働をさせて利潤を得ている経済実体は、新たに労働力商品を購入して、機械を購入するか、工場の機械、労働力商品に生産させるということができず、納期の短縮、大量生産によって、労働に付される単価を下げ、原材料の加工労働に付される価値を下げ、疎外される労働の単価は小さいが、生産個数を多くするという過程により利潤を得ることが困難であるから、餡の量を減らして皮の量を増やして売ることは困難である。

生産量が少ないから労働に付される単価は高くなり、疎外される単価も高くなるという過程を経て利潤を経ているのである。

生産する個数が大資本よりも少ないが、労働力商品の購入数も少ないから、商品一つ当たりに費やす過程を短くせざるを得ないし、機械を使用していないから、同一の商品であっても、餡の使用量を均一にすることは困難である。

資本の調達、商品、労働力商品の購入、貸付け、生産労働、労働の疎外、利潤に価値を付す、商品と現金商品の引換という過程を調査せずに、同業他社の商品一個当たりの餡の使用量、複数の商品を購入して餡の重量を測るという現象面しか調査していないから、経済上、実体上だけでなく、手続上も不備があったということができるであろう。

現実にしていない借金を納税者に負担させるという租税の実体に鑑みれば、納税者の提示した事実関係を破るだけの資料を提示できなければ課税をすることはできないのである。